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高知を愛で照らす豆電球

前回紹介しました山の中の映画館、大心劇場。この映画館には併設された喫茶店があります。
それが「喫茶 豆でんきゅう」です。

清流安田川。中央に見える赤い屋根の建物が豆でんきゅう
かわいい看板が案内してくれる

 
安田川のせせらぎをBGMとする落ち着いた環境は地域の方々の憩いの場となっています。大心劇場で映画が始まるのをワクワクと待ち、上映後は映画の感想をあーでもないこーでもないと言い合う。充実した時間がゆったりと流れている空間です。
 
トースト、サラダ、ゆで卵という正統派なモーニング、また店主の小松さん自らが育てたお米を使ったカレーライスも絶品。暑い真夏の撮影の休憩中に飲むアイスコーヒーの旨いことといったらもう。
というわけで、こちらも撮影で使わせていただきました。店内も、安田川を見下ろすテラス席もどちらも画になるので本当にありがたい。
 

店内の本棚には映画関連の書籍がぎっしり
撮影前にモーニングをいただく役者の我妻(左)と八洲。窓からは安田川を見下ろせるが店内インテリアも面白い


さて、文中でしれっと書いていますが、この豆でんきゅうの店主は大心劇場の館長でもある小松秀吉さん。
 
映画館の館長で喫茶店の店主というだけでもお忙しそうなんですが、前回の記事で触れたように「ふるさとシンガー 豆電球」としての顔もお持ちになっています。
高知のご当地ソングを、70歳を超えてなお張りのある声でギターかき鳴らして歌い続けています。コロナもようやく落ち着きを見せた今年の夏、毎週のようにどこかのお祭りへ駆けつけて皆を盛り上げる予定です。
 
2023年5月、『追い風ヨーソロ!』の上映に関する打ち合わせで小松さんのもとを訪れました。すると喫茶豆でんきゅうの駐車場、ここに1年前の撮影時にはなかった大きな石が並べられていました。これは何かと尋ねてみると
「石で囲ったところにセメント流し込んでステージを作る」
「完成したらこの駐車場がライブもできるビアガーデンになる」
とのこと。訪れる前には、田植えの直後だから疲れ切っているはずだ、とおっしゃっていたのですが、疲労困憊と言いながらなんとも大掛かりな作業を仕込んだものです。実際に、少々お疲れかなとお見受けする瞬間もあるのですが、セメントを乗せたタンクローリーが到着するとウキウキとスコップ担いで手足を(あと口も)動かしていました。
 

自らセメントをかき出す小松さん。じっと見てなんかいられない


どうして急にステージを作ろうと思ったのか、を聞いてみますと、まあいろいろあるけど……と一瞬言葉を切って
「やりたくなっちゃったから」と子供のようにさらりとおっしゃいました。
続けて「絶対に面白くなりそうだから」とも。なんともあっさりな潔い回答。
 
ふるさと創生という言葉もすっかり定着しましたが、小松さんはそれよりはるか前からずっと高知への愛を歌い続けています。もちろん愛するふるさとを盛り上げたいという想いは強くお持ちですが、そのエネルギーの源は「自分がやりたい」「面白いことをしたい」という実にシンプルかつイノセントなところにある。だからこの人は本物なのです。だから高知にゆかりの無い者であっても高知の歌で心揺さぶられてしまうのです。
 
そんなふるさとシンガー豆電球の歌を『追い風ヨーソロ!』内でも聞けてしまいます。
2021年に点灯50周年として出されたアルバム「絆 高知が好きながよ」から3曲を挿入歌・劇中歌として使わせていただいています。さらに2022年の夏、我々が撮影で高知を訪れる直前に完成したCD未収録の「夏が来た!」に加え、主題歌「追い風ヨーソロ!」は本作のための書き下ろし! 贅沢なことです。
 

豆電球さんのCDたち。高知がすきながよ、がつまっている


歌だけではありません。”小松秀吉役”を演じる役者・豆電球にもご注目ください。台本に書かれたセリフを喋るのは不慣れなことだと思いますが、演技とはまた違う”本物”を作品に添えてくださいました。豆電球さんに出ていただくことで、キャッチフレーズとしている「地産地消映画」が成ったと思います。
 
さて、小松さん自作のステージは無事に完成。こけら落としライブも盛況のうちに終わったようです。活動50年を超える豆電球ですが、球は切れるどころかますます点灯の場を増やしています。
 
※ふるさとシンガーは「豆電球」と漢字のみ、喫茶は「豆でんきゅう」とひらがな混じりの表記になります。
 
 
◆◆◆

『追い風ヨーソロ!』

【出演者】
大野仁志 我妻美緒 山川竜也 八洲承子 愛海鏡馬 豆電球

【上映日時】
2023年6月24日(土)~6月30日(金) 毎日13時~・19時~
各回、出演者による舞台挨拶・トークショーあり。

【木戸銭】
大人/1,500円 中学生・高校生/1,300円 小学生/1,000円

【会場】
大心劇場
〒781-6427 高知県安芸郡安田町内京坊992-1
http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

【あらすじ】
1889年、安田村。唐浜では通りすがったお遍路の男に看取られながら、ひとりの女が息を引きとった。そして安田川のほとりでは安田村を離れていた兄弟が偶然の再会を果たしていた。その前に父の仇だと刀をかまえる女が現れた……。

時は流れて現在、安田町。かつての安田村にいた面々と同じ顔をした者たちが集ってくる。他人の空似か、あるいは前世か。交錯する過去との因縁。時を超えて、彼らを包むように風が吹く。

全編高知・安田ロケ、上映は大心劇場による地産地消映画がここに誕生!


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