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会話の面白いアニメ「オッドタクシー」感想&解説

め~め~。

動物が二本足で歩いて会話をする、というタイプの物語というのは数多くあります。

こどもちゃれんじでお馴染み「しましまとらのしまじろう」なんかは、うさぎだろうがトラだろうが、オウムだろうが、種族の差なんて関係なく一緒に遊んだりしています(あくまで、動物をモチーフにしたキャラクターではあります)。

「ドラゴンボール」なんかでも、メインのキャラクターの大半が人間だから忘れがちですが、豚であるウーロンや、猫のような生き物であるプーアルといった面々もおりますし、普通に色々な動物が人間と一緒に生活しています。


また、「ビースターズ」に至っては、その種族による違いから差別や対立、肉食動物と草食動物との恋を含めて、浮き彫りにした作品もあります。


そんな作品の中でも、共通しているものはありまして、血のつながった動物は同じ動物というルールです。

猫の子供が犬ということはないでしょうし、その逆もまたないでしょう。


しかし、「オッドタクシー」は、ゴリラだろうがアルパカだろうが、色々な動物がいる上で、他種族がカップルとして付き合っていたり、あまつさえ、マントヒヒの子供が猫だったりと、動物がでてくる作品の流れの中では異色なつくりとなっています。


「オッドタクシー」は、会話劇の面白さが抜群であることと、そのミステリ調の内容をもってきたサスペンスでもありますので、その面白さと見どころを含めて感想を述べてみたいと思います。

会話劇の面白さ


「オッドタクシー」をみてすぐに面白さに気づく点があります。

それは会話の面白さとテンポの良さです。

物語の冒頭部分だと、声優陣も若干不慣れさもあって違和感があるかもしれませんが、会話のリズムがいいため、くすりと笑える部分が数多くあるのも特徴といえるでしょう。

そもそも、「オッドタクシー」は、プレスコ(プレスコアリング )と呼ばれる技法をつかっており、会話を先に録音し、それに併せてキャラクターの動きを併せていくという手法が取られています。

もともと通常のアフレコ(アフター・レコーディング)でもアドリブというものは発生するものですが、限度があります。


「オッドタクシー」は、プレスコ(事前の音声収録)によって会話のリズムも含めて楽しめる作品となっています。


ミステリ風


冒頭でも書きましたが、登場人物たちは、動物の姿をしています。

この世界はどういうセカイ(設定)なのか、ということは、何も明かされない状態で見ていると不思議に思うところです。


そんなものかなと思ってみていてもいいのですが、カップルはともかく、親子ですら種族が違うとなってくると、どういうつもりでみるべきなのか、何か象徴しているのだろうかと考えてしまうところです。


事実、

「オドカワ、俺は何にみえる?」

「ゴリラ」

と平気で種族についての指摘をしている会話があったり

「このあたりでは、アルパカはあんたぐらいだからな」

と、自然に動物としての指摘が会話の中に入っていることからして、どういう基準(設定)で、登場人物が生きているのかも深読みしてしまうところです。


また、主人公が何かを隠している、というところもまた大きな伏線となっています。


女子高生の失踪事件がニュースになっている中、主人公であるオドカワが、その女子高生を最後に乗せたタクシー運転手なのではないか、という疑惑、そこから関わってくる人物たちによって、謎は深まっていくのはうまいところです。

主人公は知っているが、観客である我々にはなかなか見せない。

観客だけは知っている視点というのは、スタジオジブリの高畑勲監督とは逆にやり方といってもいいかもしれません。

成功してない人々

「オッドタクシー」の前半部において重要且つ、面白いキャラクターとして、オドカワの友人である柿花(シロテナガザル)があげられます。

彼は、40過ぎのフリーターであり、清掃員をして働いています。

出会い系アプリを開くのが趣味となっており、常に居酒屋でママを相手にくだをまいたりしている、決して手放しで見本にできる大人ではありません。

そんな柿原が、出会い系アプリの中のプロフィールで年収を偽った途端出会うことになった、大学生の女の子との出会いが、彼の運命を狂わせます。

はるか年下の彼女でもない人の為に、借金をしたり、無理を重ねたりする姿は痛々しいことこの上ないのですが、悲哀の中に、夢を見たいと願う必死さも感じられるキャラクターとなっています。

女子大生から好意をもたれていることを自慢する柿花に対して、疑いの目をむけるオドカワ。それに対して、フィーリングが合うんだと柿花は言い張りますが、

「おまえ、フィーリングを嘘のスペックが凌駕してるじゃねぇか」

プロフィール欄の年収が2000万になっています。

「いいじゃねぇかよ。夢みるくらい」

それを、オドカワが厳しくも優しくいさめていくのは、見ものです。ただ、柿原の生き方が必ずしも悪いといっているわけではありません。

オドカワという主人公と、それに関わる人々を描いた群像劇となっているのですが、それぞれが頑張って生きていることを示している作品でもあります。

もちろん、抑うつされた人生の中で、道を踏み外してしまう人もいますが、その全てを、最終話で浄化させてしまうあたりは、いいか悪いかという点は別として、現代を描く作品として、必要な描き方なのだと思ってしまうところです。


人間同士の描き方


動物の見た目をしている、という点も含めて面白いのが、アイドルグループであるミステリーキッスの存在でしょう。


「オッドタクシー」は、芸能界の裏側も描いており、地下アイドルからなりあがろうとする女の子たちの奮闘も描いています。


物語だから、というのも当然ありますが、本作品で面白いのは、人間と人間との関わり合いが、意外なところで繋がっている、という点を示しているところにもあります。


お笑い芸人のコンビの片割れが実は、ということもあれば、思わぬところですれ違った人が、殺意を持って襲ってくることもある。


YOUTUBEで後悔されている「しあわせのペン」という音声配信されているのですが、その物語の中でも、非常に薄い線ではありますが、盗聴器の仕掛けられたペンをめぐって、人々が繋がっていることがわかります。

キャラクターを崩す


さて、「オッドタクシー」の前半と後半とでは、面白さのベクトルが若干変わってきます。


物語の前半でつくられてきた各キャラクターたちのスタイルは、後半あえて崩されることで驚かされたりします。


ちゃらい男だと思っていた柿花が、実は一途な男であったことなどはまだまだ大した話ではありませんが、常にラップ口調でしゃべりつづけるヤノという男もまた、特徴的なキャラクターといえます。

全てラップ調でしゃべるヤノをみたときは、痛々しいと思う人もいるかもしれませんが、気にならない状態になり、やがて、そのまま続けて欲しいとすら思ってしまうぐらいです。

それもそのはず、ヤノの声優をしているのは、実際のラッパーであるメテオ氏だったりします。

本業がラッパーの方に、ラップ調でしゃべるキャラクターを演じさせるというところ、会話劇を面白くするという点に重きが置かれているというのもあるでしょうが、登場する人物の大半が、実際のお笑い芸人が演じている、という点も他の作品には見られないところです。


話はずれましたが、ラップ調でしゃべっていた男が、突然、普通にしゃべったりしたら、それはそれで驚くでしょう。


アニメの脚本というよりは、お笑い関係寄りのフォーマットでつくられているところも含めて、他のアニメとは一線を画するところが「オッドタクシー」といえるのではないでしょうか

感想に添えて

さて、「オッドタクシー」の魅力について語ってみましたが、最後に、ちょっとした感想を含めて話を締めたいと思います。


オドカワという人物は一体何者なのか。

殺人事件に関わっているのかどうなのか。

動物たちにみえる人たちはどういう設定なのか。

そんなところも含めてミステリ風と、警官やヤクザ、その他もろもろの中でサスペンスちっくにはらはらする「オッドタクシー」ですが、物語のラストにおけるどんでんがえしについては、少し叙述トリック的な風味を感じたところです。

詳しくはネタバレになりますので書きませんが、講談社ノベルスに代表されるような新本格ミステリを思い出させるような構造となっているところが、心にひっかかったところです。


どこまで壮大な話なのかと思いきや、全てはこういう話だったのだ、と内包されてしまうと、話が小さくなってしまうのがこの手の作品の難しいところです。

ただ、「オッドタクシー」は、最終話以外は、会話の面白さやキャラクターたちの関係性、どうなっていくのか読めない展開といい、近年にない雰囲気の作品となっておりますので、もし見るか見ないか迷っている人がいましたら、ぜひ一気見していただきたいですし、アニメの面白さというのは、こういう方向にも伸びていくんだな、と感じられる作品となっていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

以上、会話の面白いアニメ「オッドタクシー」感想&解説でした!


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