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愛してない、愛してる

「パリ13区」

上映時間にスクリーンに向かってみると、すでにものすごい数のおじさんたちが席についていました。これは過去、何度か経験のあるシチュエーション――(「アデル、ブルーは熱い色」「岬の兄妹」「37セカンズ」など)。
わたしは映画鑑賞に際し、事前知識をインプットしないタイプです。劇場に来て、このようにおじさんが多いと、セックスシーンが多いのねと、とっさに予感します。たしかにR18+指定です。おじさんたちのエロに懸ける好奇心(というか執着)は底知れません(誤解のないように、上記3作はわたしは大好きな作品です)。
でも、見終わってみると、この作品にとってセックスシーンは登場人物の感情の変化を描くには絶対必要なものでした。出会ったときは「愛してない」(むしろ、疎ましい存在?)対象だったのが、クライマックスには「愛している」対象にかわっていくドラマだからです。

主な登場人物は4人いて、4人とも、マイノリティーです。
エミリー 台湾系フランス人
カミーユ アフリカ系フランス人
ノラ   30代の大学生
アンバー オンライン・セックスワーカー

左からエミリー、ノラ、カミーユ

意識してマイノリティーを描こうとしているのではなく、現代を描写するのがフランスのエスプリ。孤独を抱えながら生きている4人の人生がシーンごとに、だんだんつながっていきます。オンライン上でつながっていたノラとアンバーが実際に会う公園のシーンは本当に美しいです。

原題の「Les Olympiades」はパリ13区にある町の名前。パリ13区はいわゆるリーブゴーシュに位置し、中国やベトナムの食材を扱うスーパーや雑貨店や中華街があって、日本人観光客も行きやすいと、パリ在住の知人に聞きました。そのほか、国会図書館やアニエス・ベーのアートギャラリー、映画館、高層建築も点在するモダンなエリアのようです。

わたしが最後にパリに行ったのは2006年の秋。もう16年も前……。しかも仕事で。エッフェル塔の画像はそのとき撮ったものです。見出し画像は当時使用したガイドブックの地図ですが、この地図の配置では右下となる13区は、この頃は注目されていなかったのか、残念ながら見切れてしまっています。