「バイリンガル教育の方法」をおうち英語に活かす: 0歳~15歳の英語教育
<日本語家庭向け>0-15歳までの発達と言語教育のポイント
[0-2歳] 親の母語で語りかけが大事。幼児の言語習得の動機は周囲の社会のメンバーの一員になること。親が不得意な言語でぎこちない語り掛けをするのは避ける。
[2-4歳]言語的に親子の話し合いなど双方向の会話が大事。母語の発達を阻害しない程度に、歌の聞き流しなどで英語の耳作りは良い。
[4-6歳]母語で15-30分でもいいので本の読み聞かせ、余裕があれば英語も追加すると良い。「バイリンガルを育てたいなら本好き・読書付きの子供に」が海外子育て親のモットー。母語の読み書きを伸ばすことがL2L3の基礎になる。2言語バランスよく接するのは良いが急に一日中英語漬けは母語が脅かされる危険
[6-9歳]親より友達が大事になるが、まだ親子の会話が大切な時期。一緒にテレビや本を読んで話し合うことで言葉の力が伸びる。
[9-15歳]言語形成期=文化形成期。自我に目覚めるこの時期に海外旅行など異文化体験を与えたい。母語と違う世界観を学ぶ・言語のメタ認知が深まり日本語力や外国語学習向上へ
子供をバイリンガルに育てるには
要点
幼児期〜中学までの0-15歳は言語形成期=バイリンガル育成の適齢期
子供をバイリンガルに育てるには、2言語を使い分けなければならない状況を作ることが大事。
幼児期:一番大事なことは母語をしっかり育てること
さらに学校や課外活動、9歳以降は海外旅行や海外キャンプなどの質の高い異文化体験を子供に合わせて提供すべし
早期英語学習は9歳以降の日本語力も高める効果。ただ母語確立前の幼児に過度な英語漬けは注意。
母語をしっかり育てることが大事
母語(L1)は第2,3言語(L2,L3)の基礎となる。子供の母語は親との毎日のやり取りで育ち、その基礎の上に、学校や課外活動をうまく選び、海外体験を適宜加える事でバイリンガル基礎作りができる。
ただ子供の気質はそれぞれ違うので、こうすればバイリンガルに育つ、というような研究に基づく便利な方法論はない。
赤ちゃん期に2言語接触してても言葉が遅れる研究結果はないらしい。
小学生以降のバイリンガル教育は特に英語(L2)から日本語(L1)への転移も起こり国語力が高まる効果あり。 ただ日本語だけのモノリンガルよりもバイリンガルの方が母語・母文化のベースが重要。母語の発達が年相応なことが第二言語以上習得への鍵。
日本に住む両親日本語家庭なら、「日本語プラス外国語」で年齢相応の日本語力を育みながら英語もゆっくり育て、20代を目標にした長期的なバイリンガル育成を目指す。話せても読み書きできない会話型バイリンガルを回避しバイリテラル目指すなら、英語の読み聞かせや親子の会話で本好きな子を育みたい。
日本で言語形成期を逃して中学生以降に英語を外国語として学んだようなモノリンガル(例:私)は英会話の方が苦手なケースが多いが、バイリンガル教育すると会話(CF/BICS)の方が習得が早く1-2年。一方授業を受け理解する教科学習言語能力(ALP/CALP)は習熟に5-7年、母語が未熟な子供は5-10年かかる。言語を忘れる幼児が言葉を喋っててもぬか喜び禁物、定着は9歳。
バイリンガル教育に関する理論
以下は参考までに、バイリンガル研究に関する理論や研究内容の中で私が気になるところをまとめた。
バイリンガル研究の理論
ジム・カミンズの閾説
カミンズはバイリンガル研究の世界的権威 。
閾説=2言語とも高度な場合は知的発達に良い効果、両方伸び悩む場合は知的にマイナス、片方だけ高度だと知的発達への効果なし。
4技能とバイリンガルの分類
聞く、話す、読む、書く ができる"読み書き型バイリンガル=バイリテラル"
聞くだけニ言語=聴解型バイリンガル
聞く話すはニ言語=会話型バイリンガル
読むだけニ言語で他は一言語のモノリンガルの大人が現実には多い。
その他発達過程や文化習得、母語の社会的地位との関係の分類方法がある。
カミンズの2言語共有説
「バイリンガルの2つの言葉は互いに関係しあい、共有面を持っている」というカミンズの2言語共有説。ニ言語は別個のチャネルがあるが、深いところで互いにつながっている部分がある。
第一言語(L1)の言葉で読める=第2言語(L2)の言語で読み書きを学ぶ時に、L1の経験が役立つ。
この説を支持する実証的研究は2000年までに150点近くにおよぶ。一方の「2言語分離説」を支持する実証的研究は殆どない。
カミンズ「2言語相互依存の原則」
認知面と会話面のうち、認知面が2言語で関係し合う。
・言語への接触の機会が十分あること
・言語の学習動機が十分あること
の条件を満たすと、母語のちからが第2言語に転移する。
2言語の共有面(L1の力がL2に転移)
概念的な知識:読解力や作文力の転移
メタ認知・メタ言語(学習)ストラテジー:学習活動への態度や姿勢
コミュニケーションスタイル
特定の言語的要素:日本語と英語には同族語彙がないため無い
文字と音との関係ー音韻意識:文字習得の段階でおこる
ただし日本語との英語は言語差が大きく、上記の 1. 概念的・認知的な転移が中心となる。L1→L2だけでなく、双方向の転移も見られる。またろう児と日本語でも確認されている。
2言語の転移を促進する「教授アプローチ」
「2言語相互依存の原則」は言語政策に役立つ。さらに指導により、人為的に転移を促進する「教授アプローチ teaching for transfer」がある。
具体的には、ニ言語を活用した学習活動や、ニ言語を対象比較する機会を与える活動。
2言語に自然に触れる機会を作る:2言語で書いた張り紙を貼る、挨拶を2言語で行う、など
授業でメモをとる際・L2で発表する下調べなどにL1を使う
ITを活用して2言語接触を増やす:Google Translate/Google Earthなど
webに作品を掲載し意見交換の場とする
BICS, CALPと CF, DLS,ALP
言語能力の4技能の分類だけでなく、BICSとCALPをカミンズが提唱。
BICS : Basic Interpersonal Communicative Skills = 対人関係の基礎的コミュニケーション力
CALP : Cognitive Academic Language Proficiency = 認知・教科学習言語能力
(生活言語)
習得に必要な時間に差がある。BICSは2年で習得可能、CALPは5−7年かかる。子供の言葉が早いのはBICS面、L2のCALP習得は成人よりも長時間かかる。
上記BICS/CALPが二者択一的概念として誤解され、誤解を正すため三面説を提唱。
CF Conversational Fluency : 会話の流ちょう度 =従来のBICS
DLS Discrete Language Skills : 強化学習言語能力 =従来のCALP
ALP Academic Language Proficiency : 弁別的言語能力 =従来のCALPのうちルール化できて個別に測定可能な言語技能。文字の習得や基本文型など。母語話者と同じくらいの速度で習得可能なものもあるため別にした。
日本語で言う、初歩的な漢字はDLS、抽象概念を表す漢字語彙はALP。
ALPは習得に5−7年、子供のL1熟達度が低ければ5-10年かかる。
ALPの指導法は、多読中心のリテラシー教育が必要。
2言語でCFとALPの力を育てるには
高いリテラシーへ到達するには「本が身の回りにある」「本を手にとって読む環境」が必要。リテラシーへの関わりには、多読・多書(たくさん書く)が必要。
日本の教育とバイリンガル
小学校での英語教育が始まった=言語形成期を活用した英語教育の始まりであり、国内でのバイリンガル育成が夢物語ではない時代。日本も国として日本人児童のためのバイリンガル育成プランを計画すべき。日本の環境は日本語が強固なため母語が揺らがない=ダブルリミテッドを心配しなくて良いというメリットもある。
バイリンガル研究は、 仏語と英語のあるカナダのイマージョン方式研究が盛ん。イマージョン方式はペンローズの脳科学の研究に基づいて設計されている。期待されたほど仏語は伸びないが両言語の学習においては学習の遅れなどは生じてないらしい。
近年日本語バイリンガル実践例も増え、日本国内でも家庭や学校のコントロールで高度な英語力獲得も可能。
ただバイリンガルで2つの言葉が同じ濃度で身につくことはほぼ不可能、維持も難しく、不完全なのがノーマル。各言語の力の測定すると両言語ともモノリンガルと比べると劣る結果が出やすいが、発展途上の一時期をみてダブルリミテッドと決めつけるのはNG。
可能なら小学校では最も質の高い先生を配置したい。また担任の先生が英語や他の教科を教えるであれば、日本語の授業で学んだ内容を英語で復習する、など授業の工夫の余地がある。
バイリンガル児の強み
以下は日本語でない他の言語においての研究結果だそうだが、バイリンガル児のメリットは以下とされる。バイリンガル児に限らず英語学習者にも当てはまる。
思考の柔軟性がある
言語に対する理解・言語分析力に優れる
相手のコミュニケーション・ニーズにより敏感である
言語によって人種偏見をしない
(…これってまさに、おうち英語で培われる内容だと実感!例え完全なバランスバイリンガルになれずとも、早期にバイリンガル教育をすることの教育的価値はあるかなと思っている😋)
2022.8読了
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