『君は永遠にそいつらより若い』吉野竜平監督独占インタビュー 【後編】
劇中の登場人物に焦点を当てた前編に続き、後編では映画から考える私たち大学生のこれからの生き方もご相談!進路相談みたいな場面も!(笑)
吉野監督ご自身のお話から学ぶことが山ほどありました。映画を通してここまで考えられる作品ってやっぱりすごいです。
進路に悩む若い世代に届いてほしい!後半スタートです!
■「間違ってるかもしれないけど今の私にとってこれが正しい」ホリガイに投影した“格好いい人”
ごみけん:ホリガイは他人に深入りしたり、自分の主張をしたりすると、それを指摘されたりするのが怖くて、自己防衛みたいな感じでヘラヘラしてその場を収めたりしているのかなと感じました。
だけど、色んな人と出会って、最終的には他者に最も深入りしたある行動に出る。
社会に出る上で自分の殻を守ることはできないし、他人に深入りしたり、自分の主張言ったりしなきゃいけないことが増えると思います。僕自身それがすごく難しいと思っていて、そういう他人との関わりとかの観点で、込めた思いやこだわりはありますか?
吉野監督:そういう風にヘラヘラするのは、どこか自信がなくて、受け流すことによって諦めみたいな部分もあるし、他の人が経験してることを自分が経験してないことに対する劣等感とかからくる自信のなさなんですけど。
そこを周りから指摘されないようにヘラヘラと笑ってかわすんだけど、すごく誰かと強烈に関わらなきゃいけない、誰かを助けなきゃいけない時に、カッコ悪くっても、無様でも、私は人を助けますって踏み切れるようになったのが、このホリガイのドラマであり...。
やってることは犯罪じゃないですか。不法侵入だし、モラルに反してるんだけど、でもホリガイはそういう風にしか生きられない、むしろそれがホリガイの軸なんだってことを自分で気づくっていうところなんで。
いつも強烈に人と関わるので疲れちゃうじゃないですか。そういう風にできる人もいるのかもしれないんですけど。
たまにヘラヘラ受け流すことも大切だけど、でもここぞという時、どうするのか迫られた時に、今までどおりヘラヘラ受け流すのか、もう失敗してもダサくてもいいから「私はこうしたいんです」と言えるのか、二つ選ばれた道があって。
今まで通りに受け流してると結局何も変わらないし、それでも、かっこ悪くても、失敗するかもしれないし、間違ってるかもしれないけど、今の私にとってこれは正しいことだと思うんですってちゃんと言える人はかっこいいなと思いますね。そういうことを描きたくて、あのシーンを作りました。
ごみけん:それだけかっこ悪くてもいいからって行動できる、そういう想いを持てることって結構難しいですよね。
吉野監督:でも僕自身も今くらいの歳になって、自分を過大評価してきてたなって思います。それこそ大学生の頃とか、評価が崩れるのが怖いし、格好悪いなみたいな。意外と周りの人は、自分のことそんなに評価してないんですけど。
自分が思いっきり道端でこけたとしても、イメージ傷ついたって思うよりかは、ヘラヘラ立ち上がって、やっちゃったよくらいな感じの方が、気が楽ですし。失敗しようが、ダサいところ見られようが、それを「へへへ」って思ってた方が。
自分を思い返すと、自分を過大評価してたから、失敗したらどうしようとか、かっこ悪いとか、周りの人に失敗してるところ見られたら、陰で色々言われるんじゃないかなとか思ってたけど、意外と周りの人はそんな自分のこと見てない(笑)
■やりたい仕事?向いてる仕事?映画から考える仕事、社会への向き合い方
ほの:ホリガイのセリフで、やりたい仕事と自分に合う仕事どっちを取るかっていうのがあったと思うんですけど、吉野監督にとって映画監督は、やりたい仕事か自分に合う仕事かどっちだと思われますか?
吉野監督:年齢によって全然変わってきますね。大学出た後に映像の専門学校へ行って、その後、映像の世界に入ったんですけど、最初は映画とか映像を作るのが楽しかったから、やっていきたいなと思ってたけど、その世界に入ったらすんごい向いてないと言われたんですよ。
ベテランの人に説教されたり、それも一理あるところもあったと思うんですけど、元気がないとか、愛想がないとか、覇気がないみたいな。
向いてないのかなとかって思ってたけど、向いてないと思いつつ、やっぱり自分で何か作るのは楽しいし、10人のうち9人はお前向いてないって言われるけど、1人くらいは、たまに吉野君の作品面白いよねって言ってくれる人がいるんですよね。
ていうので続けられてきたので、今も向いてるか向いてないかで言えば、向いてないんでしょうけど......。
やりたいことと向いてることが合えば一番幸せなんでしょうが、逆にそういう風に向いてないよって言われて、逆風を受けながらやるのも楽しいですよ。いつでも辞めてやるよって思いながらできるので。
これがなくなったら自分終わりだとかじゃなくて、別に人生の100%が仕事じゃなくて全然いいと思うんですよね。合わなきゃ辞めりゃいいやくらいで。
でも、やっぱり勝負する時って絶対出てくるので、その時は100%リスクを背負って全力でやるけど、四六時中そんなに考えなくてもいいとは思います。
ほの:吉野監督の言葉を聞いて、やりたい仕事を優先してやってみようかなってなりました。
吉野監督:やりたいことあるんだったら絶対そっち行った方がいいですけどね。やりたいことやってみて、あんまりうまくいかなかったら考え直せばいいし。
意外と自分が向いてないと思ってたのに、周りからそれめちゃくちゃ向いてるねとか言われることってあるじゃないですか。
自分がそんなに思い入れない仕事でも、周りに向いてるよねって言われるってことは何か理由があると思うんで、それはそれで幸せなことじゃないんですかね。
■若い世代に向けて……
ごみけん:最後に、僕らと同世代の大学生、若い人たちに向けて、この映画を通して伝えたいことや、どう観て欲しいかというところを聞かせてください。
吉野監督:大学生ってフラフラして、毎日楽しく遊んでるように見えて、それなりのそれぞれの独自の悩みがあって、大学生って一括りにしても、それぞれ背負ってきたバックボーンも違うし。
そういうところを描きたくて本作を撮ったので、こういう風に主人公が考えたり、周りの人との関係を築いたりってのが、「こういうの分かるな」っていうあるあるみたいな感じで思っていただけたら嬉しいです。
自分に何が出来るのかとか、何が好きなのかとかに対して、大学生の頃は一人で悩んだりすると思うので、そこをホリガイだったり、この映画に出てくるキャラクターに重ねてくれたりしたら嬉しいなと思います。
この映画って年齢によって、全然見え方が違ってくると思います。この作品を大学生で観た時感じたことが、就職して、十数年経ったときとかで、全然違う見方や感想が出てきたりすると思うので、大学生の頃観た時はこういう風に思ったってことを覚えててほしいです。
ごみけん:ありがとうございます。取材が進路相談みたいになってしまったんですけど、そういう考え方があるんだって、僕らもちょっと盲点だったところとかもあったのですごく面白かったです。
吉野監督:就活って、本当に日本社会の悪い部分を凝縮したものだなと思うんですよね。でもそんな中でもちゃんといい出会いもあるし、そこをつかめたらラッキーだと思うんです。
あんまりうまくいかない時、そんなに自己否定しなくていいですよ。まだ、20何年しか生きてないのに、こんなに否定されるかっていくら否定されるじゃないですか。だから全然気にせず、頑張ってください。
ごみけん、ほの:ありがとうございます!
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最後まで読んでいただきありがとうございました!吉野監督インタビュー後編。いかがだったでしょうか。
監督のお人柄が垣間見え、この作品を吉野監督が撮った理由が分かった気がしました。
これからの私たちががどう社会と向き合っていくのか。どう仕事と向き合っていくのか。どう他者と向き合っていくのか。その姿勢や考え方に新たな視点を加えてくださいました。就活を控えたこのタイミングでこの映画に出会えたこと、監督に直接お話を伺えたこと、本当にいい機会でした。
映画をすでに観た方、これから観る方も、自分に照らして考えてみるとおもしろいと思います!
公開は明日9/17!ぜひ感想お聞かせください!
執筆:ごみけん、ほの
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