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『彼女はひとり』監督:中川奈月さん、主演:福永朱梨さんインタビュー

こんにちは!最近はだいぶ暖かくなってきましたね🌸

さて、今回は・・・第15回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のSKIPシティアワードなどを受賞し、昨年から各地での上映を経てついに!元町映画館でも4月2日から公開される、映画『彼女はひとり』から、監督の中川奈月さんと主演の福永朱梨さんにインタビューを行いました!

監督:中川奈月さん
主演:福永朱梨さん



制作から6年の時を経て公開された本作が生まれた経緯から、お二人が映画に携わるきっかけとなった学生時代のお話など、非常に興味深いお話をたくさんお伺いしました!
「そうでしかいられない」というような彼女が起こす行動と、幻影がもたらす過去との対峙に最後まで目が離せない作品です。

『彼女はひとり』ポスター

ストーリー
高校生の澄子(福永朱梨)はある日橋から身を投げた。しかし、死ねずに生還する。父は引っ越そうと言うが自分の意思で残ることを選び、1年留年して学校に戻ってきた澄子は、同級生となった幼馴染の秀明(金井浩人)を執拗に脅迫し始める。身を投げる原因を作ったのは秀明であり、秀明が教師である波多野(美知枝)と密かに交際していると言う秘密を握っていたのだった。その行為は日々エスカレートしていくが、そこには過去の出来事、そして澄子の家族に関わる、もうひとりの幼馴染・聡子の幻影があった…。(公式ホームページより)


ー本作は6年前に撮影されています。そして今回、4月2日の元町映画館に至るまでコロナ禍で上映されていますが、お気持ちはいかがでしょうか。

(中川監督)
撮影は6年前で、一番最初のSKIP映画祭(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)に入ってから、ここまで来るのに本当に時間が掛かりました。私はどう作品と共に行けば良いかわからず過ごして来たんですけど、本当に色んな方が「おもしろいから」と背中を押し続けてくれて、時間が経った今でも「この映画は大丈夫だから」と言ってくれたんです。その方達に観ていただけて、好評いただけるというのが、すごく嬉しいです。
上映がコロナ禍になってしまったのはすごく残念ではあるんですけど、ちょっと落ち着いた時期にタイミング良く公開できたのは良かったですね。今はちょっとコロナが増えつつあるんですけど、それでも映画を楽しみにしている方々がいて感謝でいっぱいです。

(福永さん)
映画を撮った当時は20歳頃で、わからないながら一生懸命やっていたんですけど、自分にとって思い入れがある大切な作品だったので、作って終わりではなく、たくさんの人に観てもらいたかったです。今は大変な世の中ですけど、日常の中の希望をちょっとでもこの映画で感じてもらえたら、と思います。

ー作品が制作された経緯についてもお伺いしていこうと思います。

(中川監督)
元々は大学院(立教大学大学院映像身体学科)での修了制作でした。映画学校の学生たちに手伝ってもらって映画を作ろうと思っていたのですが、脚本を書き続けてもなかなか良いものができず、休学を決めた辺りぐらいに、指導教員の篠崎誠監督が、私が書いていた脚本をすごく気に入って下さり、「これはプロの方を呼ぼう」ということで始まりました。その後、芦澤明子さんに撮影に参加していただき、撮影スタッフ3人(撮影:芦澤明子さん・照明:御木茂則さん・録音:芦原邦雄さん)大御所の方達と学生という編成で撮影が始まりました。まともに映画を撮ることが初めてだったので大変でした。でも、なんとかみなさんのおかげで完成させることができました。

ーそのようなプロの方もいらっしゃるなかでの現場はいかがでしたか。

(中川監督)
結構しんどかったです。プロの方に付いていくのが精一杯でした。でも演技を見ている時はめちゃめちゃ楽しくて、それを撮ってもらっているのもすごく嬉しかったです。結構精神的にはやられて死にそうでしたけど、楽しかったです。

ー福永さんは他の俳優さんとの現場の雰囲気はいかがでしたか。

(福永さん)
結構和気あいあいとしていました。
この前、お父さん役の山中アラタさんとお会いした時に、私はそう思わなかったんですけど「あんま喋んなかったよね」と言われて。「澄子とお父さんとの関係だからかな」とアラタさんがおっしゃっていました。秀明役の金井君とは空き時間やお昼の時間に喋ったりしました。劇中では、秀明と楽しく過ごす時間がなかったので、空き時間に澄子と秀明にとっての思い出作りをしていました。

ー現在進行形のスリリングさが続いていく物語の構成にとても引き込まれたのですが、福永さんが脚本を読まれた第一印象はいかがでしたか。

(福永さん)
澄子が遠い存在だと感じなかったです。見る人によっては「この子はいやだな」と嫌悪感を抱く人がいると思うんですけど、その感情を外に出さないだけで色んな人の心の中にも鬱憤が溜まっていると思います。私の中にもそういうものがあったので、脚本を読んだ時に澄子に対して「これ私だ!」と思ったんですよ。だからこの役は絶対やりたくてオーディションを受けました。

ー澄子の第一声を聞いたときにとても不思議な魅力を感じました。澄子を演じるにあたって声の出し方など、なにか意識されたのでしょうか。

(福永さん)
あまり意識はしてないです。
自分がいつも出演したものを見ると声が高いなと思います。以前は、この声がコンプレックスだったんですけど、「良い声だね」と言われるようになってからは、「これは強みになるかもしれないな」と気付きました。

(中川監督)
澄子役でオーディションに参加した他の方は、結構ドスを効かせて恐めに言う人が多かったんですけど、福永さんはサラッと言うので、逆にめちゃくちゃ(恐さが)伝わりました。

ー監督が脚本を書かれた時の澄子と、福永さんが演じられた澄子の印象はいかがでしたか。

(中川監督)
すごくおもしろかったです。特に秀明と言い争うシーンがめちゃめちゃおもしろく、恐いセリフを生で聞くともっと恐いし、すごかったです。
自分で書いた脚本を演じてもらって、「こんな楽しいことあるんだ」と、演技を見ながら私が楽しくなっていました。

ー6年前に本作を撮った時の経験は、現在の監督業や俳優業にどのように活かされていると感じますか。

(中川監督)
中々できない経験を最初にできたのが一番大きかったです。当時の経験は、何年かに一度遭遇するかどうかのすごさだったので、「これを越えないと」と思ってやっています。

ー「重荷」ではないのでしょうか。
(中川監督)
これからもやり続けたいので、重荷にしちゃっても仕方ないと思ってます。
『彼女はひとり』での経験は、その時にしかできなかったことなので。

(福永さん)
私はこの作品に会うまで、陰の役が自分に合っているとは思ってなかったんですけど、この役をやってみて自分に陰の役がしっくりくることがわかりました。『彼女はひとり』以降、何か抱えてるような人物の役をやる機会が増えたので、自分の強みを気付かせてくれた作品になりました。

ーお二人の学生時代についてお聞きします。監督や俳優は高校や中学の頃から目指されていたのでしょうか。

(中川監督)
中学生ぐらいの頃はテレビでやってるような映画が好きでした。「映画を撮ってみたい」「映画監督になりたい」と思ってはいましたが、実際に作ったりはしませんでした。
大学では映画研究会に少し入りましたが、撮ってる人から「ちょっと出てくれ」と言われて江ノ島に2、3人くらいで行ったんです。けど撮影が全然楽しくなく、完成された作品もよく分からなかったので、「何やってんだろ」と思いました(笑)。そのままフェードアウトしていったので、映画はあまりやっていなかったです。
大学では「演じるのは違うな」と思ってフラフラしていましたね。就活する時になって「やっぱり映画やろう」と思い、そこから映画をやり始めました。

ー演じることより、撮る側で面白さを見つけたのでしょうか。

(中川監督)
そうですね。やってると「全部作りたいな」という気持ちになりました。全部一人でやってみたかったので。大学卒業してから撮ってみて、面白かったです。通っていたニューシネマワークショップのコンペでは落ちちゃったので、大学院で映画を続けたいと思いました。

ー福永さんは、最初から俳優になりたいとは思っていらっしゃったのですか。

(福永さん)
私は学生の頃は映画を見ていなくて、年に1.2回くらいしか映画館にも行かなかったんです。
高校3年生くらいの頃にマネージャーさんと知り合って「モデルをやりたいのか、俳優をやりたいのか。」と聞かれて、「わからないです」と答えたら、映画のリストを渡されました。そのリストにある映画を片っ端から見て「なんだこの世界は」とカルチャーショックを受けたのがきっかけで、「俳優をやりたい!」と思って直ぐ東京に出てきました。それまでは商業高校だったので「資格を取ったら就職楽かな」と思って、資格のために頑張ってたのにいきなり「東京行く」と言って、お芝居の専門学校に行きました。

ー今は映画を見るのも好きなんですか。

(福永さん)
そうですね。最近はネットで見ることが増えました。出身の広島県ではミニシアターに行ったことがなかったんですけど、東京に来てミニシアターの存在を知りました。私も学生の頃にミニシアターに行きたかったですね。

ー学生にオススメの映画があればお聞きしたいです。

(中川監督)
私は黒沢清監督の『CURE キュア』です。

(福永さん)
木下惠介監督の『永遠の人』です。「この監督を見よう」という時期があって、その時に木下監督を見ました。木下監督の作品は、楽しい時に悲しい音楽が流れたりするのが衝撃的で、おもしろいです。昔の家の大きいセットも建ててあったりと見応えのある作品です。

ー最後に学生に向けて、メッセージをお願いします。
(中川監督)
私は大学生の時に映画を見て、それに関わることを何か探して、映画祭のインターンをやってみたりしてました。プロの人達がどうしているのかを見てるとやる気が出ますし、足を広げられるのが学生の良いところなので、もし何か一つやりたいことがあるのであれば、早めにやった方が良いと思います。

(福永さん)
地元が広島県なので、大学行って、就職して、家庭を持つというのが、みんなが辿る道ですけど、もしきっかけがあるなら、自分が興味を持ったり、知らないことだったり、「知ったらおもしろいのに!」ということに一歩踏み出してみると、楽しい世界が広がっていくと思います。
今は興味がなくても、知れば興味を持つかもしれないので、色んな経験をして、その中から自分が興味を持つものを見つけて欲しいなと思います。


映画『彼女はひとり』は元町映画館では4月2日(土) 〜4月8日(金)まで公開予定。


公式ホームページ↓

公式Twitter↓
https://twitter.com/kanojo_hitori?s=21



過ごしやすなってくるこれからの季節、ぜひ映画館まで足を運んでいただけたらと思います🌼
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


聞き手:かず(映画チア部神戸本部)むらた(映画チア部京都支部)
執筆:むらた
執筆協力:かず、まっぴぃ(映画チア部神戸本部)



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