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10,元旦の初死の出(はつしので)

元旦の日の当直勤務
まさか元旦から変死体は発生しないだろう

そう思っていた

しかし刑事課の現実はそんなに甘くなかった

むしろ元旦には変死体が発見される「あるパターン」があったのだ

今回は世間が幸せな時間に包まれる年末年始でも勤務しなくてはならない刑事課員のお話

いつにもまして行き気の起きない出勤


その年は元旦に当直だった

もうそれだけでこの仕事がイヤになったものだ

元旦の寒い朝
警察署へ出勤する電車内

世間はみんな楽しいお休みなんだと実感する

電車に乗っていると、初詣に向かうらしい楽しそうな家族やカップルがたくさんいる
おれはこれから警察署で明日の朝まで勤務か・・

新年が明けたとは思えない、むしろいつもよりどんよりした気持ちで出勤した


明日の夜勤明け、昼からは親戚の新年会が予定されている

参加できるかどうかはこの24時間の事案にかかっている

交番勤務の時の元旦勤務は本当に事案が少なかった。
初めて夜勤明けに昼前に退勤できた


しかし今年は刑事課だ。何がどうなるかわからない

新年会に行けるかどうか 行けるとしても一睡もしていない最悪なコンディションかもしれない 

そんなことを考えながら署に入った


刑事課に入ると当直5人がそろった

誰もがこの日くらいは何もない24時間を望む

中でも起きてほしくないのが変死だ

元旦から変死体など見たくない 

いくら刑事課員が死体に慣れているとはいえ、やはり元旦くらいは関わりたくない

初詣で財布をスられた、くらいなら起きてくれてもいい

でも変死はホントに今日くらいは勘弁してほしい

いや、まさか元旦に死体は入らないだろう

この極寒の中、山菜取りに行くバカもいないだろうし


署員の希望など容赦ない刑事課の現実


さすがに今日は事案少ないなー

そう思っていた16時頃だった

そこまでは本当に事案が少なくていい感じだった

しかし当直室の無線係から刑事課に電話がかかってきた

「変死入りました」

・・・・・

入るんだ
入っちゃうんだ

元旦なのに死体が見つかるんだ

へー

この元旦に死体を見つけるって一体どんなやつだ

正月らしい過ごし方をしてて、何をどうしたら死体を見つける?

もうホントにがっかりだよ

これが刑事課員がもらえるお年玉かよ

元旦くらいはないと思ってたのに

検視セットを用意していると、今日が元旦とは思えなかった


現場は古いアパートの一室


現場に到着し発見者から聴取

すると

元旦だからこそ見つけてしまった

という理由があることがわかった


死者は80歳になる高齢男性

現場は

一人暮らし用の古いアパート

発見者はその娘(40代半ば)だった


この女性は正月ということで、久しぶりに父親を訪ねたのだ

高齢で一人暮らし、普段はなかなか連絡もとっていない父親

その様子を見に行ってあげようと訪ねた

優しい心の持ち主なのだ

しかし、そうしたら死んでいた

元旦早々死体を発見してしまった

というのが死体発見の経緯だった

ということは、年末年始やお盆というのは、むしろ孤独死が発見されやすいゴールデン期間なのかもしれない

来年からは「元旦くらい変死体はないはずだ」ではなく、むしろ年末年始は変死体が入りやすい時期だと覚悟しておく必要がありそうだ

そんなことを学んだ元旦早々の初死の出だった

ちなみにこの変死体はすんなりと衰弱孤独死として処理できたため、夜勤明けは昼頃に退勤することができて、親戚の新年会には参加することができた。

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最初のnoteにタイトル一覧を載せてあります。 1、記念すべき1体目は飛び散った肉片 2、死体なのに体内から音が。その音の正体は 3、初めての腐乱死体。腐乱死体とはどんな死体なのか 4、自殺と断定するには謎が残った白骨死体 6、一家全焼火災の焼死体と怪奇電話 11、傷害致死。飛び散った血痕のDNA結果はまさかの 15、解剖。そこで刑事が見るもの、聞く音、感じる匂い。 など。 15本は現時点ですでに決定しているnote。今後追加する場合もあり。 一度購入してもらえれば、すべてのnoteが読めます。

刑事課の時の死体現場のリアル話。 刑事の死体現場とはどんなものか、死体現場での刑事たちの本音とは ドラマや小説のようなファンタジーは一切な…

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