さよならが言えただけいいじゃない。

  僕はあなたの笑顔が大好きだった。顔をしわくちゃにして笑うその顔が大好きだった。できればこの言葉が過去形になる前に、君に伝えたかったけれど。

 僕はその顔が見たくて慣れない感じにおどけたり、真面目に頑張ってみたりしたけれど、結局、あなたのその笑顔は、一度も私に向けられることはなかったね。「それでもよかった」と言えるほど、僕は大人ではなかったけれど。君が彼のことを話しながら、僕の目の前でしてくれた笑顔は、僕を思ってのものではなかったけれど、唯一僕が君の笑顔を独占できた瞬間だった。

 冬が来て、春が来て。春になったら伝えようと思っていた想いは疫病と天災が機会を奪って。毎日会えてたあの頃を、ウイルスが嘲笑うように奪い去った。結局言えずに終わることになってしまった。あーあ。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。見事だね。

 始業式も、卒業式もなくなっちゃった今、これから先その顔を観れるのはスマホの写真フォルダだけ。


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