深海のお話/2.デコルト・シュベールと防壁

沢山の銃声が響く、どこかの廃墟でのお話

「ひえぇ、今日もやってんなぁ...」
「そうですな〜」
「ていうかラアド先輩、あんたこんなとこ来ちゃダメですよぉ...一応リーダーなんですから。今日もロンドに行くーっつってフェト先輩に言ってたじゃないですかぁ」
「いやぁ...銃撃戦なんて久々だしぃ?あっちに貸してもらった"新作"も試したいんだよね〜」

ラアドはスコープを覗きながら、数百メートル先に居る敵を撃った。
パン、と乾いた音が鳴り、敵が倒れて消えていく。

「ところでデコルト君、君いつになったら私達の補佐になってくれるのさ〜?おっと危ない....フルリもフェトも、君の功績は充分認めてるんだよ?
あ、20メートル先の右方向から敵接近中ね、そっちのハンドガンで頼むわ」
「あいあいさー...ていうかですね、僕は補佐には絶対なりませんよ。こんな風に好き勝手撃てるのはこの役職につけたからなんですから、ねッッッッ!!!」バン
デコルトが撃った銃弾は、相手の胸を貫いた。
膝から崩れ落ちた敵は、あっという間に消えてしまった。

「ここら辺の敵は全部帰したかね〜、デコルト、前に進も」
「了解です。」
彼等はコツコツと足音をたてて歩いていく。
「にしてもまだ慣れませんよ、敵が死んだら消えて、アジトで復活するって...一体どうなってるんですか?」
「アジトっていうかぁ...なんだろ、相手の記憶なんだよね。紋章とかで強制的に記憶を植え付けて、アジトに帰らせるんだけどぉ...団体とかに入ってないとどこに飛ばされるかわかんないのよ」
「へぇ...あ、もしかしてこの腕輪とかもそういう?」
「そそ、私達のは腕輪...君のは足だけど、そこにプログラムされたアジトの記憶が死ぬ前に注入されるんだよね〜。なんかね、グワーッってくるよ、。グワーッって」
「なんですかそれ...でもちょっと怖いですね」
「まぁね〜...慣れれば大丈夫よ。」
「あ」「お?」
瞬間、デコルトの体を銃弾が貫く。
デコルトは膝から崩れ落ち________る訳ではなく、体の中に手を突っ込んで、銃弾を取り出した。

「うへぇ、びっくりしましたよ...これどこの銃弾だ?....十字架に目の紋...これ終焉教会のやつっすよ先輩」
「マジ?でもどっから...」

その時、コツコツと足音が近づいてきた。
「やぁ君達。お久しぶりだね!元気にしてたかな?」

「元気も何も死にかけたんですけど...」
「こんな廃墟で教会の方が何してるんですか...しかも教祖ご自身とは...」
「いやね、神の気配がしてね?そしたら銃声が聞こえるわ色んなやつが帰っていくわ...見るのもつまらないからそこにあった銃弾に印を撃って適当に飛ばしてみたんだよ。そしたら君の体に当たったって訳だ。」
「あぁ...神って雪原君の事ですか....なぜか終焉教会には顔を見せないって言う...」
「そうなんだよ!!!第七劇場集団とか融解の奴らには顔をおみせになったりお茶会してらっしゃるって聞くのに!!!なぜ!!!なぜ僕達には顔をお見せにならない!!?」
「あうううう、ちょっと肩揺さぶるのやめてくださいいいい...酔うってぇぇぇ」
「でもさぁ、ここに神はいないよ?いるのはあれだね、ちっこい反逆者集団。全部消しちゃったしね〜」
「...そうか...悲しいことだな...邪魔をしてすまなかったね。お詫びと言ってはなんだがこの飴玉をあげるよ、。特になんてことない普通の飴玉だけど」
「あ、どうも...あ、ぶどう味だ、やった」
「ありがとね〜」
「じゃあ私は帰ることにするよ....はぁ...いつになったら神は私達の前に現れるんだ..........」
そう言いながら彼女は帰っていってしまった。

「私達も帰ろうかね〜。デコルト、門開ける?」
「はい、ここなら十分広いんでいけるはずです。」
そう言うと、デコルトは胸ポケットから羽ペンのようなものを取り出し、地面に幾何学模様を描いた。そして何かをブツブツと呟いた。
するとどうだろう。幾何学模様が薄く光りだし、瞬く間に床には大きな丸いゲートができた。

「お見事お見事、じゃあ帰ろうかね〜」
「はい、おつかれさまでした」
2人がゲートの上に立った瞬間、ゲートは2人ごと消えてしまった。そして次の瞬間、ゲートは彼らのアジト、「深海迷宮」の入口にいた。
「よしよし、ただいまただいま〜っと」
「ただいまです、っと...。じゃあ僕は今日の報告書書きにプリズムタワーの方に行くんで、この辺で失礼しますね」
「OK〜。私もロンドへのレポート書かなきゃだ!終業時間までお互い頑張ろうね〜」
「はい、お疲れ様です」

デコルトは広報担当。しかし、戦術や潜入の腕も一級なので、こうやってたまに戦闘に駆り出されるのだ。彼は真面目に仕事に取り組み、リーダーにも功績を認められる程の人物だ。
しかし彼には、まだ捨てきれない過去がある。

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