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読書の記録(48)『キャプテンマークと銭湯と』佐藤いつ子 

手にしたきっかけ

高学年向けのスポーツに関する本を探していて見つけた。YA向けならいくつか思いついたが、5・6年生でも読めるようなほどよい分量で、使われている言葉が難しすぎないもの、となるとぴったりな本がない。スポーツの躍動感や緊迫したシーンもあってほしいし、仲間とぶつかったり協力したりしてほしいし、最終的には成長してほしい…となると、なかなかありそうでない。いろいろな言葉を入れて検索をしていて、この本にたどりついた。

心に残ったところ

先日読んだ『透明なルール』を書いた佐藤いつ子さんの作品なら期待できると思って読み始めた。『透明なルール』もそうだったが、出てくる人物の描写が巧みだ。どんな性格で、どんな悩みを持っていて、どんなことにモヤモヤしているのかが自然と読み手に伝わってくる。

周斗がキャプテンから外される場面が初めの方にある。ここを読んだときにすでに、この本いいかも!高学年にお薦めできそう!と思えた。

サッカーチームの同年代の子だけでなく、銭湯でいろいろな人と出会うのもこの本の魅力だ。学校でもサッカーチームでも家でもない場所があって、様々な年代の人と出会う。いろいろな話をする中で、周斗は自分の気持ちと向き合い、自分の気持ちを整理をする。友達ともう一度向き合っていく。

ゆるやかな繋がりというか、一昔前のご近所付き合いのような、そういう場所があるのがうらやましいとも思った。家や学校で話せないことがあっても、まるごと受け止めて「よく来たね」「またおいで」と迎えてくれるところがあるというのは、思春期でもあり、心が大きく動く周斗にとって、安心できて、ほっとできる場所だったのだろうと思う。

銭湯で出会う比呂も魅力的だ。周斗とは違う目線で俯瞰的にものごとをとらえ、アドバイスというか気づきをくれる。学校やクラブチームだけではなく、こうした人々との出会いや繫がりがこの本をより魅力的にしていると思う。

まとめ

『キャプテンマークと銭湯と』今年度読んだ児童書の中でベスト5に入るかも。『月にトンジル』佐藤まどか、『天の台所』落合由佳、を薦めたら、「おもしろかった~、他にこういう感じのやつ(自分が気に入りそうな本)ある?」と感想を伝えてくれた6年生の顔が浮かんだ。あの子なら、きっと喜んでくれそう。2学期初めの図書の授業で、「なんかおもろい本ない?」「おすすめは?」と言ってきそうな気がするので、「夏休みに読んで、これを薦めようと思ってた。」「サッカーしてるならなおのことお薦め!」とこの本を薦めたい。

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