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Shopify(ショッピファイ)は単なるeコマース店舗作成ツールではなかった

「打倒アマゾン!Shopifyの戦略を考えてみた」という刺激的なタイトルのポッドキャスト。すっかりヘビーユーザーとなったOff-Topicより。

<Off Topic(オフトピック)>
米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報やカルチャーまで、ゆるく深堀りしながら解説するポッドキャスト番組

私は2年弱米国に住んでいますが、確かに、ShopifyはD to C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)事業におけるデファクトスタンダード(業界標準)と言って良いと思います。

米国のマーチャント(オンライン上の販売者)は、アマゾンとShopifyを両輪で回すというのが一般的。

では、アマゾンとShopifyは、どう違うのでしょうか?簡単に説明すると、アマゾンはマーケットプレイス方式。オンライン上ののショッピングモールをイメージして頂けば良いかと思います。

各マーチャントは、アマゾンに出店/出品して商品を展示する。それを、アマゾン内の検索や広告を通じて消費者に知ってもらい、買ってもらう。アマゾンは「場代」としてマーチャントから15%を徴収。

*FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)という在庫・配送サービスも使うと更に約15%徴収。

消費者から見たメリットは明確。豊富な品揃え、信用度(クレジットカードを登録しても安心)。そして、翌日・翌々日には届けてくれる。アマゾンプライムメンバーであれば配送料無料。

対するShopifyは、eコマース店舗作成ツール。ウェブサイト制作でCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)というのがありますが、それのeコマースに特化したバージョン。

HTML等の知識がなくても簡単に制作できる。様々な決済サービスと提携しており、支払いオプションが豊富。Klaviyo(クラビヨ)と呼ばれる顧客名簿管理ソフトを始め、様々なソフトウェアや専用アプリと連携可能

私も、マーチャントとして、初めてShopify管理画面にアクセスした際、特にレクチャーを受けなくても普通に使うことができました。

ただし、あくまでeコマース店舗作成ツールなので、集客・受注・配送は自ら行う必要があります。まさに、ダイレクト・トゥ・コンシューマー。消費者と直接向き合うビジネス

使い勝手の良さと拡張性の高さが支持され、気づけば独り勝ち状態に。


というのがOff-Topicを聴くまでの理解でした。

Off-Topicを聴いて学んだこと。それは、eコマース店舗作成ツール提供を通じたサブスクリプション(月額課金)以外に、Shopifyは3つの価値提供を通じて、急拡大しているという話。

1.決済事業
2.ディスカバリー機能(店舗・ブランド発見)
3.広告事業

1.決済事業

eコマースで購入する際、特に米国では、このロゴを良く目にします。

カートから決済画面に遷移した際、この様な選択肢が表示されることが一般的。もちろん、これ以外にクレジットカードやデビットカードで支払うことも可能です。

このShop Payこそが、Shopifyが提供する決済サービス。Shopify版Pay Palと理解頂ければ良いです。

これに一度、クレジットカード情報や配送先住所等を入力して登録しておけば、次回以降は、このShop Payを選択するだけで決済が完了。

実は、このShop Payが物凄い勢いで普及しており、Shopifyツールを使っていないオンラインストアで購入する際にも使える様になりつつある。

このShop Payは、クレジットカードの様なモデルで、1回の決済ごとに数%の手数料がShopifyに入る。従って、Shop Payが普及すればするほど、決済額が増えれば増えるほど、Shopifyも潤う仕組み

月額課金モデルの場合、出展者数を増やし続ける必要がある。一方、手数料モデルは決済額が増えれば、出展者もShopifyも潤うWin-Winである。というOff-Topic宮武さんの説明は、なるほどと思いました。

直近では、売上の約1/3が月額課金収入、2/3が決済収入と、既にShopifyの主要収入源になっているそうです。

2.ディスカバリー機能

こちらはShopという2020年4月にリリースされたアプリ。

お恥ずかしながら、私は、これがShopify提供のアプリであると知らずに、一ユーザーとして使っていました。

Shopアプリを使うと「すべてのオンライン購入商品の配送状況が追跡できます」というプッシュ広告を見て、「便利そうだな」と使用開始。

これ、本当に便利で、アマゾンで購入した商品も、アマゾン以外のオンラインショップで購入した商品も一元管理が可能。

「あれ?そう言えば、あの商品まだ届いてないな」という際、いちいち購入したウェブサイトに行き、配送状況を確認するのって面倒ですよね?

そこから解放してくれる神アプリ。と思って使っていました。

今回、Off-Topicが教えてくれたのが、ShopアプリからShop Payを採用しているオンライン店舗に直接行き、ワンタッチで購入が可能であるということ。

店舗単位で登録しても良いですし、毎回、購入する商品が決まっているのであれば、商品を登録することも可能。

商品カテゴリー、ブランド名、位置情報等で検索が可能。そして、これまでに購入経験がない新しい店舗での商品も簡単に購入することができる。

消費者からすると、かなりアマゾンに近い購入体験が可能となる。ただし、アマゾンプライムは、依然として強力な武器として残りますが。

3.広告事業

上記の1.2.を通じて膨大なデータが貯まるので、これを活用して広告事業を拡大していくという話。

先日も取り上げた、従来の手法(第三者から集めた行動履歴データを基にターゲティングを行い広告配信する)が、様々な制約から困難になっているということが背景にあります。

Shopifyは第三者ではなく、自ら集めた膨大な一次情報を所有することになり、広告事業において有利になるということ。

宮武さん(Off-Topic)は、今、米国では広告事業がアグリゲーターにシフトしているという話をされていました。

アグリゲーターというのは類似のサービスを束ねることで利便性を提供するモデルですが、例としてインスタカートを挙げていました。

インスタカートは、自ら店舗を持っている訳ではなく、ウォルマートやターゲット等、最寄りの、あるいは好みの小売店から選んで購入することができるオンラインスーパーのポータルサイト

Shopifyと同様、膨大な消費者の購入データを獲得できるので、広告事業において優位となる。インスタカートは、主に中小のスーパーを対象に集客、在庫管理、配送、店舗運営等様々なサポート行うことで存在感を増しているということが下記の記事に書かれています。

さながら、オンライン店舗を束ねる盟主がShopifyであるのに対し、リアル店舗(スーパーマーケットを中心に)を束ねる盟主がインスタカート。という構図でしょうか。


アマゾン巨大帝国は、規模の経済で集客を行う一方15%の税金を徴収。

対するShopifyは、各マーチャント(オンライン店舗)のサポートに徹し、マーチャントが繫栄することで自分達も潤うという新しいエコシステムを提供。

新エコシステムを携え、Shopifyがアマゾン大帝国に挑んで行く。

この壮大なドラマの結末は、果たしてどうなるのでしょうか?

<追記(6/1)>

Shopifyのグローバルコマースをサポートするツールの解説記事。


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