【レポート #9】岐阜県知事選挙レポート(2021 1.24)
選挙取材を始めて初の県知事選挙取材。 選挙戦終盤にでも取材に行こうかと悠長に構えていたところ岐阜県が1月9日に独自の緊急事態宣言を発令するというニュースが9日の寝起きに飛び込んできてパニック!
発令されたら候補者の選挙活動も制限されるだろうし、何より本職として選挙ウォッチャーをやっていないので “趣味” といわれても仕方が無い私の立場では緊急事態宣言が発令された地域に入るコトは本職の影響が出るため、出来ません。 なので9日に取材しないとマズいと気づいて、下調べも無いまま慌てて家を出て、取材では滅多に使わない(経費がかかるため使用を控えている)高速道路を走って現地入りしました。 経費がハネ上がった取材となってしまいましたが、それを補って余りある取材が出来たと自負しております。
保守王国の岐阜には珍しく55年ぶりの「保守分裂選挙」となった今回。 “選挙活動をしない” という “最強の選挙活動” をする現職に対して、官僚を辞して岐阜県に帰ってきた新人候補は、いったい何者なのか? 各候補のコロナに対する取り組み方も合わせて、レポートします。
◆概要
(写真:美濃市「うだつが上がる町並み」の「うだつ」)
・面積:10,621.17㎢(都道府県 第7位)県内の地域は県庁所在地の岐阜市を中心とし利便性の高い岐阜地域、その西側に位置し大垣市を中心にIT関連産業が盛んな西濃地域、県の中央に位置し美濃市や郡上市がある有る中濃地域、東部の中津川市や土岐市がある東濃地域、下呂市・高山市・飛騨市があり大部分が標高3,000m級の飛騨山脈をはじめとする山岳地帯で自然豊かな飛騨地域の5つに分けられる
・人口:1,974,142人(都道府県 第17位)※2020年10月現在
・平野や盆地の地区は最高気温が高いことで有名。美濃や金山(41.0℃ 歴代3位)や多治見(40.9℃ 歴代6位)などがランキング常連として名前が挙がる。
・県庁所在地の岐阜市は中核市に指定されている
・高山市は国内市町村で面積第一位(2,177.67㎢、東京都とほぼ同じ面積)
・選出国会議員は下記の通り(敬称略)
岐阜1区(岐阜市の大部分)野田聖子(自民 9期)
岐阜2区(大垣市などの西濃地区)棚橋泰文(自民 8期)
岐阜3区(岐阜地方と一部の中濃地方)武藤容治(自民 4期)
岐阜4区(大部分の中濃地方と飛騨地方)金子俊平(自民 1期)
※同区では今井雅人(立憲 4期)が比例復活
岐阜5区(東濃地方)古屋圭司(自民 10期)
参議院岐阜選挙区:渡辺猛之(自民 2期) 大野泰正(自民 2期)
◆立候補者
江崎 禎英 (56) 新 岐阜大学学長特別参与客員教授
稲垣 豊子 (69) 新 新日本婦人の会県本部会長(共産党推薦)
新田 雄司 (36) 新 薬剤師
古田 肇 (73) 現 5期目を目指す
・江崎 禎英(えさき よしひで)候補
江崎禎英候補は山県市(旧美山町)出身。 東京大学教養学部教養学科卒業後通産省に入省、岐阜県庁に出向した4年間を挟んで経産省や内閣府(生物化学産業課長 等)で役職を歴任。 昨年11月に退職し今回の選挙に向けて準備を進めてきました。「LIFE SHIFT」を旗印に初当選を狙います。
・稲垣 豊子(いながき とよこ)候補
稲垣豊子候補は岐阜市在住。 岐阜大学を卒業後、2011年まで小中学校の教師を務め、岐阜県教職員組合執行委員などを歴任。 現在は新日本婦人の会県本部会長を務めています。 「だれ一人とりのこさない」県政を目指して知事の座を狙います。 なお、日本共産党が推薦を出しています。
・新田 雄司(にった ゆうじ)候補
(※ポスターの写真が見つからず、本人のTwitterからお借りしています)
新田雄司候補は多治見市出身。 岐阜薬科大学卒業後、昨年3月まで県職員を務め環境問題等を担当。 退職後はドラッグストアで薬剤師として働いています。 県職員として現場を見てきた経験を活かし「住みよいまち岐阜」を目指して立候補を決意しました。
・古田 肇(ふるた はじめ)候補
古田肇候補は岐阜市出身。 東京大学卒業後、通産省に入省。 羽田内閣や村山内閣で首相秘書官を務めました。 外務省出向を経て2005年、知事選挙に初当選し4期16年務めています。 これまでの実績を掲げコロナ禍における県政の継続を訴え、今回5期目を狙います。
◆前回(2017年)の選挙結果
前回の知事選は「多党相乗りの現職vs共産の新人」という、やる前から結果が見えているような選挙で当然現職が4選を飾りました。
それにしても投票率が33%は、低いなぁ・・・
◆POINT 55年ぶりの保守分裂選挙
概要に書いた「現職国会議員の顔ぶれ」で分かる通り岐阜県は自民王国なのですが、今回、実に55年ぶりとなる保守分裂選挙となってしまいました。
(※朝日新聞DIGITALよりお借りしています)
対立しているのは野田聖子自民岐阜県連会長と岐阜県議を13期も務めている “岐阜のドン” 猫田孝県会議員(自民・県政自由クラブ)です。両者は元々仲が良く、かつて野田氏が郵政民営化法案に反対したため党の公認が得られず、加えて小泉純一郎総裁(当時)の刺客として送りこまれた佐藤ゆかり氏と無所属として闘うことになった2005年の総選挙において自民県連の中心として野田氏を支えて当選に導いた過去が有り、野田氏は「父のように」猫田氏を慕っていたといいます。
ところが今回、猫田氏が古田候補の多選を批判し江崎候補を担ぎ出したことに野田氏が「多選批判に加えて(古田候補が)言うことを聞かないという理由で替えようとした。昭和の長老政治だ」と猫田氏を批判。 猫田氏も「培ってきた友情が吹っ飛ぶ」と反論し県議を今季限りで引退するという形で退路を断ち、大野泰正参院議員も加わって江崎候補と共に闘うことになりました(以上、読売新聞を中心に引用)。
ただ、そもそも2005年に外務省経済協力局長だった古田氏を知事選に担ぎ出したのは他でもない猫田氏であり、じゃあ何故今回猫田氏は反古田派になったかというと、多選を重ねるうちに古田知事の「トップダウン」な手腕が目立つようになり、猫田氏は「この16年間、古田氏から誘われた会食は一度もなかった」とこぼすようになったようです。
というコトで、多選批判もありますがどうやら古田知事と猫田氏を始めとする県連は充分なコミュニケーションがとれなくなったようでして、それが55年ぶりの保守分裂選挙を招いてしまった模様です。
(何とも小さい理由ですなぁ・・・)
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