国際関係、北風と太陽

これからの国際関係はどう持っていけば良いのか? ロシア、中国、北朝鮮などの専制主義国家との付き合いは太陽作戦(メルケル式)かそれとも北風(バイデン式)か?

メルケル前ドイツ首相―
ドイツの前首相であるメルケル氏が中国と非常に緊密な関係を維持していた。又、彼女は東ドイツ出身であり、ロシアのプーチン大統領はK G B時代に東ドイツで勤務していたことからメルケル氏はプーチン氏とも良くコミュニケーションをとっていた。しかし、後任のショルツ現首相はウクライナ戦争の中でその政策を変更し中露と距離を取ろうとしている。

バイデン大統領―
バイデン大統領は西側民主主義国家を“正義”とし、ロシア・中国などの“専制主義国家”を“悪”と見做している。世界を正義の国と悪の国に単純分類している。バイデン大統領主催で民主主義国家というのが集められ、会議が行われた。ここにはロシア・中国はもちろん、インド、シンガポールなども呼ばれなかったので物議を醸した。バイデン大統領のやり方は南北戦争の時代を思い起こさせる。

ゼレンスキー大統領―
バイデン大統領と同様にウクライナのゼレンスキー大統領も極めて好戦的である。芸人の出身であり、政治も軍事も素人である。持っているのは巧みな話術だけである。彼はロシアが実効支配している地域を取り返す(ロシアから取り返すということはロシアと戦争をするということ)ことを公約にして国民から選ばれた人だ。“吉本興業から生まれた英雄”は、これだけ国が破壊され国民が死んでも、西側の軍事援助を得てロシアを押し出す決意は変わらない。

ウクライナ戦争の今後―
英国のジョンソン首相は長期戦になった場合ロシアが勝利することも考えられると意味深長な発言をしている。この見方に私も同意する。

中露との絶縁は可能か?
さて、西側諸国はロシア・中国と全く関係を立つことができるだろうか? 現状認識をしておきたい。
1)スウェーデンの調査期間の研究によれば世界の過半数が先制主義国家であり、民主主義国家は半分に満たない。
2) エネルギー供給
E U諸国は今までロシアの天然ガスや石油に大きく依存してきた。この代替には何年もかかるだろう。
3) ヨーロッパの穀倉地帯といわれてきたウクライナで生産される小麦。西側はこの供給を置き換える方法があるか。食料価格の上昇は避けられない。
4) 中・露の軍事力が合体したら米国は軍事力において敵わない。これに北朝鮮が加われば更に軍事力は大きくなる。特に核において西側は劣る。西側はそのような力関係の中で軍事的緊張に耐えられるだろうか?
5) 技術国のドイツでさえ5G通信技術の導入では中国企業の技術力に依存してきた。中国はI T技術のレベルが急激に進歩しており、宇宙開発技術も進歩している。何よりも経済規模が米国を抜き世界一の経済大国になることが確実視されている。
5)世界の工場、中国。西側の多くの企業が中国に工場を作り、完成品を中国市場で販売すると同時に持ち帰り自国で販売あるいは輸出している。トランプ前大統領が主張したように中国の工場を閉鎖し、自国または他の西側諸国に移転するには何年もの歳月を要するだろう。
こう考えていくと中露と西側諸国を完全に分離することは現実的ではないといわざるを得ない。現在ロシアに課している経済制裁はブーメラン現象となり世界の物価高を招いていることを深刻に受け止めるべきである。米国は国が広く、石油などの天然資源や小麦もあるから影響は好きないがE U諸国やアジア諸国にとっては影響大である。

今回の戦争を多くの人はロシアの侵略戦争と見ている。真相は、プーチン・バイデン・ゼレンスキーが睨み合っている中で、ゼレンスキーがトルコ製ドローンで先制攻撃を仕掛け、バイデンの煽りに乗ってプーチンが動いた。これが構図である。

発端はロシアではなく西側にある。旧ソ連に属していた東ヨーロッパの国々が次々とN A T Oに加盟した。これはN A T Oを拡大しないという密約を破るものであり、ロシアには受け入れ難いものであった。その最後がウクライナであった。ウクライナのN A T O加盟は現状ではできない(紛争を抱えている国は加盟できない)が、バイデン大統領は加盟を歓迎する発言を繰り返していた。西側と中露の間には緩衝帯がいろいろな形で存在していたが、バイデン大統領が“正義は悪を倒す”という単純な考えから中露を刺激し続け、結果として緩衝地帯にまで踏み込んでしまった。これが今回の戦争の始まりである。

中露は中世の帝国主義復活を目標とし、米国は南北戦争時の北軍のまま。

ポストウクライナ戦争
圧倒的な経済力と軍事力を誇った西側はソ連を崩壊に導き、冷戦を終わらせた。しかし、
現代は西側が軍事的、経済的立場はむしろ逆転したと言って良い。中露、特に中国の進歩で冷戦終結時と全く異なる立場が出現している。
そんな中で中世の思想を持つプーチンが率いるロシアを追い詰めるような北風政策は危機を高めている。中露と完全な対決をするのではなく、曖昧な緩衝地帯を設けた上で経済的に協力できるところはwin・winの形を探し出すことだろう。
中国はいずれ台湾も吸収するだろう。今のままでは重要な工業は全て中国の技術、生産力が勝ることになってしまう。西側諸国はG A F Aのような一部の企業に依存するのではなく、国策として技術振興を再開し自立できる国家を目指さなければならない。韓国は財閥企業には優秀な企業があるが国として見た経済力は決して大きくない。米国のG A F Aは韓国の財閥企業のようなもの、米国の国全体の経済規模は中国の下となり、米国が韓国化して行くと考えると恐ろしくなる。

一番遅れてしまったのが日本である。国民はスポーツと芸能にうつつを抜かし、エンタメ産業だけが繁栄している。政府は日銀と共同で低金利政策を継続するだけで産業政策不在。かつての通産省(M I T I)のような動きが必要だが、官僚は政治家の使い走りになってしまい、優秀な人材は官僚を目指さなくなった。民主党政権の後遺症である。菅前総理が手をつけたのは携帯電話事業だけ。これでは日本の経済力は向上しない。

日本がロシア、中国、朝鮮という核保有国に囲まれていることを再認識すべきだ。その上で核兵器への考え方をしっかりと検討すべきであろう。これらの国が日本の原発をいくつか攻撃すれば日本は終わりである。電力停止と放射能汚染で日本中が混乱となる。このような攻撃を抑止するものを日本は持っているだろうか?日本自体は反撃能力すら持たず、米軍に反撃をお願いするしかない。しかし、米軍も相手の核攻撃能力の前では手が出せないかもしれない。現在のウクライナのように。こんなことをよくよく政府内で議論してもらいたいものだ。非核三原則などは天国で唱えるべき考えであり、これでは国は守れない。