イトウモトコ

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イトウモトコ

ライティングディレクションや編集、執筆のサポート、各種文章のアドバイスなど日本語関連のあれこれを生業(なりわい)としています。プランニング・デザイン・イラストプロデュースを行う株式会社コットンズの社外コピーディレクター/エディターとしても活動中。

最近の記事

年下にも敬語?

敬語は基本的に目上の人、年上の人に使います。 もちろんビジネスシーンにおいては、「目上」で「年下」は山ほどいるので、年齢ではなく、立場で敬語を使う使わないは決まります。 ではビジネスではないシーンではどうでしょうか。 作家 色川武大の話 数年前の新聞記事なのでかなり曖昧な記憶なのですが。 そのコラム的な記事を書いていたのは、あるサスペンス作家。仮にAさんとします(すみません、名前忘れました…)。 コラムによると、Aさんは作家デビューが30歳頃と遅かった。そして作家にな

    • 「おっしゃられる」は二重敬語です

      今朝テレビに出ていた人が、「◯◯さんがおっしゃられていたように…」と言っていました。 この「おっしゃられる」を、最近よく聞く気がします。 「おっしゃられる」=「おっしゃる」+「られる」敬語の基本は「1つの言葉に対して1つの敬語」であり、1つの言葉に2つの敬語を使う=二重敬語は間違い。ということは広く知られていると思います。 が、しかし。 じゃあ何が二重敬語なの?というと、そこは今ひとつ曖昧かもしれません。 二重敬語でもっとも多いのは、今回のテーマである「られる」を余計につ

      • 「男の方(かた)/女の方」「男の人/女の人」「男性/女性」「男/女」

        先日、東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子さんが、テレビのインタビューに答えて 「男の方(かた)に勧めたいのは…」と言っていて。 「おとこのかた」って久しぶりに聞いた! ていうか、ほぼ忘れていたかも?! と、話の内容よりむしろそっちに引っ張られてしまいました。 「男の方(かた)」は滅びつつある? 接客用語としては今も健在のようですが、日常会話のなかで「男の方」って、特に若い人はほとんど口にしないでしょうし、生では聞いたこともないのでは? 少なくとも私はここのところ聞いた

        • 「させていただきます」の海に飲み込まれていく

          もはや敬語の鉄板ネタとなっている「させていただきます」。 前にも書きましたが、「させていただきます」は、許しを求めるニュアンスがある、あるいは自分が恩恵に浴する場合に使います。 したがって「結婚させていただきました」など許可を得る必要がなく、自分のことなので恩恵に浴するわけでもない場合は使わないほうがスマート。 以前、女性芸能人が「今日は◯◯◯な衣装を着させていただきました」というのを聞いたことがありますが、その時は本人の自前の衣装だったので、これも「させていただきました

        年下にも敬語?

          敬語にこだわるのは頭がカタい?

          言葉は変わっていくものです。 いろいろな人がそう言っていますし、私もそう思います。 思うというより、自分自身のこととして実感しています。 以前は使っていなかった言葉をいつの間にか使うようになっていた、あるいは違う使い方をするようになっていた、ということが、今までの人生のなかで何度も何度もありました。 人から見た自分の印象は、自分自身の言葉の選択に左右される たとえば私の場合。 ヤバい→不良言葉から一般の言葉になったあと、けっこう長い期間を経て私も普通の(身内や友達との)会

          敬語にこだわるのは頭がカタい?

          橋田壽賀子ドラマと外国人と敬語

          脚本家の橋田壽賀子さんが亡くなり、多くのコメントが寄せられています。 その中で私がとても驚いたのが、アメリカ出身の東大名誉教授、ロバート・キャンベルさんの発言です。 今朝テレビをつけたらたまたまある情報番組で、そのコメンテーターとして出演しているキャンベルさんが橋田さんについて発言するところでした。それが 「私は橋田さんのドラマの5人姉妹から、敬語を学びました」 ドラマで外国人が敬語を学ぶ! なるほど! よくニュース番組で語学を学ぶというのは聞いたことがありますが、ド

          橋田壽賀子ドラマと外国人と敬語

          芸能人の「結婚させていただきました」について

          現代の敬語にまつわる大問題のひとつに 「させていただきました」「させていただきます」 というのがあります。 この「いただきました問題」については追々書いていきたいと思っているのですが、その前に最近、気になったことが。 4月1日、芸能人カップルの結婚報告は「結婚いたしました」 数日前に芸能界のビッグカップルがゴールイン、その報告に世間は沸き立ちました (私もスマホにニュースが飛び込んできた瞬間、おおお〜〜めでたい!と思いました笑)。 マスコミへの連名の書面を見たら 結婚

          芸能人の「結婚させていただきました」について

          「タメ口」を素敵な言葉に言い換えられるか?

          前回、韓国ドラマのなかの敬語について述べましたが、そのなかで、年上に敬語を使わないと「タメ口か?」というセリフが出てくるということを書きました。 これはもちろん韓国語で「タメ口」と言っているわけではなく、字幕翻訳です。 というわけで、今回はこの「タメ口」がテーマ。 ドラマの字幕でもよく出てくるし、非常に意味が通じやすい言葉であると思いますが…。 タメ口のルーツ 今では普通の言葉として多くの人が使っていますが、そもそもは不良用語だったとか。 そのため年配者はあまりこの言葉を

          「タメ口」を素敵な言葉に言い換えられるか?

          韓国ドラマと敬語

          他の多くの人と同じように、私もコロナ禍の引きこもり生活の中で初めて韓国ドラマにハマりました(現在もそこそこハマり中)。 そのなかで気づいたのが「敬語」です。 たかだかドラマを見ただけのことで何も調べたわけではなく、従って実際の韓国の正しい敬語事情はわかりませんが、少なくともドラマを見る限り、韓国は敬語にとても厳しい国だと思いました。 年齢差を見逃さない ドラマの中の敬語のなかで、特に感じたのが「年齢」。 同年代とおぼしき人たちが知り合い、話している内にお互いの年齢がわ

          韓国ドラマと敬語

          「けっこうです」と「大丈夫です」

          今日はちょっと敬語から離れてしまいますが、何かを勧められて断るときの 「けっこうです」について書いていきます。 というと、すでにここで「けっこうです、って?」と思った人がいるかもしれません。 「けっこうです」は、「大丈夫です」という断り方が出てくる前の、昔からある言い方です。 「大丈夫です」の出現 大丈夫です、というのを私が初めて聞いたのは、たぶん20年くらい前。 小学生の女の子にお菓子をあげようとして「○○ちゃんは、これ好き?」と聞いたら、 「大丈夫です」という答えが帰

          「けっこうです」と「大丈夫です」

          「仕事」と「お仕事」

          人に職業を聞くとき、ビジネス寄りの場であれば 「ご職業は?」となると思いますが、 気軽な会話のなかでなら 「どんなお仕事をされていますか?」 というように聞くのではないでしょうか。 この場合の「お仕事」の「お」は、相手への敬意を示す尊敬語です。 また、これは女性の場合が多いと思いますが、敬語関係なく仕事に「お」をつけることもあります。 「世の中にはいろんなお仕事があるのね〜」とか 「こういうお仕事、羨ましい!」とか。 これらは言い方をきれいに整える美化語としての「お」です

          「仕事」と「お仕事」

          「お高い」「お安い」を考えてみた

          最近気になるのが、値段の高い安いを「お高い お安い」という人が増えたことです。 だいぶ前になりますが、私よりずっと若い友達と話していたら、彼女が普通に 「あれってお高いわよね」と言ったのです。 一瞬私は、冗談で昭和のドラマのマネをしたのかと思いました。 (「まぁ、このお洋服、お高くなくて?」のような気取っていてちょっと笑っちゃうレトロなイメージ…すみません、わからなかったらスルーで) 値段の「高い 安い」に「お」は要らない というわけで、今回は名詞や形容詞などにつく接頭語

          「お高い」「お安い」を考えてみた

          身内に敬語は使わない、の「身内」って?

          ビジネスにおいて、他社の人と話すときに自社の人間(上司)に尊敬語を使わないのは当たり前。 同じく自分の話を他人にするとき身内に敬語を使わない、というのもほとんど“当たり前”レベルの認知度だといっていいでしょう。 でもその“身内”って、どこまで? 義理の母でも、母は母 人に自分の両親の話をするときに敬語を使う人は少ないと思います。 兄弟姉妹、叔父叔母にも使わないでしょう。 しかしたまに聞くのが 「主人の母に買っていただきました」 などというフレーズです。 主人の母…つま

          身内に敬語は使わない、の「身内」って?

          「拝見」の使い方

          最近気になるのが「拝見」という言葉です。 拝見は謙譲語(自分を下げて相手を上げる)で、「見る」という意味です。 つまり自分が何かを見る(見た)ときに使います。 さてみなさんは、 「拝見させていただきます」ってどう思いますか?これは基本的には間違いです。いわゆる「二重敬語」にあたります。 つまり「拝見」は敬語なのに、重ねて「させていただきます」という敬語を使っているから二重敬語になるわけです。 最近は当たり前のようにあちこちで聞きますが、大げさだし、すっきりしない言い回し

          「拝見」の使い方

          「そこにいない人」に敬語を使うか?

          みなさん、自分が尊敬している、たとえばお世話になった先生などと話す時は、当然敬語になりますよね。 ではその先生のことを、自分の知り合いに話す時はどうでしょうか? 話す相手が、話題にしている人を尊敬しているか、いないかで決まる たとえば私が、尊敬するA先生と直接話す時はもちろん敬語です。 そして同じくA先生を尊敬するBさんと、A先生について話す時、やはりA先生に関わる部分では敬語を使います。たとえば 「この前A先生は、日本酒よりワインが好きとおっしゃっていた」 というよう

          「そこにいない人」に敬語を使うか?

          ③ 「人」は悪い言葉ではない

          最近気になるのは、「人」と「方(かた)」の使い分けです。 前回、犯人にも敬語を使う人がいるという話をしましたが、その続きといいましょうか。 これまた前回と同じくテレビの街中レポートで、その日にオープンしたお店に並んだ人を見て、レポーターがこのように言いました。 「朝からおおぜいの方が並んでいます」 どうでしょうか? これに違和感を覚える人は、少ないかもしれませんね。 はい、別に間違いではないのです。 でも、ここで「方」という必要もありません。 前回も書きましたが、「

          ③ 「人」は悪い言葉ではない