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<試写>映画『ヴィレッジ』   藤井道人監督が描く「村社会」

こんにちは! 京都支部の今村です。
 アカデミー賞など大きな賞レースも終わり、とりあえずひと段落かと思ったのも束の間、話題作が次々と公開されてあくせくしています(笑)。

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 今回は、そんな公開を控えた話題作から一つ、映画『ヴィレッジ』についてご紹介します!今回ありがたいことにオンライン試写のお話をいただき、皆さんより一足先に鑑賞させていただきました!ネタバレなしで自分が感じた今作の魅力などをお伝えできればなと思います。

映画『ヴィレッジ』とは


 今作がスクリーンに映し出すのは小さなムラのコミュニティの中で抗えないと思われた運命に縛られた一人の男・片山優が、東京から帰郷した中井美咲との交流の中で希望を見出し、人生を変えようとする物語。
ようやく見つけた希望を手放さないために、必要悪ともいえるような悪事にも手を染める優。その先に待ち受けるのは運命からの脱却した未来か、はたまた何も変わらない未来か。

 現代にも当てはまる社会構造を浮き彫りにした恐ろしくリアルで社会的なストーリーは、圧倒的な映像美や役者陣の演技によりかなりの重厚さになっています。

横浜流星×藤井道人監督のタッグ


 監督を務めるのは『余命10年』『ヤクザと家族 The Family』などでおなじみ、今や日本映画界を代表する監督の一人ともいえる藤井道人監督。惜しまれつつも昨年亡くなったプロデューサー・河村光庸さんの「日本人の間にはびこる同調圧力などに一石投じる」という思いを汲み、今回の脚本を作り上げました。

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 そして主演を演じるのは藤井監督とは6度目のタッグとなる横浜流星さん。彼もまた、知らない人はいないほどの存在ではありますが、今作ではこれまでの彼とは少し違う、無精髭に暗い表情の闇落ちした姿で運命に苦しめられる片山優の姿をリアルに体現しています。後でまた述べますが、彼の新境地ともいえる演技を作中では見ることができます。

 お2人がタッグを組んだ作品でいうと僕はNETFLIXのドラマシリーズ『新聞記者』が記憶に新しいです。この作品を観たことがある方は再タッグと聞いただけで期待してしまうのではないでしょうか!


筆者から見た映画『ヴィレッジ』の魅力


 ここからは一足先に鑑賞させていただいた筆者なりの今作品の魅力をお伝えします!ぜひ頭の片隅にでもおいて、劇場に行ってくれればうれしいです。

1.藤井監督らしい、どん底からの復活劇
 藤井監督の映画では、例えば『デイアンドナイト』の阿部進之介さん、『ヤクザと家族 The Family』の綾野剛さん、『余命10年』の小松菜奈さんのように、一度は絶望・どん底を経験した人が描かれ、そして希望となる誰かの助けで這い上がろうとするという構図が多いように感じます。『ヴィレッジ』でいえば横浜流星さんと黒木華さんの関係ですね。

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 藤井監督が描くこの構図は、なかなか一筋縄ではいかないというか、予定調和とならないというか。とにかく観ていて「あ~やっぱりこうなるか」とならないんです。仮になっても、その過程や映像づくりに圧倒され退屈さを感じることがありません。

2.恐ろしくリアルで、気持ち悪さまでも感じてしまう「村社会」
 今回の舞台となるのは美しいかやぶき屋根が並ぶ⼭あいの霞⾨(かもん)村。主人公の優は父が犯したある罪により、当事者ではないにも関わらず「犯罪者の息子」として執拗なまで後ろ指をさされ続けます。その根底にあるのは村人たちの間の「同調圧力」です。小さな村という閉塞的な空間だからこそあらゆる話が村人の間を巡り、ほとんどの人が「父が犯罪者」というレッテルだけで優という人物を知っているかのように振る舞う。こうした映像は観ている人の心を直接鷲掴みにするような衝撃を与えます。ほかにも、権力者には従う、周りが認めたら認めるなど、「悪しき」ともいえる風習が作中いたるところに見受けられます。

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 しかし、これらから感じられる「気持ち悪さ」は決して映画の舞台特有のことではありません。むしろ作品は、私たちの社会にはびこる問題や現実を分かりやすいように小さな「村」に当てはめただけなのです。 「気持ち悪さを感じる」。これだけで観るのを拒む人がいるかもしれません。しかし、本作を観なければ得られない視点もあると僕は思いました。

3.トップレベルの演技の応酬!
 最後の見どころは、なんといっても役者陣の演技です。特に主演の横浜流星さんの真骨頂ともいえる演技は言わずもがなです。なんとなく「さわやかイケメン系」のイメージがある方は、この作品をみてガラッとイメージが変わるはずです。横浜さんファンの方々にも、「たまには違う姿をどうぞ!」と強くお勧めしたいです!
 そして、黒木華さん、古田新太さん、一ノ瀬ワタルさん、奥平大兼さんなどなど…….。挙げればきりがないほど多くの豪華俳優陣が圧倒的な演技力で登場します。

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 学生が映画館に行くことを応援するチア部として一番推したいのはここです。演技力がすごいことはつまり、気づけるか気づけないかの細かいところまで抜かりなく演じることができるということです。指の動き、息遣い、すべてをとっても一級品であるこの作品。音響、映像、その他すべてが映画を見る最高の環境である映画館で絶対に見てほしいです!「どうせサブスクで出るから……」なんて考えている人も、たまには映画館で観てみませんか?


以上、映画「ヴィレッジ」についてでした!
正直、藤井監督の作品は無条件でおすすめしたいくらい大好きな僕ですが、この作品は演技や社会性などあらゆる点をとって特におすすめしたい作品です。ぜひ、これを機に劇場へ足を運んでみてください!

作品情報
映画『ヴィレッジ』 4月21日(金)全国公開
配給:KADOKAWA/スターサンズ
京都での上映館:TOHOシネマズ二条 イオンシネマ京都桂川 T・ジョイ京都 MOVIX京都 イオンシネマ高の原

その他情報は公式サイトをチェックしてください!


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