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◯新作編 『タイトル、拒絶』

監督:山田佳奈 / 2019年製作
@新宿シネマカリテ


「男は、女は、あいつは、俺は、所詮こんなもんだから」

デリヘルを舞台に、他人様への「タイトル付け」に中指を立てる。そんな映画です。

環境音が効いてます。

テナントが駅に近いのか、ときおり聴こえてくる「新宿・池袋方面行きが参ります…」のアナウンス。
ゴミ箱みたいな毎日が、山手線のようにグルグルと回り続けるというメタファー。

あるいは、店の売り上げNo.1のウサギちゃんが観ているテレビの音。
「television」とはよく言ったもので、それはそのまま世界の写し鏡としてそこにある。

偉そうなハラスメントの声。
消費される制服の女の子。
時には単純にイラつく雑音。

ウサギちゃんはそれを観ながらずっと笑っているのだけれど、実は笑っていなくて。
タヌキもヘラヘラと薄ら笑っているけれども、同じくで。

彼女たちの表情を眺めるうち、首筋の肉を抉られるような気分になってくる。
皆、外野から与えられた「タイトル」の演目を必死に演じて、自分を切り売りして、その分だけ傷ついている。
他人が傷つくのを見ると、こっちも痛い。

唯一好青年だと、タヌキが心を寄せていたスタッフの兄ちゃんですら、やっぱり「タイトル」を付けてくる。
裏切られたと思うと同時に、こちらも向こうに勝手に「タイトル」を付けていたのだと気づく。
タヌキでもウサギでもなかった。みんな、同じ穴の貉じゃないか!と、タヌキちゃんは気づいてしまった。

それが悔しくて、タヌキは泣く。
ウサギも叫ぶ。

そして先回りに冒頭で、タヌキは観客に問いかけるのだ。
「私の(=あなたたちの)人生に、タイトルなんて必要なんでしょうか」

とどのつまり、他人や他人の人生に価値付けるのも大概にしいや。自分も相手も辛いだけだから。
…というお話です。


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