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スマホに話しただけなのに

映画「ハリガン氏の電話」

わたしが若かった頃、スティーブン・キングの小説は国籍を問わず、周りのみんなが読んでいました。わたしがハマったのは小説よりもむしろ、小説を原作とした映画やテレビドラマのほう。ドラマの「ザ・スタンド」や「ランゴリアーズ」「デッドゾーン」がとくに好きでした。そのせいか、いまもスティーブン・キング原作とコピーにあると、とりあえず見てしまいます。
氏のアンソロジー集「If It Bleeds」に編まれた一編を映画化した新作が「ハリガン氏の電話」(「Mr.Harrigan's Phone」)です。

ハリガン氏は田舎町に暮らす億万長者のご老人。主人公の少年クレイグは、ひょんなことから、ハリガン氏に週3回、本の読み聞かせをすることになりました。高校生になっても読み聞かせのためにハリガン邸を訪ねていたクレイグは、iPhoneが発売された年、ハリガン氏にプレゼントして、セットアップを手伝います。最初はスマホに嫌悪感を示していたハリガン氏も、利用するうちにすっかりスマホユーザーに。
ハリガン氏は亡くなる際、クレイグに80万ドル(!)の遺産を遺しました。それだけあれば、大学に通ったうえ卒業後、起業するスタートアップ資金にも十分な額です。クレイグはそのお金で憧れのエマーソン大学に進学しました。(アメリカの私立大学は1年間の学費だけで6万ドルほどします。)
ここまでに作品のかなりの尺を使っているのですが、物語が動くのはここからです。クレイグは、ハリガン氏が亡くなったあとも、スマホを通じて氏と通じ合う状態に陥ります。そして、スマホでハリガン氏に気持ちを伝えるたびに、クレイグの周囲では奇怪な事件が起きていくことに。
このあたりのミステリーの仕込みはさすがだなあと思うのですが、なにぶん、奇怪な事件が起きるのが作品の後半に入ってからで、ミステリーというよりも、クレイグとハリガン氏、青年と老人のヒューマンドラマにミステリー要素がスパイス付けされているように思いました。

ビジネスマンとして大成したハリガン氏の放つ言葉は、本好きで控えめな若者には強烈で、刺さるものが多いです。「負けず嫌いな者だけが生き延びて頂点に立つのだ」「欲しいものを人に頼むな。頼むのではなく、それをよこせと命令しろ!」「敵に出会ったら、すぐに片づけてしまうんだ!」
クレイグの将来の夢はハリウッドで映画の脚本家になることですが、ハリガン氏は「はかない映画よりも、永遠となる本を君に書いてほしい」と、遺言で託します。
ハリガン氏を演じるのは、ドナルド・サザーランド様。キーファー・サザーランドのお父様です。クレイグ役のジェイデン・マーテルはまだ19歳。スティーブン・キング原作の映画「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」でも主演を務めていました。
今後は、スティーブン・キングのベストセラー小説「Later」がルーシー・リュー主演でドラマ化が決定しているとか。スティーブン・キングとルーシー・リュー。なんだか想像できませんが、ルーシーがワトソン君に扮した「エレメンタリー」も面白かったし、日本でも放送してくれますように。


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