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【レポート #24】富山県・高岡市長選挙レポート(2021 7.4)


 4月の富山市長選富山市議選に続く富山県の選挙取材です。 相変わらず家から4時間以上かかって遠いのですが昨年の富山知事選に続く保守分裂選挙という情勢を聞いて、これは見ておかなければと取材に向かった次第です。
 財源不足が続く高岡市で三期12年務めた市長が退任し新人3名で争われた選挙戦を、レポートします。 テーマは「熱量」です。

 

◆概要

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(高岡市役所)

・面積:209.57㎢(富山県 第8位) 氷見市、小矢部市、砺波市、射水市と石川県の津幡町、宝達志水町と接する

・市の中心部および北部から東部は射水平野の一部で西部から南部は砺波平野の一部になる

・人口:168,094人(富山県 第2位)※2021年5月末現在 富山県第2の都市で県西部(呉西)の中心都市である

・加賀藩主前田利長が築いた高岡城の城下町として発展し、高岡城の廃城後は商工業都市として発展し、伝統工芸の高岡銅器に代表される鋳物の生産が盛んである

・気候は日本海側気候で、豪雪地帯に指定されている

・2005年11月1日に福岡町を吸収合併する

・2017年、これから先も今まで通りの予算編成を行うと40億円以上の財源不足が生じることが判明。 公共事業や補助金の廃止、抑制を打ち出すとともに2018年度から5年間を期間とする「財政健全化緊急プログラム」を策定した

・高岡駅から駅北部を通って東隣の射水市まで、路面電車「万葉線」が走る

・旧福岡町にある「ミュゼふくおかカメラ館」は約4000点ものカメラ資料が収蔵されておりカメラ好きにはオススメのスポットです

・衆議院は富山3区に属し、橘慶一郎(自民 4期)氏を選出。 彼は前高岡市長でもあります(1期目途中で衆院議員に転身)


◆立候補者

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角田 悠紀 (38) 新 市会議員 ※富山維新の会 支援
米谷 和也 (63) 新 市教育長 ※自民党 推薦
出町 譲  (56) 新 経済ジャーナリスト

角田 悠紀(かくだ ゆうき)候補

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 角田候補は立命館大学卒業後、富山テレビに入社し記者として勤務。 2017年に高岡市議選に立候補し初当選。 1期務め今回市長選に挑みます。 角田候補と共に市議会最大会派「自民党議員会」から離脱した6名の市議が推すほか、4月の富山市長選に立候補した吉田豊史氏が代表を務める富山維新の会から支援を受けています。

米谷 和也(こめたに かずや)候補

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 米谷候補は明治大学卒業後、教員として小、中、高校で教壇に立ち、高校の校長先生まで務めて2017年に高岡市教育委員会の教育長に就任しました。 今年3月に出馬表明し自民党高岡市連の候補者公募に応募、自民党推薦を勝ち取りました。

出町 譲(でまち ゆずる)候補

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 出町候補は早稲田大学卒業後、時事通信に入社しニューヨーク特派員を経て2001年にテレビ朝日に入社。 東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始し著書も多数あります。 昨年末に今回の出馬にあたりテレビ朝日を退社。「脱しがらみ、脱なれあい」を掲げて生まれ育った高岡市に戻り、市長選に挑みます。


◆POINT① 三期12年務めた現職市長が退任

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 2009年に初当選し3期12年市長を務めた高橋正樹氏(67)が今季限りで退任することになりました。 強力なリーダーシップ(「権力」ともいう)と支持母体を持っているようで、

前 回(2017年)の市長選:無投票当選
前々回(2013年)の市長選:無投票当選

 と2期連続で無投票当選となり、今回の選挙は実に12年ぶりとなります。 ただ任期12年中で高岡市が発展できたかといえば、さにあらず。「概要」に書いたように2017年11月に「次年度以降に40億円の財源不足が生じる」と表明しています。 前回の市長選が同年7月、前回の市議選が同年10月なので自らの政治基盤を確保してから発表したと捉えられても仕方ありません。

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 こちらはJR新高岡駅。 北陸新幹線開業に合わせて2015年に開業しましたが駅設置と周辺の整備を集中的に進めた結果、市内の公共施設再編などの見直しが後回しになったと言われています。

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 ただ、駅前ホテルは東横インひとつだけだし、大型のイオンモールが出来て週末は3,600台収容の駐車場が満車になる賑わいだそうですが、それ以外のめぼしい施設は公園ぐらいのもので駅を利用を促す目的の開発・整備が出来たとは言い難いなぁと感じます。

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 一方、新高岡駅と在来線(城端線)ひと駅で繋がる高岡駅。 駅周辺のホテルも多く(写真は南口ですが)北口にはアーケード付の商店街が広がっていますが、いくら新幹線駅とひと駅としても新幹線が直接乗り入れなければ駅前周辺の発展は望めません。 そのせいか(写真を取り損ねましたが)商店街は “シャッター街” と言われても仕方ない状況でした。 直結しなかった原因として高岡駅には新幹線用の駅舎を新設するスペースが無かった、新高岡駅設置で新たな商業地を開発したかった、など諸説あるようですが結局は新高岡駅周辺の開発も高岡駅前の再開発も中途半端になってしまっているなぁという印象です。
 もっとも高橋市長は2017年から5年計画で40億円もの財源不足を解消するための「財政健全化緊急プログラム」を策定し4年目の現時点で35億円は解消できて残りは5億円となっており、そこの手腕は評価できる点と言えます。
 というわけで高岡市民はどこの選挙でも聞かれる「財政健全化」というワードに対し敏感な人が多く、財源不足に陥り公共事業が疎かになった責任を問うか、それとも財源不足解消寸前までたどり着いた現市政の継承を求めるか、が投票行動に大きく影響しそうです。

◆POINT② 富山市長選に続いて候補者を公募した自民党

 昨年の富山県知事選において分裂し県連が推した現職が富山維新の会に支援された新人に敗れた苦い経験がトラウマとなっている富山自民党。 この失敗を踏まえて4月に行われた富山市長選挙では候補者を決めるにあたり党内で公募して予備選を実施して候補者を決定。 更に予備選で落選した方には「無所属で出馬しない」旨の念書まで取るなど候補者一本化に徹底的に拘った結果、富山自民党が推す藤井候補が圧勝しました。

富山市長選挙(2021 4.18)
[当]藤井 裕久  新 85,755票 自民公認、公明、立憲、民民推薦

[落]吉田 豊史  新 54,028票 維新公認
[落]高野 善久  新   9,946票 共産推薦
[落]島 隆之   新   9,906票

 今回の高岡市長選でも富山市長選と同様のやり方で候補者を公募し公開討論会を実施。 その結果自民推薦を勝ち取ったのが米谷候補です。 が、

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 公開討論会に出たのは米谷候補以外は角田氏出町氏、つまり今回の市長選に出馬した全員が一度自民党の推薦を求めているのです。 ただ富山市長選と違って選ばれなかった方に念書を書かせなかったのがいけなかったか、他の2名は自民推薦が得られなくても出馬をしたため3名による選挙戦になりました。 この構図が「保守分裂選挙」と言われる理由です。
 とはいえ自民党高岡市連は、市長選本選と同じ顔ぶれの3名から “勝てる候補” を選べば良いダケの話で、どう考えたって「負けるワケがない闘い」の、、、ハズでしたが、、、

◆POINT③ 野党支持者の投票先は・・・

 今回の市長選、共産党は候補者を擁立予定でしたが直前で断念したため自民党系の候補者のみとなりました。 “日本一の保守王国” と言われる富山県だけに野党支持者は少ないのですが、その投票先がどちらになるかも勝敗に影響しそうです。 新聞によると連合高岡や立憲民主党富山県連は「自主投票」の方針を決めていますが同副代表で高岡市選出の井加田まり県議は個人的に米谷候補支持を表明しています。 ただ、所属議員が支持する候補と支持者が投票の投票先が異なるのが、いつもの “立憲しぐさ”

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 4月の富山市長選挙の出口調査によると立憲県連が自民と相乗りで藤井候補に推薦を出したのに対し支持者は野党共闘を組む共産党推薦の高野候補ではなく富山維新の会代表の吉田候補に多くの票が流れています。 また共産支持者は党が高野候補を推薦していながら、支持者は負け戦には乗りたくなかったのか高野候補に多数の票は集まらず、富山維新の会代表の吉田候補に3割の票が流れているのが分かります。 このように野党支持者の投票行動も注目なのです。

「保守分裂選挙」というコトで一見すると3名とも大差が無いように見えるかもしれませんが実際に取材すると支持者の熱量に決定的な差が有りました。 最近の選挙戦のトレンドとなっている “二連幟” についても触れていますので、もし宜しければ続きを御購読いただければ幸いです。

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