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映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争〈リトル・スター・ウォーズ〉2021

監督: 山口晋/2022年

武田鉄矢の「少年期」がない『のび太の宇宙小戦争』なんてあり得るのか…と思っていましたが、まったく杞憂でした。いいリメイクでした。

本来は昨年の今頃公開される筈だった作品で、コロナの影響にて公開延期。故にタイトルも2021。

これ、ひょっとすると延期した後も若干手を入れているんじゃないでしょうか。プロローグの演出などには、「おかえり!ドラえもん」といった風情をありありと見出せます。

独裁者ギルモアに支配されたピリカ星。横暴に抵抗せんとする地下組織自由同盟に、ドラえもんたち第三勢力が加勢するという、子ども向けながら確固たる政治性を帯びたプロット。
殊に10歳で大統領となった少年パピの、大統領としての政治的責任を果たさんとする一面と、まだ幼い少年としての一面と、両方が旧作に比べ協調されており、現代劇だなあと。


近年のドラえもん映画は大山のぶ代の時代の、カラッとしたトンマナに比べ、何だか湿っぽい感じが鼻についたのですが、今回はそういう要素も残しつつ、いい感じにさくさく進んでいきます。
「ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので」と、孤独のグルメならぬ孤独のドラえもんしてました。

そして全くの偶然ではあるのですが、ウクライナ情勢と内容的にシンクロします(ウクライナ侵攻というよりロシア国内の抑圧政治の方かもしれませんが)。

そもそも『のび太の宇宙小戦争』の底本は明らかにジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』であり(ビッグブラザー≒ギルモア/テレスクリーン≒肖像画の監視装置)、
小説執筆の背景には間違いなく40年代のナチズム、ファシズムといった全体主義的な支配体制の台頭があったわけで。

それから70年以上を経て同じことを繰り返している……と考えると、このシンクロは何か因果なものを感じさせます。

旧作の方もAmazonに戻ってきましたし(しかもリマスター版!)、これは観なくちゃです。

□ 1985年版予告篇 


□ 一九八四年 新訳版 (ハヤカワepi文庫)


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