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◯新作編 『異端の鳥』

原題:『The Painted Bird』
監督:ヴァーツラフ・マルホウル / 2019年製作 / チェコ・スロバキア・ウクライナ合作

本作、ベネチア映画祭にて途中退場者続出(日本語版予告編ナレーションより)だったそうです。

実際大袈裟でなく、「真正面から」観ちゃイカンやつです。
頭の片隅でバカな事(タモリ倶楽部の空耳アワーの事とか)を考えながら斜め観するのが心の健康を保つ秘訣です。


よい大人は真似しないで下さい。

少年役が天才。日本では多方面で絶対に撮れない映画です。

勇ましくドンパチやってるのがいわゆる戦争のイメージですが、それは言うなれば「大きな」戦争。
そこから連鎖的に、「小さな」戦争が渦を巻く。

人は何故、異質な者を排除するのか。生物としての本能なのか。鳥と同じか。万物の霊長ならば、本能に抗えるはずではないのか(これは独り言です)。

今年はもう一本これと似たテーマで、テレンス・マリック『名もなき生涯』もかなりキツかったですが(傑作ですよ勿論)。

今作も「かなり」でした。
目玉のシーンなど、モノクロなのがせめてもの救い。ちゅ〜る食ってるようなノリの猫がちょっと笑えますが。

目には目を、歯には歯をの、負のスパイラル。やさしい大人はすぐに死に、やさしくない大人ばかりが蔓延る。
やさしくない大人に虐待され続けた少年は、流離するうちに何もかも置き去りにし、少年もまた人を傷つけ始める。

少年にはどんな言葉も届かなくなってしまった。

ただ唯一、えぐられた傷は、同じような傷によってのみ救われる。
傷を負った者同士にしか理解できない視点がある。
この映画はかろうじて、その片鱗を我々に垣間見せてくれます。

戦後75年。
「ヒトラーさんは実はいい人だった」なんて投稿に1万いいねが付く21世紀。
いま必要な映画です。


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