迅のこと、知りたかった

※特撮オタクではないので、過去の他作品との比較は出来ませんし、制作陣についてもまったく知りません。ご承知おきください。

ゼロワンは、私が初めて観た仮面ライダーだった。

フォロワーに勧められて見てみたら、第1話で一気に引き込まれた。

仕事のこと、AIのこと……。これからの未来を担う子どもたちはもちろんのこと、大人にとっても有益なテーマだと思った。仮面ライダーは教育番組ではないので何かを説く必要は無いのだけれど、私はそこが気に入った。

もちろんエンタメとしてもおもしろかった。かっこいいアクション、個性豊かなキャラクター。

中でも私は、迅が好きだった。

まず、お顔が可愛い!くしゃくしゃの笑顔を見るとこっちまでニコニコしちゃう(迅が笑ってる時はたいてい嫌な展開だったが……)。子どもっぽいところも可愛い。

何より私は、保護者からの愛情をきちんと受け取ることが出来なかったキャラクターに弱い。(フィクションにおける設定の話で、現実に関しては違います。実在する他人の人生をエンタメとして消費することは良くないことですし、生育環境を理由に誰かを好きになることもありません。)

だから、第6話「アナタの声が聞きたい」はものすごく刺さった。父親から愛されて育った或人の、「愛された者の傲慢」と言っても差しつかえのないセリフはかなりえぐられた。「親が子供を守るのは当たり前だろ」なんて言われても、迅にとってはそれが当たり前じゃないんだ。なんてことを言うんだ、或人。

人気声優ヒューマギアは、娘を亡くした父親が作り出した「亡くなった娘にそっくりなヒューマギア」。これを「死者への冒涜」と言う不破さんに、なるほどと思った。確かに、人間そっくりの人工知能ロボットをカスタマイズできるようになれば、こういった事態が起きることもありえる。

これから迅はどうなるんだろう。滅からきちんと愛されるようになるのかな。滅はヒューマギアだけど、或人もヒューマギアの父親に育てられたから、不可能というわけではなさそうだ。そもそもこの2人についてもわからないことだらけだし、早く知りたい。

しかし、私の想像よりだいぶ早く、迅は退場してしまった。

迅がいなくなって、天津垓がやってきた。このあたりから、「なんかよくわかんない」状態になってきた。お仕事五番勝負?ゼロワンが描きたかった仕事ってこれ?仕事といえば、飛電インテリジェンスの社員を全然見てないな。刃さんもかわいそうだった。初期は女性ライダーとしてバリバリ戦ってたのに変身しなくなって、エイムズでは指揮官?みたいなポジションだったのにザイアに戻ってからは上司に命令されて、挙句の果てにお見合いの面倒まで見る羽目になって。(お見合い回は個人的には好きだったけど、部下が上司のお見合いに同伴するのはやっぱりかわいそう)

お気に入りの第1話や第6話は繰り返し観たけれど、迅が退場してからは1度サッと見るだけになったので、中盤の記憶はかなり曖昧になっている。やっと迅が帰ってきたと思ったら、大人になってた。意味がわからなかった。なんでだろう。時間を置いて戻ってきたキャラはビジュアル変更せざるを得ないのか。

私はふだん、好きな作品について感想を書くことをメインにしている。合わなかった作品は、作品が悪いのではなく、作品と私の相性が悪かったんだなと思ってるし、わざわざ苦手なものや嫌いなものについて言及するくらいなら好きなものについて語る方が何倍も有意義だと感じているからだ。

しかしゼロワンは、好きだったからこそ放っておけないというか……設定やキャラクターはすごく好みだったのに、話が進むにつれて「あまりにもキャラクターが蔑ろにされているな」と感じたので、セイバー開始までにこのモヤモヤを昇華させようとこのnoteを書いている。

主義はどんどんブレていく。AIとの向き合い方とは?ヒューマギアはAIというより、ただ人類と対抗する「別の民族」みたいになっていった。これからAIが進化していったら人間に近づいていくのだとは思うけれど、そこまで考えて作られたようには見えない。精神論でゴリ押しの展開が続く。

お仕事五番勝負などに時間を割き、設定だけが宙に浮いたまま。伏線のようにも思えたあれこれは回収されず、わからないことだらけ。主人公ですらよくわかっていない。特撮オタクじゃないから知識が浅い、とかじゃなくて。1年間も続く作品なら、生い立ちとか好きなものとか、自然とわかりそうだけど。

43話。迅は滅を守って、殺されてしまった。

ここで私はしんどさの極みだった。滅は何度か父親っぽいムーブメントを起こしたが、第6話で迅をあんな目にあわせたことを埋めるにはまだまだだと思っている。それなのに、迅は滅をかばった。こんなの、虐待されても親のことを好きな子どもと一緒じゃないか。つらすぎる。

しかも、あまりにも後味が悪い。或人にとっても想定外だったとはいえ、滅を自分と同じ目(自分ではなく、自分の大切なヒューマギアの破壊)にあわせた。やられたらやり返す、は某銀行員のお家芸だ。仮面ライダー、つまりヒーローがこんな……。闇堕ち自体は少年漫画っぽくて興味深かったけど、やっぱりこんなの見たくなかったよ。今までもヒューマギアと戦って破壊してたから何をいまさらって感じかもしれないけれど。

最終話で迅は復活して、ついでに滅もなぜか衣装チェンジして(和洋折衷でとてもオシャレ!)、良かったなあとは思ったけど、滅は「家族を奪った」とか何とか言って或人にブチ切れてたのに、こんなにあっさり迅に復活されると何のために大乱闘してたのかと思ってしまう。

スーツ姿になった迅が滅に「おとーさん♡」って笑いかけるのも結構キツかった。迅に非はないんだけど……初期の精神年齢ならともかく、今の迅が見た目年齢そう変わらない滅をパパ扱いしてる違和感と、そもそもこの2人の設定が全然わからないまま「親子」として丸くおさまった悲しみ……。

映画が冬に公開されるみたいだけど、どうなるのかな。

迅……幸せになってくれ……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?