誰の目にも触れないdocumentary film
森美術館で開催中の「六本木クロッシング2022展」に行ってきました。現代アートの作品展で、絵画・映像・写真など、さまざまなジャンルの作品に触れることができます。
私は、この1枚の写真に吸い寄せられました。場所は横浜市、金沢八景という駅の一角を切り取った写真。多くの人にとって、きっと何の変哲もない景色。
ここは、私が大学時代を過ごした思い出の場所であり、見慣れた景色。そして、卒業してから駅前の再開発があったため、もう無くなってしまった景色。この写真に触れた瞬間、「あの場所だ・・・」と記憶が目を覚まし、しばらく時間が止まってしまいました。
その後はもう、他のどの作品を見ていても、あの写真のことが気になってしまう。1つの作品に囚われている自分がいる。
「誰かにどうしても伝えなきゃ」と思いました。その「誰か」とは、これが伝わる人たち。つまり大学時代の仲間たち。慌てて、ツイッターでつぶやき、インスタグラムに投げ込み、ラインで送ってみる。それを見た仲間たちからは早速反応があり、「懐かしいね」「よく見つけたね」なんて言葉が返ってきました。SNSがあってよかった。そんなことを珍しく感じました。
1つの写真が、1つの作品が、自分にとって特別なものとなる。アート展に足を運ぶと、たまにそんな経験をすることがあります。私が、アートに吸い寄せられる理由の1つかもしれません。
美術館を出て、六本木ヒルズの53階から見えたのは東京の夜景。キラキラと瞬く光の粒。まるで湖面に光が反射しているような美しさ。それを見ていて、頭の中で流れてきたのは「documentary film」のイントロ。
"誰の目にも触れないドキュメンタリーフィルムを 今日も独り回し続ける”
(「documentary film」/アルバム『soundtracks』より)