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大阪ミニシアター巡り🚗第2弾【第七藝術劇場】支配人小坂さんインタビュー🎤(前編)

こんにちは!映画チア部大阪支部の(さや)です。

関西にたくさんあるミニシアターの一つひとつにスポットを当てて、魅力を伝えていきたい!という思いで始めた「大阪ミニシアター巡り🚗」企画。

第1弾では閉館前の【テアトル梅田】を取材させていただきました!



今回は第2弾【第七藝術劇場】です!
エレベーターを降りてすぐ、重厚な雰囲気が漂う鉄の扉を開けて緊張しながら中に入ると、スタッフの方がとてもフレンドリーに迎えてくださいました💭

支配人であり、番組編成を手がけていらっしゃる小坂誠さんにお話を伺いました!
内容が盛りだくさんなので、(前編)と(後編)の2つに分けて公開します📔

(前編)では劇場について、そしてコロナ禍以降の第七藝術劇場についてのインタビューを掲載しています。
劇場名に対する小坂さんの思いや劇場のこだわりについて、新たな「出会い」の場としての第七藝術劇場の魅力を知ることができました🌟

そして第七藝術劇場がこれから始めていきたいと思っていることについても大変興味深いお話を伺うことができたので、ぜひ最後までお楽しみください♪





聞き手(なつめ、さや)

●劇場について

チア部:イタリアの映画理論家であるリチョット・カニュード(1879‐1923)は著書『第七芸術宣言』(1911)の中で、「建築、絵画、彫刻、音楽、舞踏、文学に続く〈第七の芸術〉としての映画」を定義しました。
そこからここの「第七藝術劇場」という劇場名は付けられたと思うのですが、小坂さんご自身はその劇場名をどのように捉えておられますか?

小坂さん:1993年に最初の「第七藝術劇場」がオープンしたんですが、その頃から今では経営している会社が変わっています。一応名前は引き継いだんですが、最初に「第七藝術劇場」という名前を付けて映画館を始めたのは、今いるスタッフとは全く違う人たちなんですよ。昔からやはりミニシアターは大変で、閉館したりまた始めたりを何度か繰り返してきました。現体制での第七藝術劇場は、2002年に今経営している会社によってオープンした時からです。だから最初に第七藝術劇場という名前を付けた人の思いは、実は僕も想像することしかできません。

ただ、覚えてもらいやすいというのはありますね。「第一、第二、第三…ってあってここが七番目なの?」とか「第七芸術って何ですか?映画のことですか?」とかお客さんから聞かれることがあって、すごくとっかかりがあって、ここを知ってくださる入り口にもなっているのかなと。そういう意味では気に入ってますね(笑)。

入口の「第七藝術劇場」の文字は特徴的で、趣深い劇場の雰囲気が感じられます💭


チア部:先ほどお話しされたように、現在の第七藝術劇場ができる前から、前身の映画館がずっとこの十三の土地にあったということを知りました。十三という土地とそこに暮らす人のイメージ、また十三にある映画館としての役割、立場のようなものについてどうお考えですか?

小坂さん:確かに、ナナゲイが入っているこのビル自体すごく古くて歴史があったり、第七藝術劇場になる前から違う名前の劇場だったりするんですよね。ビルが建つ前も、十三にはいくつか今につながるような映画館があったらしくて、十三の映画館としての歴史がすごくあるみたいです。とは言え今は地元の十三のお客さんが多いわけではなくて、大阪ではここでしかやっていない映画だと大阪中から、それから阪急沿線の神戸とか京都からのお客さんが多くて、ラインナップからもわかるように、今は地元の方向けの映画館ではないかなと思います。

ただ、この映画館の存在が、十三に来てもらう1つのきっかけにはなっていると思いますし、なれればいいなとも思います。今十三って飲み屋街のイメージが強いと思いますが、もうちょっと若い人とか新しく来る人とかが増えれば、もっと他の文化的な施設とかが増えていくのかなと思います。そういう意味で、この町に新しい人が来てくれるきっかけの場所になりたいなと思います。

チア部:劇場の内装やスクリーン、上映する空間にこだわりはありますか?

小坂さん:ナナゲイが入っているビル自体も劇場自体も、全体的に古いんですよね。昔の映画館は結構そういう造りが多かったらしいんですが、スクリーンの前のステージが広いという特徴があります。というのも、映画館としてだけじゃなくて、色々な用途に使う目的で作られたかららしいです。イメージとしては学校の体育館のような感じ。こちらのこだわりというよりは、昔から引き継がれてきている劇場ということもあって、良く言えば趣がある(笑)。

今シネコンとかだったら大体規格が統一されていると思うので、そういう意味では初めて来て驚かれるような方もいますし、あえて新しい感じにならなくてもいいのかなと思っていますね。この趣のある感じをどれだけ続けていけるか、みたいな。

第七藝術劇場のスクリーン
広いステージはまるで体育館の舞台のようで懐かしさを感じます!


小坂さん:それから、ロビーは狭いんですけど、スマホの画面を見ながら映画を待っているんじゃなくて、何か楽しんでもらえるようにしたいなという思いがあります。通路奥の左側はギャラリーになっていて、月替わりで地元の人や若手のアーティストさんの展示をしています。チケット発券機の隣には映画と関係のない古本を置いていて、映画の待ち時間も充実してもらえるようにしています。

チア部:古本はどういうセレクトなんですか?

小坂さん:あれはこちらでセレクトしているのではなく、阪急十三駅の東側にある海月(クラゲ)文庫さんに出張で入れてもらっています。本が減ってきたら入れるという感じでやってもらっています。

チア部:だから、本当に色々な種類の本が並んでいるんですね。

小坂さん:そうですね。逆に映画関連の本はほとんど置いてないと思います。

映画館はもちろん映画ファンの人たちが来る場所だけど、作品ごとに全然お客さんが違うと思うんですよ。特にナナゲイはドキュメンタリー映画を多く上映していて、作品ごとに全然内容が違います。というわけで、映画というものに関心がある人が来るというよりも、作品の内容に関心のある人が来ます。例えば(取材当時上映予定の)『百姓の百の声』だったら、農業について関心のある人が来たりする。

だから、映画ファンの人たちが集う場所にしたいというよりは、ここをきっかけにその人の世界が広がるような場所にしたいと思っています。農業についてそんなに知らなかったけど、映画を観てみたら農業の世界のことがわかったり興味を持つようになったり…みたいな。だから、映画関連の古本を並べるのではなく、色々なジャンルの古本を置いてもらっています。

通路に設置されたギャラリー。地元のアーティストや若手のアーティストの作品が月替わりで展示されています!
海月文庫によってセレクトされた古本の数々。新たな出会いがあるかもしれません!



●コロナ禍以降の第七藝術劇場について

チア部:コロナ禍でミニシアターが今まで以上にマス・メディア等に取り上げられましたが、その影響にはどのようなものがありますか?

小坂さん:確かに、ニュースやワイドショー、新聞媒体でコロナ禍の映画館の取材が多くあって、報道や記事の掲載などをしてもらいました。直接その影響というよりも、どちらかというと働いているスタッフが、小さな劇場にこんなに関心を持ってくれる人たちがいるんだということに驚きました。

コロナが流行し始めてすぐの時にミニシアター・エイドも立ち上げて下さって、クラウドファウンディングでミニシアター支援のために3億円以上が集まりました。これも、そんなに集まるとは誰も思っていなかったと思うんですよね(笑)。

関西のミニシアターでTシャツを作って販売した時も、びっくりするような枚数を買ってもらいました。劇場だけじゃなくて、普通に電車に乗っていてもそのTシャツを着ている人がいたりして(笑)。相当売れないとこういうこと起こらないじゃないですか。

コロナをきっかけに、これだけミニシアターに関心を持ってくれる人、好きでいてくれる人たちが多いんだということが初めてわかりました。それまでは、自分自身も働きながら、一部の人だけしか知らない場所というようなイメージだったので、これだけの方が関心を持ってくれているんだなということにすごく驚きました。

チア部:コロナ禍より前と後で、劇場に来るお客さんに変化や違いはありましたか?

小坂さん:明確に変わったと言うようなことはなかなか難しいんですが…。

やっぱり映画館ってシニア層のお客さんが多いんですよ。平日の朝や昼間となると、どうしてもシニア層の方のほうが動きやすい時間だったり、作品のセレクト自体がシニア層の方に来てもらえるようなラインナップになりがちだったりとかがあって。

コロナ禍では、特にシニア層のお客さんが減ったということはあります。映画館があてにしていたシニア層の人たちは感染して重症化するのが怖いということで一気に減って、それが映画館の売上にダメージを与えたと思います。

それに伴って、シニア層の方も配信を見るようになったんじゃないかと思います。スマホでYouTubeやNetflixに見るようになったという方もいらっしゃると思います。

ということで、コロナ禍に入ってシニア層の方たちが減って、そこからなかなか回復しきっていない感じが今もあります。それは、コロナが怖いというよりは、映画館に通うという習慣自体が少し変わってしまったということだと思います。それはコロナの心配がなくなってもなかなか戻ってこないので…。その分、若い方に来てもらいやすいような打ち出し方をしたり、作品選びをしたりするように今後シフトしていかないと厳しいなという感じはありますね。

チア部:コロナ禍では「仮説の映画館」という配信事業があったり、ミニシアターが運営している配信事業もいくつか出てきていたりします。第七藝術劇場でも配信の影響を感じる部分はありますか?

小坂さん:確かに、劇場でいくつか配信をされているところもあったと思います。でも僕自身、それが実際結構見られているのかあまり見られていないのかわからないので、それ自体が良い方向に行っているのかはわからないんですが、今後配信される作品が増えていくことは間違いないと思います。

多分今って、映画館側の「配信するのであればうちの劇場ではかけない」という方針によって、あまり日本では配信が進んでいないのではないかと思います。ただこれは恐らく時間の問題で、長くは続かないと思います。今後は配信と劇場公開が同時スタートとか、先に配信がスタートして後で劇場公開とかいうケースも割と増えてくるんじゃないかと。その場合、シネコンのような大きな劇場ではお客さんが減るのは間違いないと思います。

でも、配信があることによってその作品を見る機会が増えて、ある意味宣伝や作品自体の盛り上げにもなるというメリットがあります。配信で作品を知って、じゃあ劇場にも行こうかという人も出てくると思うんですよ。そういう意味では、ミニシアターぐらいの規模感であれば意外とそんなに脅威じゃないというか。配信と同時に劇場公開となったとしても、その影響で増える分と減る分があって、実際そんなにお客さんの数に影響しないんじゃないかなというような気がしています。というより、そういうふうにしていかないとだめだと思っています。

つまり、劇場で映画を観るということを、配信で観ることとは違う体験にできるかどうか。両者が違うものとしてお客さんに認識してもらえるかどうか。だから今他の劇場さんでも、イベント上映が増えてきたり、音響設備をとにかく良くして自宅で観るのと差別化したりとか。

ナナゲイは、結構トークに力を入れています。上映後の監督のトークを1時間以上やったり、そのあとお客さんと交流してもらったり。この劇場は今のところ設備も古くて、他の劇場さんみたいに音響の迫力も出せないので、実際にこの場で観て、その映画を制作された方の話をその場で聞いて、自分からも質問をしてもらったりして交流してもらうということに力を入れています。

だから映画館側としては、たとえ配信が劇場公開と同時で始まったとしても、劇場を選んでもらえるようにできるかということを今後頑張らないという感じです。脅威と言えば脅威ですけど、逆に配信があることで広まる部分もあって、作品を広く知ってもらうことに繋がって、劇場の宣伝と捉えることもできるので。そういう意味ではそんなに恐れていないというか、どうなっていくんだろうという楽しみがあります。

チア部:小坂さんは今、「映画館にしか提供できない体験」についてどのようにお考えですか?

小坂さん:映画館でないとできない経験としての一番は、やっぱり交流ですね。映画を作られた方との交流は、こういう場所に集まらないとなかなかできないことなので。

あとは、「映画館に映画を観に行く」という行為自体が持っている意味もあると思います。上映の日程が限られていて、時間も1日1回とかで、電車賃をかけてわざわざその日に来るって、現代社会とは思えないような面倒臭さですよね(笑)。それでもお客さんが来てくれるということは、その行為自体が魅力的で、それ自体が体験の1つなんだろうと思います。そういった意味でも、映画館で映画を上映して、複数の人と一緒に映画を観るということ自体が持っている特別感があると思うので、劇場としてはそのあたりを追求していくことになるのかなと思います。

そもそも、劇場で映画を観るということと配信で観るということは全く別の体験で、劇場に来る人と配信で観る人があまり重なっていないのかなと思います。配信で終わる場合、そもそも劇場に来なかったのかなという気もするので、映画館で映画を上映して観に来てもらっているということ自体が持っているものをもうちょっと信じてもいいのかなと思いますね。

チア部:ナナゲイでコロナ禍以降新たに始められたこと、今後始めたいことはありますか?

小坂さん:コロナ禍で行動が制限されることも多かったので、オンラインでの舞台挨拶にはかなり力を入れてやっていました。海外の監督たちも交通費をかけずに舞台挨拶をしてもらうこともできたので、本来であれば絶対できなかったような、海外の監督の舞台挨拶もできました。

監督など映画制作者とお客さんとの交流はこれまでもやってきましたし今もやっているんですけど、同じ映画を観たお客さん同士の交流や別の作品を観に来たお客さん同士の交流とか、十三の町とお客さんとの交流などはこれまであまりできていませんでした。今後は、映画制作者とお客さんとの交流は引き続きやりつつ、お客さん同士の交流を進めていけたらと思って試行錯誤している段階です。ここに来れば新しい映画とも出会えるし、新しい人や世界とも出会えるというような場所にできたらなと。そういうわけで、ギャラリーを展開したり、古本を置いたりしているということもあります。配信の時代が来てもなんとか生き残っていけるんじゃないかと(笑)。

劇場としても、地域にあるお店を回って、他のところとの交流を徐々にしています。例えば映画を観に来たお客さんに「あそこの店オススメですよ」と勧めて、行ってもらって、十三の町の中でもそういうのを広げていけたらなと思っています。

チア部:すごく面白いです!1人で映画を観に来た時、映画を観て感じたことを、思わず隣の人に話しかけそうになったこともあったんですが、気持ち悪いかなと思ってできませんでした(笑)。そういう場を映画館が持ってくれたら、すごく楽しそうです。

小坂さん:皆さんがチア部に所属されているのも、そういう理由があるんじゃないですか?1人で映画を観てそれで終わり、満足という人は多分チア部には入らないと思いますよ。

もちろん1人で観てスッと帰りたいという人も結構いらっしゃるので、無理矢理にはならないように。ガッツリの交流というよりは、一言二言交わすような良いくらいの交流ができる場所にしたいなと思います。

映画館って良い交流の場になるんじゃないかと思うんですよね。映画を観ている最中は完全に一人の世界だけど、映画が終わって灯りが付いたら、みんなで観ていたんだなと気づく。人との距離感が近いようで遠いからこそ、良い感じの場所になれるんじゃないかと思います。




続く(後編)では、映画編成という仕事についてや小坂さん自身のご経験についてのお話を掲載しています🌟
お話の中では「好きなことを仕事にする」ということについても聞くことができました!

こちらから続けて記事をご覧いただけますので、ぜひ最後まで読んでください🍀
学生の皆さま、必見です!



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