WAKUWAKU留学フェアでいただいた質問への回答
先日「マレーシア・インターナショナルスクール ワクワク留学フェア2022」というオンラインイベントにて講演させていただきました。その際に多くの質問をいただいたのですが、時間内に答えられなかったご質問について、こちらで答えさせていただきます。
質問1 マレーシア留学では転校が多いと聞きますがその理由はなんだと思われますか?また親としてはIBを学んでほしいと考えていますが、子どもがまだ小さく(幼児で)大きくなってから途中で合う合わないが出てくることが予想されます。先程のお話ですと別のカリキュラムからIBのカリキュラムへ移ることは難しいとのことでしたが、逆にIBから他のカリキュラムへ移る際に考えられるデメリットがあれば教えてください。
回答:転校の多い理由の第一は「選択肢が多い」からだと思います。野本さんも後のワークショップで話されていましたが、日本の教育システムはどこに行っても大差ありません。しかしマレーシアでは、カナダ式、米国式、英国式、IB、中華式、ホームスクールなど多くのシステムがあるため、自分の子供に合ったシステムを「いろいろ試す」ことができるためだと思います。もう一つの理由は、学校のシステムや先生が頻繁に変わるということもあるかと思います。経営母体が変わったり、先生の入れ替わりも頻繁なので、良くなることもあれば悪くなることもあります。重要なのは、そういう変化に対して、学校と連絡をとって「何が変化して何が変わらないのか、その結果自分の子供にどんな影響があるのか」を調べていくことです。トークの際に申し上げたように、マレーシア留学自体が日本の親にとってVUCAの程度の高いことですので。
IBから他のプログラムに移る子は、娘や息子の級友の中でもたくさんいました。多くの場合、IBが教科書を使わなかったり、いわゆる受験(IGCSEが主体)の準備ができない、といった理由によるものでした。IGCSEは選択科目を絞らなければいけないため、それができるギリギリの時期が13‐14歳くらいです。それ以降にIGCSEの科目を始めると、受験勉強についていけない可能性が高くなるので、その年代くらいが一つの節目になっているようです。IGCSEにせよ日本の大学入試にせよ、いわゆる「受験対策」が必要となりますが、IBはそれをさせません。特に、IBにいながらの日本の大学受験準備は相当難しいでしょう。我が家では日本大学受験はもうとっくに視野に入れていません。その代わりIBディプロマを取ると、日本とは比べ物にならないくらい多くの世界的一流大学への道が拓けます。ただそれも簡単ではありませんのでリスクとベネフィットをよく調べて、14歳くらいまでにプログラムを絞るのが良いのではないかと、私は思っています。
質問2 マレーシアの教育方針は誰かが決めているものですか?日本のように学習指導要綱があるとか。それとも学校ごとに方針や教材を選んだら、国によって変えられるようなことはないのでしょうか?
回答:申し訳ありませんが、この質問については、大学しかわかりません。マレーシアにも日本の文科省に相当する省庁があり、そこが指導要綱を決めているはずです。公立の学校はその方針に沿っていますが、私立にはある程度自由が認められています。小中高のプログラムについては私は詳しいことはわかりません。ワクワク海外移住のスタッフにお尋ねいただければと思います。
質問3 思考力と言語力の繋がりは深いと考えているのですが、先生は思考する際、日本語、英語どちらで思考されますか?また思考力を鍛える際、自分の中で主となる言語能力を高める必要性を感じていらっしゃいますか?
回答:ほとんどが日本語ですが、英語で長い間議論していると、たぶん英語のまま考えるモードに入ります。米国留学生時代、日本語を全く話さないまま数か月過ごしていると、そのモードが出来上がってくるのがわかりました。そのサインとしてわかりやすいのが、英語の夢を見るという体験です。それがあったら、たぶん日本語を介さない英語での思考モードができていることになるのではないかと思っています。
思考力を鍛えるのに必要なのは、主となる言語能力よりも、自分の考えを複数の言語で表現することだと思います。日本語では話せるのに、英語で話せない場合、多くの場合は自分の言いたいことを「本当に深いところまで自分で理解できていない」からだと私は考えています。自分の言いたいことを、複数言語で自由に話そうとする訓練は、そのまま思考の訓練になると思っています。この点についてはNoteのこのページにも述べています。
質問4 渡部先生の母子留学についてのお考えをお聞かせください。もしも先生のご家庭で母子留学の形態を取られる場合、お父さんとしてのサポートで大切なことはどんなことだと思われますか?また、父不在をどのように埋めるのがベストかと思われますか?マレーシア留学へのメリットを強く感じる一方、父親と離れて暮らすデメリットの両方を感じています。
回答: これは難しい問題で、ケースバイケースというより他ないと思います。大切なのは父親と母親の間で、子供への教育方針にブレがないということです。とはいえ、親同士の考えが違うのは頻繁に起こるので、そこは父母同士がきちんと話し合って、子供に対しては一貫した態度を取れるようにしておくの理想だと思います。父親不在の母子留学でも、それは同じで、距離が離れていても、父母が頻繁に連絡をとり、子供の状況を共有し、方針について議論することが大切かと思います。
逆に言えばそれができれば、教育の一番重要なところがカバーされているので、父親不在の影響は少なくなるかと思います。しかしながら、教育以外の心理的な部分や、感情的な部分で子供が父親との同居を強く希望するならば、そちらを重視することの方が大切だろうと心理学者としては思います。
質問5 なぜマレーシアなのでしょうか?多国籍、英中言語、イギリス圏の場合には、シンガポールなどもあるかと思うのですが…
回答:もちろんそうです。このイベントはマレーシア留学のイベントなので、マレーシア留学のメリットを述べたまでで、他国への留学にメリットがないというつもりは毛頭ありません。ただ私はシンガポールなど他国の状況を知らないので、マレーシアと比べてどうかということを議論することはできません。ご興味があればご自分で調べられてはいかがでしょうか。
質問6 いま日本でアメリカンスクールに通っています(G 7,G3)。アメリカンスクールといっても詰め込み式教育な感じです。来年からKL教育留学を前提とした場合、準備としてしておいた方が良いことはありますか?
回答:最も重要なのは、お子様が学校を楽しんでいるかどうかじゃないかと思います。楽しんでいるならば無理に留学する必要はないでしょう。楽しんでいないならば、どんなシステムがお子様が学習意欲を持ちづつけるられるのかを考慮した上で、最も適してると思われるシステムを選ぶべきです。そのためにKL留学が良いならばそうすればいいし、別の場所がいいならばそちらを選ぶべきです。
そして「ダメならまた転校すればいい」、というくらいの考えで臨んだほうがいいかと思います。したがって、行うべき準備は、お子様にとって最もよさそうな教育システムを選び、それを提供する学校を洗い出して、そこのことをしっかり調べることです。その際、お子様に意思決定させることをお忘れなく。
質問7 その後の進学先にはどんな国のどんな学校が考えられるでしょうか?
回答:学校によって異なります。IGCSEならば当然英国および英国連邦(オーストアリアなど)の大学が中心となりますし、カナダ式ならばカナダの大学出願が非常に楽になります。IBディプロマは世界中の一流大学で受け入れられています、しかし日本の一流大学はこの限りではないでしょう。どの教育プログラムを取るかによって異なるので、学校を選ぶときにはその質問もしてみると良いかと思います。
質問8 マレーシアに移住して8年で、息子は4歳からインターナショナルスクールに通っています。ここ2,3年で学校の経営母体が変わり、ガラッとマネージメントが変わってしまいました。今までにはなかった問題が続出し、学校の転校も視野に入れています。我が家も本人に意思無しには転校も難しいと思っていますが、本人はお友達もいるため、転校には乗り気ではありません。どこで子供の意見と親の意見を折り合いをつけるか悩ましいです。子供の意見を最重要視するべきでしょうか?学校もビジネスなので、カリキュラム急に変わることもあるので、難しいなぁと思っております。
回答:大変難しい問題ですね。お察し申し上げます。問題は、新しい学校に行ってお子様がまた楽しい生活を送れそうかという点です。
もし転校したくない理由が「友人」であれば、それは理由にならないでしょう。本当に親しい友人ならば、転校したあとでも友情は続くはずです。実際私の子供たちも、多くの友人が転校していきましたが、親しい子たちとは数年たった今でもSNSで頻繁にやりとりして、仲良くしています。したがって、プログラムがフィットするかどうかの方が重要かと思います。お子様が転校したくない理由をしっかり聞いて、よくクリティカルシンキングをさせ、親もよく考えて、徹底的に議論するより他はないと思います。ただし子供が納得するまでは、決定は保留すべきかと思います。
質問9 例えば中学3年間はIB式に通い、途中からイギリス式に転校などは勉強的に大丈夫なのでしょうか?しない方が良い? ありがとうございました。
回答:質問1への回答で述べておりますので、ご参照下さいませ。
質問10 親がマレーシアの方と仲良くなる秘訣があれば教えてください!
回答:変なステレオタイプなど持たずに、素直に接すればいいだけです。知らないことは尋ねればいいのです。ムスリムの人と食事に行くときには食べられるものと食べられないものがあるので、直接訪ねればいいですし、ムスリム以外の人にもベジタリアンがいたりします。多様性の国なので「この人はこうだろう」という思い込みが通用しません。それを認めて素直に尋ねればいいと思います。基本的にそういうことを尋ねられても嫌な顔をさせることはないです。
質問11 下の二人のお子様の日本語のフォローはどのようにされていましたか?
回答:有り体にいえば、できていません。子供たちは学校の勉強と宿題、試験で手一杯で、日本語を学ばせる時間はこれまで取れていません。せめて日本語に触れる機会だけでも増やそうとして、家では日本語オンリー、日本のドラマやアニメや漫画、簡単な本を与えていますが、余暇にちょっと触れるだけであまり読み書きはできていません。これは子供たちにとってディスアドバンテージになるため、どこかで日本語の訓練をしなければと思っているところです。
質問12 親の働きがけが適切であればバイリンガルは可能、うまくバイリンガルにできないのは親のやり方が悪いというような発言をされているエージェントさんがいました。これについてどう思いますか?
回答:その方の詳しい話を聞いていないので何とも言えませんが、バイリンガルになれるかどうかは、環境次第だと思います。日本語も英語も話さなくてはならない状況になれば、誰でもバイリンガルになれます。KL地区のTTDIという場所に、いわゆる場外市場があり、そこで地鶏を直売している店があるのですが、そこのお兄さんは7か国語で商売しています。それだけ多くの言語を話す人とビジネスしなくてはならないからです。親の働きかけが重要というならば、そのような環境を作ってやれるかどうかということではないでしょうか。
質問13 IBは先生の質に左右される部分が大きいと感じますが、マレーシアではそのレベル感はどうでしょうか?
A:Noteのこのページに述べていますので、ご覧ください。
質問14 子どもの意志を尊重されていると思いますが、親として子どもに進んで欲しい分野はありますか?
回答:特にないです。本人が自身の人生を楽しめれば、どのような人生を歩んでもいいと思っています。
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