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【書籍紹介】ファンをはぐくみ事業を成長させる 「コミュニティ」づくりの教科書 河原あずさ、藤田祐司 共著

2020年6月というコロナ初期に発売された「ファンをはぐくみ事業を成長させる コミュニティづくりの教科書」。今でこそ当たり前になったオンラインイベントですが、当時は、リアルからオンラインへのシフトがテーマとなっていて時代の流れを感じます。

藤田祐司氏(Peatix共同創業者)、河原あずさ氏(コミュニティ・アクセラレーター、元「東京カルチャーカルチャー」イベントコーディネーター)というイベント&コミュニティ運営のプロのお二人による共著。

東京カルチャーカルチャーは、ビーンスター代表鶴野充茂さんが主宰されていたメデコミ会10周年イベントが開催された際(2010年7月5日)、私も登壇させて頂きました。ESSE編集長のこばへんさん、戦略PRの本田哲也さん、宇多田ヒカルのマネジャー梶さん等々、懐かしい面々です。

話を書籍に戻します。

私自身がコミュニティビジネスに携わっていることもあり、答え合わせ的内容でとても参考になりました。

■心理的安全性のあるコミュニティをつくる4つの力
①共感・傾聴力
②分析・プロセス設計力
③時間・空間デザイン力
④行動・発信力

■コミュマネに必要な「コミュニティ思考」3要素
①ビジョンを行動基準にする 活動の目的を言葉にして、それを軸に行動する
②仲間と対等に接する 心理的安全性をベースに対等な人間関係を構築する
③仲間のために動く 仲間の目的のためにできることを考え実行する

先日、私が「DAOワーク Web3時代の新しい働き方」の中で提示した6要素に通底するものを感じました。

1.求心力や判断基準となるパーパス/理念がある
2.各人は自由意志で参加すること、離脱することができる
3.固定化されたレイヤーがなく、個々人が自由に活動できる
4.情報が全員にオープンになっている
5.治安及び生産性を担保する為にルールが定められており、固定化されていないレイヤーは許容する
6.こうした組織を機能させる為の中央的責任者が存在する

■マルサン・コミュニティの法則

活動に積極的に関わる「コア(マルイチ)」と、数回に1度はイベントに参加する程度の「常連(マルニ)」、そして新たな参加者の「新人(マルサン)」です。 コミュニティがほどよく活性化するのは、この3つのマルの構成比率が「1対1対1」の状態のとき。コミュニティ全体の規模が大きくなっても、「コア(マルイチ)がコミュニティの柱を担い、常連(マルニ)が場のエンジンとなり、新人(マルサン)がフレッシュなアイデアや人脈を連れてくる」ことで活力が維持されます。

■コミュニティの停滞要因

コミュニティが停滞するのは、内輪の集まりになってしまったときです。新たな参加者が入りにくくなり、結果的にコミュニティ全体が衰退します。 停滞を避けるには、コミュニティの状態を定点観測することが不可欠です。定期的にアンケートを実施してコミュニティ参加者の意見を集め、イベントやコンテンツ配信の内容を修正しましょう。

これら、とても肌感覚にフィットします。

以下のような実用的なtipsはとても参考になり、今後、活用できそうです。

有料イベントと無料イベントの当日の参加率を比べると、事前に支払いを終えた有料イベントの場合、参加率は85%。これに対して無料イベントは59%にとどまりました。

休憩時間は5分ではなく、10分〜15分取りましょう。休憩時間に入る際に、イベント主催者が「登壇者に話しかけましょう」「参加者同士で名刺交換しましょう」と交流を促せば、より会話がしやすくなります。

懇親会では「パックマンルール」が有効です。 これは懇親会で人と話すとき、必ずほかの人が輪に入れるようにスペースを空けておく決まりのこと。

一方、オンラインツールはFacebookやYouTubeライブ等が推奨されており、いまや定番となりつつあるディスコードには触れられておりません。ここに3年半の時の流れを感じます。

こうしたツール以外は、ほぼ今でも通用する内容なので、コミュニティつくりに興味のある方、あるいは私の様に答え合わせ・チェックリスト的に活用したい方にお薦めです。

<関連情報>

■「いい対談を生み出す"邪道な王道"ファシリテーション術」

■Voicy対談「自分らしいコミュニティの作り方」川原卓巳 vs 河原あずさ

本書と共にAmazonさんが、必ずお薦めしてくるのが「コミュニティマーケティング」小島英揮箸。

著者の小島氏は、AWS(Amazon Web Service)の日本法人第1号社員。予算も人的リソースもない中、Saasの世界で普及しつつあったユーザーコミュニティに着目し、それをAWS普及のメイン戦略に据えた。当時、教本もない中、自ら仮説を立て、行動し、修正を重ねることで磨き上げた本物のコミュニティ論。2019年発売で、デジタル環境は今と異なる点も多いですが、コミュニティ育成手法としては、今でもバリバリに通用する内容です。

<追記(1/11)>

この2年間、「ひと妻DAO」代表としてさ、まざまな実証実験を通して蓄えたコミュニティ運営の知見。その集大成となる超有料級記事が、和泉(小林)すみれさんより公開されましたので、ご紹介いたします。

既にコミュニティー事業に携わっている方のみならず、コミュニティーマーケティングを検討中のマーケター必読の内容です。

<追記(1/21)>

「コミュニティづくりの教科書」の共著者、藤田祐司さんが「コミュニティー本お薦め10選」を公開されていたので、ご紹介致します。

紹介されていた中で、私も読んでみたいと思った書籍をご紹介します。

社会問題は、「社会の問題」という性質上、複雑性からのがれられない。一人の英雄、キレのいい政策、莫大な資金、最新のテクノロジーなどで一発解決することは不可能だ。だからこそ多様なアクター間のコラボレーションが必要となる。「つながりと流れ」を共有する人たちから構成されるコミュニティはそのコラボレーションの土壌であり、器であり、原動力になりうる。社会課題の現場としてのコミュニティと、その解決のためのリソースとしてのコミュニティという二つの側面を解説。

Google Cloudのユーザーコミュニティ「Jagu’e’r(ジャガー)」を立ち上げた著書が、ユーザーコミュニティと企業内コミュニティについて、様々な企業の事例を紹介しつつ書かれた1冊。成功事例だけでなくコミュニティ運営で陥りがちな問題やその解決方法など、どういうステップを踏んでいけばよいかが案内されているので、運営で困ってる人は必読。

「営業自粛でも前年比150%を達成したレストラン」「深夜営業NGでも売上を維持したバー」「取引先を次々とファンにしたBtoB企業」など豊富な事例をもとに、新しい時代のマーケティングの常識を説くとともに、その具体的な進め方を説いていく。小売・サービス業はもちろん、メーカーやBtoB企業にも役立つ内容となっている。「顧客消滅」という非常時にこそ、「一見よりもファン作り」「フローからストックへ」といった小阪流マーケティングの真価がさく裂。


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