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20230223_ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

作品概要

ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』
(原題:The Band's Visit)
原作:エラン・コリリンによる映画脚本
音楽・作詞:デヴィッド・ヤズベック
台本:イタマール・モーゼス
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
演出:森 新太郎

風間杜夫:トゥフィーク(指揮者)
濱田めぐみ:ディナ
新納慎也:カーレド(トランペット)
矢崎 広:イツィック
渡辺大輔:サミー
永田崇人:パピ
エリアンナ:イリス
青柳塁斗:ツェルゲル
中平良夫:シモン(クラリネット)
こがけん:電話男
岸 祐二:アヴラム
辰巳智秋:警備員
山﨑 薫:ジュリア
髙田実那 :アナ
友部柚里:サミーの妻
太田惠資:カマール(バイオリン)
梅津和時:警察音楽隊(マルチリード)
星 衛:警察音楽隊(チェロ)
常味裕司:警察音楽隊(ウード)
立岩潤三:警察音楽隊(ダルブッカ)
竹内大樹(スウィング)
若泉亮(スウィング)
※上記公式HPより

公演日:2023年2月7日(火)~2月23日(木祝)
シアター:日生劇場
上演時間:1時間45分(休憩なし)

あらすじ

降りるバス停を間違えた彼らは、果たして演奏会に間に合うのか!?
かつての敵国で迷子になった警察音楽隊の、とある一夜の物語。

公式HPより<https://horipro-stage.jp/stage/bandsvisit2023/#stage>

この作品を日本語&オール日本キャスト、日本人演出家で上演するということ

しょっぱなから核心ですね^^
この作品は2017年にBroadway上演された時、Bwayミュージカルファンは「あれ?Producedのクレジットにホリプロが入っているの?」とザワついたので、いつか日本でホリプロプロデュースで上演するのでしょう。
とは思っていたのですが、さすがにレプリカ(クリエイティブ陣はBway版)であろうと想像していたのに、なんと森 新太郎が新演出というのは流石に驚いた。
逆に権利の面をどうクリアしたのだろうか。
出資者であったからこそ、その点融通効いたのだろうか…とか、個人的に思っていました。

とはいえ、森演出でいうと、ホリプロプロデュースの『パレード』での初ミュージカル演出における、「とてつもねえことしてくれたな」(ほめてる)事件が、私にとっては衝撃的で、あの「日本語&オール日本人キャストでの上演はまず無理」と思われていた作品をあんな風に形した人だから…と見たい気持ちはありました。

ただ、『パレード』も『バンズ・ヴィジット』も、その国、その人種(それに関わる差別)、その宗教、その言語にかかわる部分が大きい作品
で、実は普段私は「あまり日本人キャスト・スタッフでやらない方がいいんじゃない?」と鑑賞を避ける部類の作品なので、千秋楽の今日まで観ることを悩んでいたりもしました。
(なので実は私は、日本翻訳版の『ヘアスプレー』『アリージャンス』『ドリームガールズ』はあえて観に行ってません)

じゃあ、そんな作品を実際日本人キャスト・演出で観てみてどうだったか?
私はBwayでこの作品を観ているわけではないので、比較対象できるものはないのですが、結果「観ておいてよかった」です。

本当に「なにも起こらない」ミュージカルなのか?

“Once, not long ago, a group of musicians came to Israel from Egypt. You probably didn’t hear about it. It wasn’t very important.”
この物語の最初と終わりに登場するこのセリフ。これがこの物語そのもの。
かつ、これに内包されている情報量がすごい。

・エジプトとイスラエル
これについては、劇場で配布されていた解説文章にも載っているのであえて書く必要もないけれど、もう少し複雑かなと思う。
なにせ今でも続いていることだから、でもさ「これ、みんな知っている?」と問われると、 ”You probably didn’t hear about it.”なんじゃないかと思う。
私もこの作品を通して知るぐらいで詳しくない。
この作品は、この平和条約締結直後の1980年代かなとか、エジプトの警察(国家)の音楽隊がイスラエルで演奏するという実はとてつもなく重いことなんじゃないかとか、実は非常に多くのことを含んでいるんじゃないかな?とは思う。
この点が本当に日本人演出&キャストによって、日本語で演じていいのか?となった大きな理由でもあるのだけど。

・"Waiting"と"Something Different"と"Answer Me"
上記の人種的、政治的な確執、その機微を表現しきれていたか?というとやはり難しいところはあったかもしれません。Bway版を観た方は言いたいことがたくさんあったかもしれません。
それは『パレード』でも言えました。
あと、この作品の歌い文句に「平和への祈り」とありますが、それもしっくりこない気がします。
じゃあ、この物語で伝えたかったメッセージでなにか?
私は、楽曲にある"Waiting"と"Something Different"と"Answer Me"だと感じました。
都会や世界から見放されたような砂漠にぽつりとある村で、人々が「何か」を「待っていて」、「何か」が「変わる」ような気がして、「何か」に「応答する」。
その「何か」が何なのか、一夜にほんの一瞬ともった蠟燭の明かりのようなものが彼らの日常にもたらすものは何もないかもしれない
…でも、楽隊が通り過ぎる前と後では何かが違う。
It wasn’t very important.かといわれると、確かに世間的に重要なことではないかもしれないけれども、私たち一人ひとり人間にって実はとてつもなく重要んなじゃない?とか
そんなじんわりと普遍的な気持ちがしみ込んでくるような感情後の感覚でした。

森演出への信頼感

私は森演出4作目の初心者ですが、観るたびに「ああ、この演出家は信頼できるな」という気持ちが大きくなります。
もちろん、表現しきれないじゃん!とか、やっちゃダメじゃん!とか、あることはあるけれど、着実にそれを修正してくるし、
「日本での上演は困難だ」といわれる作品にあえて身を投じて真摯に向き合い、スタッフや俳優と共にstruggleしながら同時に信頼を獲得し、恐れながら、でも恐れず作品を観客に提示してくる感じ。
かつ、語りすぎない。
ある程度の余白と遊びと、「絶対ここは伝えたい」というバランスがとてもいいし、そこに毎回驚きが隠されているところがとても好き。

森さんにはいずれ、ホリの力を借りてもいいからBroadway進出してほしいと密かに思っています。

あれやこれや語りたすぎる!

もう無理。
これ以上かけない。
あれやこれや言い出したら止まらないです。
あのシーンも、このシーンも、あのシーンの風間さんやはままりさんやにーろも、あのシーンのあの人も良かった。
あと、"Answer Me"のこがけん!ズル過ぎやろ!とか(笑)

ホリさんよ!やっぱりもう少し公演期間長くしなきゃこの作品は集客できんだろ!

結果、日生でよかったじゃん!

とかとかとか
止まらなくなるのでこの辺でやめときます。

※もっと書きたくなることが出てくると思うので、気が向いたら追記します

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