エンドコンテンツとは何か

 運営型のオンラインゲーム、特にシングルプレイのストーリー体験型・ガチャキャラ入手型ゲームでは、長く運営できるように大量のボリュームを用意しておいてからサービス開始する。

 例えば最初に2年の開発期間をかけて100体のキャラを用意しておき、序盤で入手できるのは50体に制限、中でもレアキャラ5体はなかなか入手できないように出現率を絞る。そして月に4体のノーマルキャラと1体のレアキャラを開放していけば全キャラ開放まで10か月は持つという計算になる。レアキャラの確率を絞ればプレイヤーが入手するまでの時間はさらに伸ばせるだろう。

 もっとも実際には長く持たせるのは難しい。売上アップのために毎週イベントを開催せよといった指示が来ると、週に1体ずつレアキャラを追加することになって月に8体は解放していくから6か月で全100キャラを開放することになる。しかも熱心なプレイヤーは全力でキャラをすぐに集め終わる。その後も同じペースでキャラを登場させたければ、開発はこの6か月の間に50キャラを追加しておかねばならない。しかしもともと2年かけて100体用意したものを半年で50体追加するのは非常にきつい。どうしてもペースは落ちていき、追加はレアキャラに絞られていく。

 プレイヤーとしてはがんばって追加しまくってほしいところだが、大規模な予算の開発チームでもこれは難しい。3桁億円の売上をたたき出すようなゲームでも追加には苦労している。

https://automaton-media.com/articles/newsjp/20190425-90751/

 こうしてキャラの追加などのアップデート頻度が落ちていくと熱心なプレイヤーは遅いペースに不満を抱き、ほかの新規ゲームに移行しかねない。そこで開発者は低コストで開発できるいわゆるエンドコンテンツを用意しておくようになった。

 エンドコンテンツとはその名のとおり終盤向けのコンテンツである。ストーリーを最後まで進め、キャラも集め終わり育成も一通り済ませたプレイヤーでも遊び続けられるモードだ。リソースを集め終わったプレイヤーに向けてテクニック重視で設計される。

 エンドコンテンツにはプレイヤー同士の対戦モードを用意することが多い。最高にキャラを育ててそろえたプレイヤー同士の戦いでは勝つのは容易ではない。様々な工夫で相手の打倒を目指すことになるのでずっと遊んでもらえるという計算だ。

 さらに対戦では生きたプレイヤー自身がコンテンツの一部になる。敵キャラとなるプレイヤーは様々な個性を持ち自ら変化し成長していく。最高のコンテンツだ。ただしこれが成立するのは対戦システムがいろんな戦い方で勝利できる幅の広さと工夫のしがいがある奥深さを持ち合わせている場合に限られる。特定の強キャラと戦法で勝利が約束されるようになると、エンドコンテンツは飽きられてエンドしてしまう。囲碁や将棋は果てしなくプレイを極めていけるシステムを実現しているが、なかなかそこまでの完成度は実現できない。現実的にはシステムを様々に改変し続けて飽きを防止していくことになる。もしくは諦めて、約束された勝利を好むプレイヤーに向けたコンテンツになっていればそれで良しとして改善をエンドする。

 ここまでは主にシングルプレイゲームに関する話をしてきたが、では対戦が主体の例えば格闘ゲームではどうなのか。この場合、メインコンテンツがエンドコンテンツなので、ストーリー主体型シングルゲームよりも開発コストを比較的抑えやすい。その代わり、奥深く幅広い対戦システムを用意できなければプレイヤーはあっさり去ってしまう。完成度の高いシステムを実現するのは積み重ねたノウハウや斬新な工夫をもってしても容易ではなく、ご存じのとおり格闘ゲームを成功できているのは一握りの開発チームに限られる。エンドコンテンツをずっと遊んでもらわねばならない対戦ゲームを作り上げるのは非常に難しいということだ。開発するのであれば心してかかりたい。

 なお対戦ゲームに後からシングルプレイのモードが追加されることもある。ゲーム好きの中でも対戦ゲームを苦手とするプレイヤーは大半を占めているのだが、なんとかこうしたプレイヤーを取り込むためにシングルプレイを用意するわけだ。エンドコンテンツに対してスタートコンテンツとでもいうべきか。もっとも初心者向けシングルプレイから修羅の対戦に移行させるのはなかなか難しい。

 逆にストーリー+対戦型ゲームだったのが、シリーズを進めていくうちにスタートコンテンツは無くてもみんな遊んでくれるじゃないかということで「コール オブ デューティ ブラックオプス4」のように対戦オンリーゲームになった例もある。これは大成功したが、ずっとその路線だと新規プレイヤーが来なくなる危険もある。実際、その次回作ではストーリーが復活している。

 TitanFallではストーリーを対戦モード中で語るという新しい手法が編み出された。開発費を激減できたものと思われるが、TitanFall2では通常のシングルストーリーモードが用意されたところからしてあまり好評ではなかったのだろう。個人的には、オンラインマッチングが成立しないとストーリーを体験できないのが困りものだった。

 このように、ゲームによってエンドコンテンツの位置づけは様々に異なる。どのようなエンドコンテンツなのか位置づけを考えてプレイしてみることで、開発者が本当に遊んでほしいメインコンテンツは何なのかをつかむことができるだろう。

 また開発する立場でいえば、ゲームを長く楽しんでもらうためにエンドコンテンツの設計は重要である。どうプレイを楽しんでいってもらうのかシナリオをよく考えてゲームを組み立てたい。

 末永くゲームが楽しまれてプレイヤーが幸せでありますように。

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