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ドキュメンタリーに見えない「83歳のやさしいスパイ」
公 開:2020年
監 督:マイテ・アルベルティ
上映時間:84分
ジャンル:ドキュメンタリー/スパイ
![](https://assets.st-note.com/img/1698917100447-mkKerg6GOX.png?width=1200)
ドキュメンタリー映画というのは、実際の出来事を切り取る事によってつくられるものです。
そのため、脚本で管理されているフィクション作品と異なり、基本的にはコントロールできるものではないですし、コントロールできるとしたら、それはドキュメンタリーとはいえないでしょう。
勿論、編集によって監督の主張や事実がより鮮明になったりはしますが、物語的な楽しみ方とは異なるものです。
しかし、そんなドキュメンタリーをつくる上での制約を打ち崩している作品があります。
ドキュメンタリーでありながら、まるで脚本通りに進んでいるかのような面白さと見どころが詰まった作品こそが「83歳のやさしいスパイ」となっています。
状況がそもそも、面白いです。
ある探偵事務所に、「老人ホームに入居している母親が虐待されているかもしれない」から調べて欲しい、という依頼があり、その捜査員として人員が募集されるところから始まります。
老人ホームに潜入することになるため、80歳から90歳の老人を募集するのですが、意外にも多くの人が面接にやってきます。
ただ、残念なことに捜査報告に必要な電子機器を扱える老人がなかなかいません。
いわゆるスパイ映画であれば、秘密道具のようなものを使いこなし、華麗に捜査を進めていくのも見どころの一つですが、潜入者として選ばれたセルシオは、たどたどしくiphoneをつかったりして、別の意味でハラハラさせられます、
主人公のセルシオは、紳士的で親切な老人です。
男女比は極端に偏っていることもあり、女性ばかりの老人ホームで、セルシオはもてにもてます。
聞き込みをしたりする兼ね合いもあって、色々な人の身の上話を聞いたりするので、なおのことです。
また、それぞれの老人たちが抱える事情を知ったりしながら、自分自身にも向き合っていく姿は、もはや、ドキュメンタリーとは思えません。
映画撮影の為という名目で、所内のいたるところでカメラがあるため、いたって自然に映像が流れます。
ドキュメンタリーを見ているのか何を見ているのかわからなくなるぐらい、飽きることなく最後までみることできますし、ミステリー要素としての、「虐待や盗難が起こっている」という疑惑。
セルシオを主人公として一貫性があり、ドキュメンタリーとしても、あまり知られていない老人ホームでの一面を垣間見ることができる作品となっていること、結末も含めて見逃せません。
もちろん、結末も、やさしいのです。
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