角界には、金と力が埋まっている。必見Netfliexドラマ「サンクチュアリ 聖域」
公 開:2023年
監 督: 江口カン
話 数:全8話(シーズン1)
ジャンル:ドラマ/スポーツ
見どころ:断髪式
日本の文化において、特殊な立ち位置にある相撲。
力士の見た目もさることながら、独特の戦い方は、神事から始まった等々、考え方や歴史はある中ではありますが、日本を代表するものの一つであることは間違いないでしょう。
いわゆる、角界(かくかい)というのは、昔から多くの人々の耳目を騒がしてきた事柄でもありますし、その文化的な特殊さ故に、いい話から悪い噂まであります。
さて、そんな角界は、良くも悪くもアンタッチャブルな案件になりがちではありますが、そんな相撲に真っ向から取り組んだ作品があります。
それこそが、「サンクチュアリ ー聖域ー」です。
相撲の映画は珍しい?
相撲を取り扱った映画というのは無いわけではないのですが、有名な作品といわれてすぐに出てくるものは、あまりありません。
ぱっと思い出されるのは、周防正行監督「シコふんじゃった。」でしょうか。
本木雅弘主演による本作は、学生相撲を取り扱ったものとなっておりまして、1992年当時の雰囲気であるとか、青春ありコメディありの素晴らしい作品となっています。
Disney+では、オリジナルドラマとして2022年に配信もされていたりします。
漫画においては、ちばてつや「のたり松太郎」であるとか、「火ノ丸相撲」とか、有名どころがありますが、相撲映画はなぜ多くないのでしょうか。
力士を演じる役者
というのも、一つには、力士を演じるというのは、一朝一夕ではできないためでしょう。
学生相撲を取り扱った内容であれば、ある程度ガタイがいい俳優であれば、そんなものかと思ってしまいます。
「サンクチュアリ」のように、横綱を目指して、一攫千金を狙っている主人公の物語を描くとなった際に、身体つきが一般人と変わらないのでは、説得力がでません。
また、役者も一人や二人そろえても、画面が映えません。
力士と言われても不思議ではない体型の俳優を探すだけでも大変なのに、それを相当の人数を集めるだけでも不可能に近いといえるでしょう。
「サンクチュアリ」は、Netfliexの潤沢な資金力が最大限使われた作品といってもいいのではないかと思います。
役作りのために、役者たちは約2年間稽古を受けています。
人間は痩せるのも大変ですが、太るのも大変です。
力士のような体格になるということは、たんに食べるだけではなく、筋力も必要ですし、役者として演技力も必要になってきます。
一つの作品の為に、長く人生をかける役者がいて初めて作り上げられる作品であるため、それだけでも見る価値があるといっていいでしょう。
かわいがりを描けるか
相撲は、まわしを締めた男たちが、ぶつかり合うものです。
格闘技においてもそうですが、人間同士が肉体を武器に戦うというのは、いわゆる稽古含めて、大変厳しいものとなっています。
いい悪いは別として、時には流血するときもある業界の中にあって、稽古が厳しくなっていくには当然のことといえます。
しかし、一方で、いわゆる、かわいがりと呼ばれる稽古なのか暴力なのかわからない事案というのも、たびたびニュースになったりするところです。
「サンクチュアリ」では、そんな相撲界でのし上がろうとする物語ではありますが、その性質上、暴力的描写とはきっても切り離せない部分があるはずです。
ましてや、日本の伝統的な相撲となれば、その取扱いは大変難しいものとなるでしょう。
そのため、Netfliexのような外資でなければ、そんな物語について、快く思わない人たちもいるはずです。
作品を作る上で、他の題材よりもずっとデリケートであり、準備含めて大変難しいハードルを乗り越えて作り出された本作品は、必見といえるところでもあったりします。
さて、そろそろ、内容の面白さにも入っていきたいと思います。
王道ものの面白さ
一ノ瀬ワタル演じる主人公は、福岡県出身のやんちゃな男です。
柔道の才能があったもののやめてしまったのですが、ピエール瀧演じる猿将親方に誘われて、角界入りを果たします。
主人公は、とにかく、口が悪いし、態度も悪いです。
相撲を取り扱った作品なので、伝統や文化に敬意を払うのが普通と思っていたら、大間違いです。
挨拶はしない。すぐに先輩力士にケンカをふっかける。
普通の社会と違って、先輩たちも強いので、地元では負け知らずだった主人公は、コテンパンにやられます。
本作品は、そんな才能はあるけれど、礼儀も何もしらない男が、がっつり挫折を経験しながら、やがて相撲に敬意をもち、力をつけて、周りを巻き込みながら、戦っていくという、まさに王道の作品として作られていきます。
ライバルたち
もう一人の主人公ともいえるのが、飛翔富士 廣樹こと住洋樹演じる静内(しずうち)です。
作中の中においても、圧倒的な強さと存在感を示しているのですが、それもそのはず、強さでいえば現実世界においても圧倒的な人物でもあります。
実は、この俳優は、実際に十両まで務めた関取だったりします。
「サンクチュアリ」では、猿谷を務めた澤田賢澄も元力士だったりするのですが、静内を演じていた飛翔富士 廣樹の人生のほうを、猿谷の人生に取り入れた脚本になっているのも面白いところといえます。
あまりに力がある為に、全力をだすことができない静内。
彼が、八百長をもちかけられたあと、取り組みの前にする、にやり、とした笑顔は、記憶に焼き付くことでしょう。
「サンクチュアリ」においては、角界のエリートとして描かれる龍谷部屋の龍貴も、もう一人のライバルとはなっています。
こちらは、トイレで吐くほどのプレッシャーと戦いながら、日々を過ごす人物でもあります。
個性的な役者が、相撲を舞台にし、それぞれの立ち位置からキャラクターが描かれる豪華さも含めて、面白すぎる作品となっています。
主人公がヒーローとなっていく様子
王道ものと書きましたが、その描き方が可愛らしいのもポイントです。
態度がとにかく悪い主人公の猿桜ですが、女性に対しては純情だったりします。
ただ、本作品は、強くなって女の人にもモテて、お金も手に入ってウハウハといった物語ではありません。
連れていかれた夜のお店で、偶然同じ福岡出身ということで仲良くなった女性ですが、性格はものすごく悪いです。
ただ全てが悪いというのではなく、本作品にでてくるキャラクターは、それぞれが劣等感や背景をかかえており、自分たちなりに成り上がろうと必死なのです。
ただ、今まで女性に縁がなかった主人公の浮かれっぷり、そこから、すべてを失っていく中で、彼が、本当の意味で相撲と向き合っていく、姿は、今までの態度の悪い主人公をみてきたからこその、カタルシスがあります。
ラストの試合の結末
作品をみた人は、最後の結末が気になるところかもしれません。
作中の中においてもっとも強いだろう男、静内。
人が変わったように強くなるとしている猿桜。
この結末は、どちらに転ぶのか、といったところですが、きっとシーズン2があるでしょうから、そちらを期待したいところですし、仮にそれがなかったとして、予想がつかないところが面白いです。
そして、その予想のつかない感じが、土俵の中にある、神聖な感じを引き出してくれるので、痛烈なラストだなと思ってみさせてもらいました。
冒頭でも書きましたが、役者の豪華さ、稽古の豪華さ。
また、内容の過激さと、ものすごく王道な作り方。
あらゆる点で、見ないと損なぐらい面白い作品となっています。
あと、youtube等で撮影秘話なんかも沢山みることができますので、作中のキャラクターとのギャップも含めて、楽しむこともできて、大変お得な作品でもあったりします。
ちゃし。
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