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13,プロフェッショナル。焼き尽くされた焼死体に見せた鑑識のプロ意識

その焼死体は人間の原型すら留めていない炭の塊だった

人間よりも何層にも重なったパイ生地の方が近い

検視室に置かれたその炭に刑事課員の誰もが見向きもせず戻っっていった
しかしたった一人そこに残って座り込んで何かを始めた人がいた

私はそれを見て衝撃を受けた
「これがプロ意識か」と学んだ

事件は「火災発生」の110番から始まった
建物は全焼し倒壊していた
その焼け跡から焼死体が出てしまった

事件性が強く疑われたため、本部の鑑識が10人応援に来た

県内屈指の鑑識のスペシャリストたちだ

その中に、私が鑑識専科で警察学校に入った時の教官だった後藤班長(仮名)がいた

年齢は50歳くらい
普段は本部で鑑識の新アイテムを開発したり、各署を回って鑑識の指導をしているスペシャリストだ

人柄は穏やかで、授業ではよく私たちを笑わせてくれた

授業で時々話す過去の事件の話は凄まじかった

全国で毎日テレビ放送されるような超有名事件の現場に何度も行ってる人だ。

詐欺グループが仲間割れして5〜6人が殺された事件
幼い女の子が誘拐され死体で発見された事件
日本有数の資産家の放火殺人事件

どでかい事件で、鑑識としてどのような捜査をしてきたのか、経験談を聞けるのが毎回楽しみだった

その人とついに一緒に仕事をする機会が来た

顔を合わせたのは署の検視室の前だった

私が検視室から出てきたところ、検視室に向かってきたのが後藤班長だった

「専科ではお世話になりました」

顔を合わせるのは警察学校以来だ

「おーがんばってる?
なかなかでかい事件になりそうだね」

でかい事件でピリピリしている空気に似合わない穏やかで柔らかい口調だった

この時検視室の中には火災現場から搬送されてきた焼死体が安置されていた

もはや人間の原型すらとどめていない炭の塊のようなものだった

焼けるところまで焼き尽くされたため真っ黒な炭のようになり、さらに倒壊した建物に押しつぶされバラバラになっていた

知らない人が見たら死体とは思わないだろう

黒い炭片の集まりだった

何人かの捜査員がこの炭片を見ては「これはダメだ。ここから身元がわかるわけがない」と立ち去っていった

私も同じで、一目見て検視室から出たところだった

そこに後藤班長がいた

後藤班長は検視室に入っていった

おそらく死体を確認しに行くんだろう

きっとすぐに出てくるだろう

そう思って私は刑事課の部屋に戻った

1時間くらいして、検視室に取りに行くものがあった

誰もいないだろうと思っていたが、ドアを開けると後藤班長がいた

後藤班長は床に座り込み、炭片の前で黙々と何かをしていた

どうやら私とすれ違った一時間前からずっとここで何かしていたらしい

「何してるんですか?」

後藤班長は温和な口調で普通に答えた

しかし後藤班長がやっていたことを聞いて私は衝撃を受けた

これほどのプロ意識を持った人は警察官になってから初めてだった

自分は決まったことをやってるだけだったんだなと痛感させられた

あまりの違いに悔しさすら感じなかった

後藤班長は何をしていたのか

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最初のnoteにタイトル一覧を載せてあります。 1、記念すべき1体目は飛び散った肉片 2、死体なのに体内から音が。その音の正体は 3、初めての腐乱死体。腐乱死体とはどんな死体なのか 4、自殺と断定するには謎が残った白骨死体 6、一家全焼火災の焼死体と怪奇電話 11、傷害致死。飛び散った血痕のDNA結果はまさかの 15、解剖。そこで刑事が見るもの、聞く音、感じる匂い。 など。 15本は現時点ですでに決定しているnote。今後追加する場合もあり。 一度購入してもらえれば、すべてのnoteが読めます。

刑事課の時の死体現場のリアル話。 刑事の死体現場とはどんなものか、死体現場での刑事たちの本音とは ドラマや小説のようなファンタジーは一切な…

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