2024年10月の読書日記
2024年10月
こんにちは、入江悠です。
今月は新作『室町無頼』の仕上げ作業が佳境で、スタジオへの行き帰りの道中しか読書する時間が作れませんでした。
とはいえ、小津安二郎監督について調べ直したり、小津のサイレント時代の映画を観たりと、充実した10月でした。
月末からは東京国際映画祭での【入江悠監督特集】も始まります。
ぜひ映画を観にお越しください。
わたしはすべての上映後に舞台挨拶させていただきます。
1、「他なる映画と1」
(濱口竜介 著)
わたしと同世代の映画監督にして、世界的にも評価されている濱口竜介さん。
この本は濱口さんがさまざまな場所で講座・講義をした映画論がもとになっています。
濱口さんがどんな映画を観て、何を思考/試行し、これからどこへ向かおうとしているのか。
ここまで赤裸々に手の内を明かしていることに驚くとともに、現役の映画監督が記した演出論としても極めて優れた1冊だと思います。
小津安二郎、溝口健二、ハワード・ホークス、エドワード・ヤン、ジョン・カサヴェテス、黒沢清。
映画史に名を残す監督たちの一流の演出術を、現役の監督が分析する。
これだけでも貴重で、よくぞ出版してくれた! と感動しました。
2、「監督 小津安二郎 【増補決定版】」
(蓮實重彦 著)
もはや紹介不要の、映画評論の名著中の名著。
小津安二郎の映画を語るならばこれは外せない。
ひさしぶりに再読したら、「あれ、こんなこと書いてあったっけ?」と驚きました(自分の忘却ぶりに)。
「室内と室外を移動する食事」など豊かな細部に目を向けると、小津映画の世界は無限に広がっていく。
3、「僕はトウフ屋だからトウフしか作らない」
(小津安二郎 著)
小津安二郎監督のインタビューや日記、戦地からの手紙などを編纂したエッセイ集。
読みやすくまとめられていて、小津の手になる文章を読むには最適の1冊。
小津安二郎という監督が、どんな視点でものを見て、どんな言葉を好んでいたのかを知るだけでもありがたい本でした。
このシリーズでもっといろんな映画監督の本を出してください。
4、「野生のしっそうーー障害、兄、そして人類学とともに」
(猪瀬浩平 著)
あるベテラン新聞記者さんからオススメされました。
「今年は、『あんのこと』とこの本がささりました」と。
読んでみたら、すごい本でした。
なにより、この本の書き手である猪瀬浩平さんと、そのお兄さん、そしてご家族がすごい。
「しっそう」は、「疾走」と「失踪」。
コロナ禍での、兄の「しっそう」と併走した著者のまなざし、そして体温。
今年読んでもっとも感銘を受けた一冊になりました。
というわけで、2024年10月に読んだ本でした。
・・・・・・
11月にはやっと新作映画『室町無頼』も完成します。
予告編と本ビジュアルもできあがりました。
2025年1月、劇場公開。
ぜひ広めていただけると嬉しいです。
映画本編はこの予告編の1000倍くらいすごいことになっています。
室町時代や当時の生活についての勉強も大変でした。
この映画を作るにあたって読んだ日本中世史関連の本も、どこかのタイミングでまとめておきたいところです。
それでは(もしお越しいただける方は)、東京国際映画祭でお会いしましょう!