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日本酒(清酒)業界のあれこれ(7) 埼玉県の日本酒動向

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日本酒(清酒)業界のあれこれ
今回は埼玉県の日本酒動向についてまとめ(最終更新2024年7月)

日本酒(清酒)業界のあれこれ(1)にも書いたが、埼玉県は実は日本酒出荷量が全国4位の酒どころ

酒蔵数は現在32と、近年ゆっくりと減少しつつあるものの比較的多くの酒蔵が残っている。それが埼玉。

近年の埼玉県の酒蔵数変化は次の通り。

昭和時代には40蔵以上あったものの徐々に減少し、2000年に残っていたのは37蔵。
その後は、
2000年 先代の鏡山酒造が廃業(36蔵)
2004年 田中藤左衛門商店(七ツ梅)が廃業(35蔵)
2007年 鏡山酒造が経営も場所も変えて新設(36蔵)
2008年 和久井酒造(慶長)が廃業(35蔵)
2011年 越生酒造(来陽)が廃業(34蔵)

ここで、35蔵体制を維持したいがために、埼玉県内にパック酒工場があるキング醸造(本社:兵庫県)を酒造組合に招き入れる(35蔵)

そのまま数年間は35蔵体制を維持していたが、減少は止まらず
2018年 有馬錦酒造が廃業(34蔵)
2022年 武蔵鶴酒造が休業(33蔵)
2023年 関口酒造(杉戸宿)が廃業(32蔵)

2023年廃業の関口酒造(杉戸宿)は東日本大震災で被害を受けて以降、自醸せず千葉県の蔵元に醸造委託していた。つまり元々醸造していない蔵だった。

2022年にさいたま市の内木酒造(旭正宗)が自社での製造(酒造り)を終了し、今後は委託製造とすることを公表。醸造していない蔵がいつまで存続できるか。

尚、日本酒の酒蔵が廃業になってもあまりニュースにならない。

その理由として「倒産」なら告示等もされるものの「廃業」の場合、ひっそりと消えることも多いから。

廃業に至る大まかな流れとしては

1.売り上げがどんどん下がり、従業員を雇えなくなる。後継者も居なくなる。

2.生産量を引き下げる。場合によっては桶買いなどで他社の酒を買ってきて自社の酒とブレンドしたり、あるいは醸造を辞めてしまって委託醸造という形になる。

3.さらに消費が落ち込んだところで「廃業」する。借金があるわけではないので「倒産」ではない。清酒の酒造免許は貴重なので会社ごと売ってしまう方法もあるが、埼玉の場合には比較的都会であるため酒造の土地をマンションや駐車場にして会社自体は存続させるケースもある。

という流れ

「1」か遅くとも「2」の段階でその酒蔵の酒はほとんど出回らなくなるので、「終売」という感じも無くひっそり消えていく。
他社の酒を仕入れて売るようになると日本酒マニアは見向きもしなくなり、完全に忘れ去られる。

(この辺り、また別の記事にまとめるかも)


さて、独断と偏見で今も頑張る埼玉県の酒蔵をいくつかピックアップすると

小山本家酒造

間違いなく埼玉トップの酒蔵
酒造会社として全国6位の清酒生産量
四季醸造でパック酒、普通酒をガンガン生産(大手の酒蔵はほぼこのパターン)


清龍酒造

埼玉での生産量2番手の酒蔵
大手地酒蔵として古くから活躍
現在は小売りせず、直販と直営の居酒屋での提供のみ
かつては南部杜氏を招いていたが、2010年代に社員杜氏に交代し吟醸系の酒の味わいは変わりました


北西酒造

元:文楽酒造

強みとしては、居酒屋「和民」の日本酒はこの酒蔵のもの
さらに日高屋の日本酒もこの酒蔵
今、最も普及している埼玉の日本酒と言えるかもしれません。


南陽醸造(花陽浴)

埼玉で最もプレミアムのつく日本酒

全国的に見ても5本の指に入るプレミアム日本酒(偏見ですが、十四代、而今、飛露喜、花陽浴あたりがトップかなと思います。人気だけで言えば田酒や磯自慢も強いですがプレミアムの付き具合は花陽浴が上)

姉夫婦と弟の3人がメインで醸造しています

五十嵐醸造と鏡山酒造

五十嵐醸造の兄が家業を継ぎ、弟が鏡山酒造を新設しました。

鏡山酒造はとても華やかな酒であり、個人的には埼玉の酒米「さけ武蔵」を最もうまく使いこなしていると思います。
五十嵐酒造は古くからの酒蔵なので定番商品が多いですが、季節限定の酒はかなり華やかで美味しい

神亀酒造

全量純米酒製造を全国で初めて実施した蔵です
熟成酒は燗酒に最適ですが、実は新酒もうまい
しかし、こちらも2020年ごろに社長が変わり味が変わったと言われています


武蔵ワイナリー

オリジナル日本酒も販売している埼玉のワイナリー
ただ、実態としては「酒屋」です。

武蔵ワイナリーの経歴はこんな感じ
2010年 武蔵鶴酒造の蔵人になる
2011年 農家としてブドウ栽培開始(冬は蔵人、夏は農業のスタイル?)
2014年 収穫したブドウを用いて栃木県足利市のワイナリーでワイン醸造
    個人で酒販免許を取得、酒屋になる
2015年 武蔵鶴酒造の杜氏になる、武蔵ワイナリー設立
2017年 酒販免許の法人化
2019年 武蔵鶴酒造で醸造したオリジナル日本酒「饗之光(あえのひかり)」を販売開始
2022年 武蔵鶴酒造休業に伴い「饗之光」の醸造は滝澤酒造に変更

ワイナリーという名前が紛らわしいですが、酒造免許は持たず酒造の設備も持たない「酒屋」
自社のブドウを栃木のワイナリーでワイン化してもらい、それを仕入れて(買い取って)酒屋として販売
日本酒については杜氏として働く蔵で何タンクか仕込んで、それを買い取って酒屋として販売…というスタイルのようです。

あくまで酒屋なので、酒を醸造することは無く、酒を仕入れて売る立場。

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