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 1989年といえば、長い昭和が終わって平成となった年。その100年前が、1889年です。元号だと明治22年。大日本帝国憲法が発布された年として小学校の授業で習った人も、習ったことを忘れちゃった人も多いでしょう。今作に登場する髙松習吉(演=山川竜也)は、東京で弾圧を受け、その憲法発布の大赦で放免されて帰郷するのですが、これについては別の機会に詳しく。
『追い風ヨーソロ!』は、その明治22年の夏から幕が開きます。このとき、もう高知県は成立していましたが、安田町は、まだ安田村でした。
冒頭のシーンは唐浜。たぶん、いやきっと、海は現在と同じ姿でたたずんでいたことでしょう。

今日も唐浜に日が沈む



 そんな昔の安田村と、現在の安田町が主な舞台となっている『追い風ヨーソロ!』。
映像作品では一般的に、過去のシーンはモノクロだったりセピアだったりと、映像に色の加工が施されて、現在のシーンと簡単に見分けがつくように演出されることが多いと思います。でも、今作は総天然色。これも映像作品は白黒が一般的だった古い時代の古い言葉ですけど、もっと簡単にいってしまえば、今作では過去のシーンもカラーってことです。
過去と現在のシーンが混在している映画なので、わかりにくい部分はあるとは思うのですが、だってもったいないじゃないですか。もちろん、時は流れて、先人たちの力で安田町にも現代の建造物はたくさんあるのですが、ちょっと頑張れば、そこかしこに当時と同じであろう風景を撮影することができる安田町。1889年の人たちが実際に見ていた景色がモノクロだったりセピア色だったりするはずもなく、その当時の人たちとまったく同じ色で、お客さまにも観てほしいじゃないですか。

安田川のほとりも過去シーンのロケ地


 
 でも、過去のシーンには、『追い風ヨーソロ!』ならではの演出が施されています。お客さまは、いきなり冒頭から「事故か?」「トラブルか?」と思われるかもしれませんが、事故ではありません。演出です。わざとです。どんな1889年になっているかは、是非とも大心劇場で、目と耳で確かめてほしいと思います。なんかおおげさに書いちゃいましたが、それほどびっくりするようなこともなく、開始から数分でスッと腑に落ちるはずです。
 
 そして、その1889年の安田村には、歴史上の人物たちも登場します。冒頭で髙松習吉の名前を挙げましたが、彼も歴史に名を残している人物。ただ、習吉だけではなく、今作1889年の登場人物たちは、学校の教科書には載っていないと思いますし、歴史小説や時代劇に出てくることも少ない、超絶マニアックな存在です。劇中にも彼らについて長々と説明するシーンはありません(わざとです)。
ということで、そのうち彼らひとりひとりにスポットを当てて、詳しく、しつこく、紹介していってみようと思っています。
 
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『追い風ヨーソロ!』

【出演者】
大野仁志 我妻美緒 山川竜也 八洲承子 愛海鏡馬 豆電球

【上映日時】
2023年6月24日(土)~6月30日(金) 毎日13時~・19時~
各回、出演者による舞台挨拶・トークショーあり。

【木戸銭】
大人/1,500円 中学生・高校生/1,300円 小学生/1,000円

【会場】
大心劇場
〒781-6427 高知県安芸郡安田町内京坊992-1
http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

【あらすじ】
1889年、安田村。唐浜では通りすがったお遍路の男に看取られながら、ひとりの女が息を引きとった。そして安田川のほとりでは安田村を離れていた兄弟が偶然の再会を果たしていた。その前に父の仇だと刀をかまえる女が現れた……。

時は流れて現在、安田町。かつての安田村にいた面々と同じ顔をした者たちが集ってくる。他人の空似か、あるいは前世か。交錯する過去との因縁。時を超えて、彼らを包むように風が吹く。

全編高知・安田ロケ、上映は大心劇場による地産地消映画がここに誕生!


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