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第2回「ドラムメーカーのカタログ」

 みなさんこんにちは。山の会です。
 前回は「楽器屋」をテーマとした対談でしたが、2回目のテーマは「カタログ」です。
 楽器屋には楽器とスタッフの他にもう一つ、情報の宝庫とも言える物があります。それは、メーカー各社が作成した「カタログ」です。
 ぼくは楽器に興味を持ち始めた頃、すぐに楽器屋さんで貰えるカタログの存在を知って、そこから沢山の事を学びました。お二方はカタログ見ますか?(山本)
 最近はお店で貰ってくる事は減りましたが、子供の頃は破れてボロボロになるまで眺めているようなカタログ小僧でした。
 今でもちょっと調べ物するような時にはチェックしますよ。(横山)
 カタログだなんて、こりゃ危険なテーマですね。カタログどんだけ眺めてどんだけ涎を垂らしたかと。ドラムセットかっこいいなぁ〜と憧れとして見る部分と、ドラムの構造やパーツの仕組み、セッティングやハードウェアとか、型番ですら勉強になりましたねぇ。(山村)
 マニアックな方向に行き過ぎないように気をつけましょう(笑)
 やはり実物を見て触って聴くのが一番ですが、その楽器の何に着目すれば良いのか?という点がわかりやすくなるのが良いですね。偶然の出会いっていうのも重要なファクターですが、下調べも大切。(山本)
 自分がドラム初めた頃は、ネットや動画はもちろん、ドラマガみたいな雑誌や教則ビデオもなかった頃で、「ドラムセットだけ」をしっかり眺められるものとしても、カタログは貴重だったし、ありがたかったですね。山本君は、実際どんなことに着目してカタログを見てるの?(山村)
 最近は実物を先に見る事が多いので、音の印象や構造から意図を想像して、カタログでその答え合わせをする感じですね。(山本)
 なるほど、答え合わせですか。
 僕がカタログ小僧だった頃は実物を見たり触ったりできる機会が少なかったので、とりあえず写真を眺めて、かっこいいな、どんな音するんだろう、と、ひたすら想像を膨らませる感じでした。
 で、値段表を見て、うわっ、高い...みたいな。(横山)

 最初は本当それでしたねぇ。ノートに欲しいセッティング書いて、いくらになるかなーと計算して、ローン組むつもりで24とか36で割ってみたり(男の60回!なんて言葉もありましたねぇ)...。 情報の宝庫っていう意味でいえば、最近の学生とかはあんまりカタログ見ていない人も多くて。疑問の多くはカタログ見てればわかるのになぁと思うことは多いね。シェルとかフープとかラグとか、そういう言葉もまずはカタログから覚えましたよね。(山村)
 こんなドラムセット欲しい...と、よくお絵描きしてましたよ(笑)
 うーん、最近はちょっとした事でも自分で調べない人が増えてしまっているのでしょうか...(横山)
 元々そんなに多くなくて、疑問を疑問のままで終わらせない人が残るのかなあ、とか。
 改めて見てみると、少し前のカタログには書いてあったのに、今のそれには見当たらない事もありますね。
 例えば、YAMAHAのバスドラムレッグって実はすごいんですが、レッグに関して詳しく書いてるのはSTAR Drumsで大幅にリニューアルしたTAMAくらいで。(山本)
 パーツに関しては特に大きな変更が無ければあまり詳しくは載せないのかもしれませんな。
 今は各社共シェルの材やらエッジやら、色々とスペックを詳しく説明しているけど、昔のカタログにはそんな情報ほとんど載っていなかったり...ただ「ウッド or メタル」みたいな(笑)(横山)
 そうか、トレンドみたいな物もみえてきますね。古いアメリカのメーカーのカタログは顕著で、その自体の音楽の流行とリンクしてる。80年代あたりから急にヘヴィな仕様が増えたり。(山本)
 あー、80年前後は今見るとある意味面白いかも。
 ヘヴィなハードウェアが登場してきた途端にハードウェア革命みたいになって、ベースドラムの上に3列、計6個のタムが乗っていたりとか。ほら、こんなに無茶なセッティングもできますよ!みたいな(笑)(横山)
 いろんな年代のカタログを見ることができれば、ドラムセットの歴史も俯瞰して見れるよね。各メーカー、昔の物から今の物まで見れるようになると面白いなぁ。(山村)
 ある意味、カタログって説明書みたいなところありますよね。どんな楽器なのかが書かれてたり。持ってる楽器を理解する助けになる。何故この音がするのだろう?ああ、エッジが独特なのか。とか。(山本)
 メーカーの意図、推したいポイントが分かるとより理解が深まりますね。それが山本君が最初に言ってた答え合わせ的な所か。(横山)
 そうです。で、書かれてない事とかを楽器屋さんに教えてもらったり。例えばSONORのシェルは他社より小さいってのは言われてから気づきました。10年近く前の話ですが。(山本)
 なるほど。カタログに載せる程ではない細かい仕様変更とかも有ったりするし、その辺りもこっそり教えてもらったり...(横山)

 ところで話が前後しますが、先程トレンドという言葉が出たところで。各社のカタログから読み取れる近年のトレンドというのは何かありますか?(横山)
 コンポジットシェルですね。複合材シェル。(山本)
 各社出してますな。ここ10年ぐらいの流行りかな?
 あと、材自体も色々と試してる感じ?カポールとかブビンガとか、所謂昔からの定番ではない物も増えてきましたね。
 パーツ、ハードウェアに関してはどうでしょう?(横山)
 特許の都合だとかもあって、各社の動向がまちまちではあるのですが、フープのバリエーションが広がった事や、テンションボルト周りの差別化が少し目立つかな、というところでしょうか。
 キックペダルにアンダープレートがついたときや、所謂RIMSが発明された時の様な感じまでは行かないかもですが。リアルタイムじゃないので温度感はわかりません(笑)(山本)
 なるほど。フープやちょっとしたパーツ類のバリエーションが広がったおかげで、自分でカスタムする楽しみが増えたかもしれませんね。
 ハードウェアに関しては機構的に新しいわけではないけど、フラットベースやライトウェイトの物が充実してる。
 タイコに関してはしっかりしたシェルにゴツめのパーツを合わせた物と薄めのシェルのモダンヴィンテージ的な方向の物と二極化してるようにも感じるけど...(横山)
 どちらかというと、メーカー側が高級機種にヘヴィなパーツを採用する、という段階から次に進んでるのかも。
 GretschのUSA CustomとBroadkaster、PearlのReferenceとReference PUREみたいに同クラスで幅を持たせたり。SONORのVintage Seriesや、TAMAのSTAR Drumsは薄いシェルに重たいパーツを載せてるし、YAMAHAのPHXは重たいシェルに軽くて硬いパーツを載せてるし。
 確かに、フラットベースは増えましたね!TAMAのSTAR Hardwareや、Roadproみたいに重たいものも進化してますが。そういう意味で、楽器自体も音楽とともに多様化してるのか。(山本)
 山村さん、どうですか?新しいドラムは興味ない?(山本)
 いやいや興味アリアリですよ!二人の会話がハイスピードで入り込めなかった...(笑)自分の場合、試奏記事を書くこともあって、発売前に製品を叩いたりすると、その後カタログを改めて見なくなったり、まぁ大体こんな感じだろうと決めつけてしまうことがあったり、不勉強になるなと反省しとります。
 いや〜それにしても、ふたりの話はすごくよくわかりつつ、一般の人達に、カタログを見ただけで硬いパーツとかわかる人がどれくらいいるのかな...。山本君はカタログを分析読解するチカラをどうやって身につけたのかを知りたい(笑)(山村)
 パッと見の何となく...な印象で物言ってすみません。浅いっすわ、自分。色々カタログ読み直して勉強します...(笑)(横山)
 いやいや、こちらこそすいません(笑)
 分析と読解は...仮説を立てて検証する、という事の繰り返しでしょうか。さっきの流れでフープを例に挙げると、ブラスは柔らかく、相対的にスティールは硬い。ダイカストフープは剛性が高く、プレスフープはしなやか。亜鉛は重く、アルミは硬い。塗装仕上げは柔らかく、クロムメッキは非常に硬い。その他にも、同じ名称で呼ばれる材質の配合や製法、成形方法...見た目が同じであっても、製造工程の違いは大きいですね。楽器はその場に存在する全てが音に影響するといっても過言ではないと思うんです。
 関係しないとすれば...スナッピーを取り付ける紐の末端を切りっぱなしのままにするか、火であぶってほつれないように処理するか。処理するとしたとき、何回あぶって仕上げるか。くらいでしょうか。
 その中で、自分の中に基準を形成していって。たとえ違う部屋でも、違うヘッドが張ってあっても、それ以外で変化する部分に着目して音を聴いて、ああ、あの「ダークでウォームなー」というのは、この事を言っているのか、と理解すると。すいません、長々と。フープは100種類とまでいきませんが、たぶん50種類は触ってますし、2-30種類は所有した事があると思います。スナッピーも実際に50本くらいもってますし、分析に関しては一つのテーマで一つ記事が書けます(笑)(山本)
 (ちなみに、スナッピーのひもは3回あぶりが一番きれいに出来ます。詳しくは、機会があればまたいつか。)(山本)
 3回炙りwww!!! これ、カタログっていうより設計図的な領域ですな!いやーこういうこと言ってくれると爽快です。自分は、弘法筆を選ばず、アレ欲しいコレ欲しい言う前に練習しろ!スネア1台でどんな音でも出るんだ!って叩き込まれた時代だけど、今は楽器も進化しまくってるからね。車で言えば、F1みたいな性能の車だったり、ダンプやパワーショベルみたいなものが個人で買える、みたいなね。やっぱり勉強は必要。(山村)
 さ、さすが...
 実際にどれだけの量の楽器を触って試しているのか、という話にもなってしまいますが、ある程度そういう所を解析できるとカタログを読む楽しみも増えますな。
 ところで、カタログ特有のワクワク感って有りませんか?実物を触る時のワクワクとは違う種類の。僕はあの感じが好きで。
 以前、某所から75年のラディックのカタログをお借りしてきてじっくり読ませてもらったのですが、あれはカタログというよりはちょっとした読み物というか。なかなか読み応えが有りました。資料として貴重なのは勿論ですが、マーチングやオーケストラ向けの楽器も載っていたり、まだ写真よりも絵が多くて、そこがまた味わい深かったり...全体的にポップで洒落ていて、ホント眺めるだけで楽しかった。(横山)

 恐れ入ります。こんな話が出来る人が周りにいてくれて幸せです...(笑)
 そのワクワク感、わかりますよ!最近貰ってきたものだと、2016-2017年版のTAMAのカタログは凄い熱量です。整理されてて上品なんですが、気迫が伝わってきます。(山本)
 なるほど。多分後で楽器屋に行くので探してみます。TAMAは最近色々と面白い物出してるし、カタログも楽しそう!(横山)
 どうも横山君と私は、カタログに涎を垂らす方向で、山本君は設計士的に吟味してる感じが浮き彫りになってきますなぁ...(笑)ヤマハも70年代頃のカタログは、写真の選定が雑誌みたいでもあり、パーツ表や、ドラマーのプロフィールなんかも載っていて、ワクワクしましたねぇ。(山村)

 ちょっと前後しますが、さきほどのカタログに使われる表記。ダークでウォームとか。昔はシンバルもサイズとウェイトで区別するだけだったものが、ライド、クラッシュの呼称が付いたり、メローだパワーだライトだヘヴィだとイメージ的な言葉を使うようになって。素材や製法、仕上げのスペックよりも、その楽器の狙いが伝わりやすいんだけど、ある意味カタログってのはそういう、イメージで終わるか、スペックも含めて理解するかの登竜門になるのかもしれないね。
 山本君が言った、わからないままでいるか、わかるところまでいくか。これ、深いねぇ。(山村)
 あの頃のヤマハのカタログは男の子の心をくすぐる要素が満載でしたね。僕も80年頃のカタログを持っていたはずなのに...どこ行っちゃったんだろ...
 音のイメージを言葉で形容されていると分かりやすいですよね。更に分かりやすく、モデルやシリーズ毎の音の傾向や特性を図にして載せているメーカーも有りますが。カタログ熟読するだけで一般的に使われるドラム用語の勉強になりそう。(横山)

 貰ってきました!これから勉強しますよ!(横山)
 改めて文字のところ読みなおして、ドラム用語まとめてみてもいいかもですね。ダーク/ブライトとは?シェル鳴りとは?みたいな。(山本)
 (笑)またまた斬り込んできますねぇ〜。そのあたりの言葉って、都市伝説的なものとか、なんとなく慣例で使われてきたけど正確でないものとか、使い方変わってきちゃったもの、安易な広告表現とかいろいろありますなぁ。さっきの話じゃないけど、自分も書いてきた側としてはいろいろ反省もあるし...。
 ドラムの取説というタイトルで始めたからには、用語解説とかメーカー規格とか比較表とか、そういう資料的なコンテンツにも進めていけたらよいですなぁ。以前、スティックの太さと長さをメーカーを越えて比較できるサイトがあれば、ってツイッターに書いたら結構反響ありました。(山村)
 ああ、良いですね。お察しの通りそういうの割りと好きなので、やりたいです。(山本)
 僕達なりに分かりやすく整理し直してみると良いかもですね。確かに、意味が誤認されているもの、そもそも意味や意図がよく分からないものとかも沢山有りそうだし、ちょっとスッキリさせたい気が...
 でも、僕、用語とかそういうのよく知らないので教えてくださいね!先生方!よろしくお願い致します!勉強します!(笑)(横山)

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