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2024年度版会社設立(一人法人登記)の流れ

法人登記をしたので記憶が新しいうちにメモしておきます。これから会社を作る人や、そのうち作るかもしれない人でもいざ取り掛かると時間がかかるプロセスなどもあるため、早めに知っておくためにも読んでみてもらえると嬉しいです。
なお登記した法人は株式会社なので、合同会社を設立する場合はちょこちょこ異なります。

知っておきたいことまとめ

  • マイナンバーカードと印鑑証明書が必要になる

  • 登録免許税(株式会社だと 15 万円)は特定創業支援等事業を受けると半額になる。だが受け終わるのに数ヶ月かかる

  • freee 会社設立(内部で法人設立ワンストップサービスを利用)を使えば専門家に頼らず一人で完結できる

  • freee 会社設立を使えば最短で 2 週間ほどで登記できる。だが現実的には3 ~ 4 週間くらいはかかりそう

  • 費用は登記までで19万弱(上記の登録免許の半額が効くと11万くらい)

  • うまくいけば役所に行く必要は無いが、郵送物があるので完全デジタルとはいかない


Who I am

  • 社会人歴 10 年ちょいです

  • ソフトウェアに関する仕事をずっとやってきました

  • ビジネス(営業・BizDev・PM・PdM・CX)とエンジニア(フルスタック気味)の両方をやってきました

会社を作った目的

自分でビジネスを立ち上げる時に法人が無いとできないことがあったり、都合が悪かったりするため。具体的にはプレスリリースや展示会の出展などは法人であることが前提なことが多かったり、営業活動をする時も与信の面で会社が無いとつらいためです。

前提

  • 登記が完了するまでを書いています。その後の税務署や年金事務所への書類提出などは書いていません。

  • 株式会社です。合同会社の設立だと当てはまらなかったり異なる点があります。

  • 役員は一人です。共同創業者が他にいたりすると少し変わります。

  • freee 会社設立に全面的に乗っかります。

  • 自分は税理士の知り合いがいるので相談に乗ってもらいましたが、いなくても問題ないです。

  • 個人事業主と法人の両方を持って特に社会保険料抑えるスキームについては特に書いていません。(色々調べたが全然意識していない)

全体の流れ

流れが結構わかりずらく、全体像をあまり理解できないまま進めていました。実際理解しなくても問題は無いのですが、そこそこ不安な気持ちもあったので登記が完了してやっと見えた全体像を図にします。

法人登記の流れ

大きくは以下の 3 つのセクションに分かれます。

  1. 定款作成(青)

  2. 公証人と定款認証(黄色)

  3. 法務局で登記(緑)

2 つめと 3 つめは平行して進むのですが、なるべくこの分け方に沿って書いていきます。

特定創業支援等事業の支援を受ける(任意)

認定特定創業支援等事業という、創業希望者、創業して間もない人を支援するための国や自治体によるサポート事業があり、この支援を受けるといくつかのメリットがあります。
メリットの中には金銭的なものもあり、後述する法人登記時の登録免許税が半額(株式会社は 15 万が 7.5 万に)になったり、創業融資の優遇措置が適用されたりします。
最初「支援て何?」とわからなかったのですが、自治体地域の民間企業や商工会議所と一緒に実施するもので、内容は自治体によって異なります。いくつか見たところ創業に関する様々なことを研修にて教わる形式が多いようです。
以下に記載するような注意点があるので、それぞれの状況に合わせて検討するものかなと感じます。

  • 会社を設立する市区町村で受ける必要がある

  • 研修は週 1 回 × 5 回の実施といった期間になるため、時間がかかる

  • 常に実施しているわけではないので、市区町村毎にスケジュールをウォッチする必要がある

自分はこの数ヶ月かかる、常に実施しているわけではないという事実をちゃんと認識していなかったので、登録免許税の支払いに間に合うタイミングで受けることができませんでした。

マイナンバーカードの作成:1ヶ月

プロセスの様々な箇所でマイナンバーカードが必要になります。全国の保有率が 8 割を超えているようなので基本みなさん持っていると思いますがズボラな自分は持っておらず .. 作成のために 3 週間くらい時間がかかりました。

印鑑証明書の取得

個人の印鑑証明書が必要です。印鑑登録自体は自治体で実施し、登録すると印鑑登録証というカードがもらえます。でマイナンバーカードがあるとコンビニとかで印鑑証明書を発行できます。

オフィスの契約(1~2日)

手続き的なもので一番最初に必要になるのはオフィスの契約です。オフィスの契約は法人が無くてもできるところがあるのと、設立する法人の住所(登記上の住所)が決まっていないと法人登記ができないためです。
私は格安バーチャルオフィルのレゾナンスを契約しました。

物理的なオフィスは不要なのと値段で決めましたが、可能性としてはお客さんが会社の住所を調べたときに「バーチャルオフィス = 大きな会社じゃない」という判断をされることがあるかもしれません。

なお審査プロセスはあるのですが、サクサク進み申し込んだ当日には住所が利用できるようになりました。

freee 会社設立に登録

freee 会社設立に登録します。freee 会社設立は行政が提供している法人設立ワンストップサービスの API を内部的に利用しているようで、例えば法務局から連絡がくると法人設立ワンストップサービスからメールが届き、連絡の内容を法人設立ワンストップサービスと freee 会社設立の両方で見れるようになります。法人設立ワンストップサービスだけでいいのではないかと思いましたが、正直ワンストップと言っておきながらなかなか分かりづらく、その分かりやすさから freee を使うことにしました。

定款準備(各種決め事)

法人形態と商号

基本的に株式会社か合同会社から選択します。自分としては営業時の会社の与信面から株式会社にしました(諸説あるとは思います)
その他の観点としては費用面や運営の複雑さ、会社を大きくしたいかどうかなどが挙げられます。

商号は会社名です。自分は .jp のなるべく短いドメインを取りたいと考えていて、見つかった短い文字数のものから後付けで意味を考え、会社名をきめました。

資本金の額

Web では融資の受けやすさとか体外的な見た目から 100 万ないし 300 万はあったほうが良いとか、3 ~ 6 ヶ月分の運転資金分はあったほうが良いといった意見が見られます。
キャッシュフローのことを考えると業態によると思うのと、私の場合税理士さんからは IT やソフトウェアに関する事業であれば全然低くても良いよとアドバイスされました。

また、後述する電子定款認証費用は資本金の額によって以下の通り若干異なりますます。

  • 100 万円未満:3 万円

  • 100 万円以上・300 万円未満:4 万円

  • それ以上:5 万円

株価(株式数)

1 株あたりの株価を決めます。資本金を株価で割ると発行する株式数が決まるので、どちらかというと発行株式数を決めるマインドでした。

この動画が参考になったのですが、仮に会社が大きくなってストックオプション(SO)を発行するとすると、SO は多くても全株式の 10 %程度になる。100 人従業員がいるとすると 0.1 %以下の単位で考えたくなる。そのため最低 10 万株はあると良い。とのことでした。
そうなると株価が数円〜数十円になりますが、調べた限り株価が低いことの問題はなさそうだったので 10 万株以上になるようにしました。

取締役会と取締役の任期

取締役会の設置有無は freee のサジェスチョン通りで「設置しない」を選択しました。
取締役の任期について、複数人での起業の場合長すぎるとリスクになるが一人であれば最長の 10 年で良いです。

事業の目的

事業の内容を定義します。定款に記載されるので後で増やす場合は手続きが必要になり、なるべく将来的に手掛けるかもしれない事業を含めます。
多くても 10 個までに抑えるというのがセオリーなようですが、自分の場合 13 個になりました。

なお事業の目的は freee 会社設立の流れでは豊富な選択肢から選べるので、私はその一覧を見ながら考えて決めました。

決算月

決算月は色々観点があるようで、私が調べて見つけたものを記載します。

  • 3 月は国内大手企業の決算月と重なり税理士さんの繁忙期なので避けたほうが良い

  • グローバル企業は 12 月が多い

  • あまり売上が立たない時期にするべき。経費の調整(節税のアクション) が取りやすいため

  • 設立後すぐに決算月がくるといきなり大変

  • 以前は消費税の観点から設立月からなるべく遠い月にするべきだったが、インボイス制度に加入する事業者の場合関係なくなった

公告の掲載方法

毎年の決算や資本金の減少を公開する義務があり、公開の方法を決めます。

freee 電子公告なるサービスがアップセルされるのですが、自分で自社ホームページに掲載するでも良いようで、そちらを選択しました。その際に公告の URL を決める必要があります。

定款作成

上記決め事を盛り込んだ会社のルールブックを作成します。

定款の作成方法の選択

電子定款か紙定款かを選択します。紙定款の場合印紙代で 40,000 円かかるので電子定款一択。さらにここで freee 会計の年間契約を実施すると、電子定款作成費用 5,000 円が無料になります。

自分は freee に慣れていたこともありもともと freee 会計の年間契約はするつもりでしたが、この会社を設立したい人を自然な流れで加入させる流れは鮮やかだなと思いました。

定款の認証手続きをする公証役場を決める

定款は公証人という方に認証される必要があり、その公証人が執務する役場を公証役場と呼びます。

公証役場は本店所在地の都道府県にあればどこでも良いとのことで、特に考えずに家の近くにしました。
後で聞いたのですが、公証役場によっては今回のようなオンラインのプロセスに不慣れなところもあるようです。とはいえ公証役場の良し悪しは事前にわからないと思いますし、あまり気にすることでもないかなと考えています。

電子定款作成を専門家へ依頼( 1 週間)

電子定款を専門家に作成してもらいます。行政書士法人の方と何回かのやりとりが発生したのと、行政書士法人は前述の公証役場に定款を確認してもらっていたようです。

ちなみに定款は freee 会社設立のシステムでテンプレートと自分が決めた事項から自動的に作成されるので、それをチェックしてもらうプロセスという雰囲気でした。

作成依頼を申し込んでから定款作成の終了までは 1 週間程度かかりました。

定款認証の予約(1~2週間)

定款作成が完了すると freee 会社設立上いくつか次のプロセスに進めるのですが、その中の一つに公証人との定款認証のためのオンライン面談の希望日の調整があります。公証役場の都合もあるので早めに日程調整すると良いです。

スーパーファストトラックオプション

定款認証の予約を取る際に窓口の方から「 今回はスーパーファストトラックオプションという進め方で依頼してきているが、通常の定款認証の進め方でなくて大丈夫?」という提案というか投げかけをいただいた。
freee 会社設立はスーパーファストトラックオプションという進め方を前提としているようで、その場合書類の不備等のリスクが増すということを伝えられた。行政書士法人の方に意見を求めたりしたが、結局デメリットは特になさそうでスーパーファストトラックオプションのままとした。
実際問題なかったし、もしかしたら通常の進め方だと freee 会社設立側が対応していなかったりしたかもしれない。
行政書士法人と公証役場と freee とがあり、それぞれがそれぞれのシステムの仕組み等を理解していなかったり、こちらも詳しい知識が無かったりでやきもきしたが、あまり気にせずにレールの上を進むのが吉っぽい。

書類を公証役場に郵送

公証役場からの案内に従って書類を郵送します。
といっても自分の場合以下のみでした。

  • マイナンバーカードのコピー

  • 返信用レターパック:定款認証後書類一式が届きます。

  • データ媒体が必要な場合、CD又はUSB:書類をデータであると何に使えるかよくわからず自分は送付しませんでした。

なお郵送自体もレターパックで行ったのですが、コンビニでレターパックライトを 2 つ買い、返信用レターパックは半分に折って入れました。

定款認証費の支払い

公証役場からの案内に従って定款認証費を振り込みます。

出資金の振り込み

自分の口座に出資金を振り込みます。
銀行窓口に行き「会社を作りたいから自分の口座から自分の口座にお金を出して入れたい」と伝えたら出入金の処理を実施してくれたのですが、これだと記録として誰がお金を入れたかの情報が残りませんでした。
銀行を後にしてすぐに気づき再度戻ってその旨を伝えると、出入金ではなく振り込みの処理が必要とのことで、手数料を払って振り込みを実施してもらいました。
同じ口座だと窓口での処理が必要ですが、別の口座からの振り込みであればオンラインで完結しそうです。
ちなみに窓口では身分証明書はもちろん印鑑も必要でした。ただなくてもサインを登録する方法があるらしく、最低限身分証明書があればなんとかなるようです。

銀行の窓口の方には「頑張ってね!」的なことを言っていただけた。
設立にあたって事務的な事以外のこういった言葉をくれたのは彼女だけだったのでこれが唯一のほっこりエピソード

法務局に会社設立を申請(定款認証当日の2時間前まで)

定款認証の面談を予約した当日の面談 2 時間前までに freee 会社設立から申請を行います。といってもボタンを押すだけで、忘れずに実施すれば大丈夫です。
ちなみに当日より前にボタンを押そうとした際には、当日実施することを推奨する旨のワーニングのメッセージが出ました。

なお、申請書類には事前に電子署名を行います。これも freee 会社設立上でボタンを押すだけでした。事前のリサーチでは法人設立ワンストップサービスを行う際に電子署名を行うのが特に Mac だと大変という印象を持っていましたが、これも freee 会社設立がうまく吸収してくれているようです。

オンラインで公証人と定款認証

事前に予約しておいた日時にオンラインで公証人を定款認証の面談を行います。所要時間は5分ほどで、元々出している内容についてちょこちょこ確認され、最後にマイナンバーカードと免許証をカメラ越しに見せて完了しました。

登録免許税の納付

法務局から登録免許税の納付の案内が来るので支払います。
ペイジーが利用でき、オンラインで完結しました。

法務局で登記完了(1~2日)

freee 会社設立上の記載では法人登記手続きに 2 ~ 3 週間かかると記載がありましたが、後述する軽微なやり直しがありつつも定款認証の面談の 2 日後には完了の連絡(法人番号指定通知書)が届き、法人データベース上で検索できるようになりました。

軽微なやり直し

資本金を払い込んだ証跡として銀行口座のオンラインのスクリーンショットを送ったのですが、一部情報が足りず出し直す必要がありました。
再度電子署名を行う必要があったのですが freee 会社設立の画面上それができるかわからず、かつ処理してくれていた法務局の出張所が近かったので手持ちで持っていきました。

感想

ということでステップは多いですが、基本的に案内に従えば問題なく終了するようになっているのであまり大変さは感じませんでした。
ただ全体像がよくわからないまま進んでいる不安感はあったので、この記事が同じように感じる方の役に立てばと思います。

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