【書籍紹介】運動脳 アンデシュ・ハンセン箸
こちらの書籍、随分前に読了していたのですが、まとめるのに時間がかかってしまいました。
著者のアンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)氏は、スウェーデン出身の精神科医。カロリンスカ医科大学にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修め、現在は医師として働きながら執筆活動を行っている方で、「スマホ脳」の著者としても有名。
本書を要約すると、私たちの身体や脳は狩猟採集で生活していた原始人と同じ。身体も脳も動く様に設計されているので、動かなければ不調を起こす。便利な道具満載の現代人は運動不足となり、様々な現代病を引き起こしている。運動することで、これらの悩みの大半は解決するというもの。
具体的に、運動(20~30分程度の有酸素運動)を行うことで、以下のような効果が得られるそうです。
集中力が増す
気持ちが晴れやかになる
不安やストレスが減る
記憶力が向上する
創造性が増す
知能が高まる
ここまでであれば、「当たり前だよね」「そんなこと知ってるよ」と考えてしまいがち。本書では、精神科医であり専門家である著者が、運動を行うことで、どの様な報酬物質が、どの様なメカニズムで分泌され、どの様な効果が得られるのかが丁寧に解説されています。
例えば、ADHDの最良の治療薬は運動することであるという話。ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は近年患者数が急増しており、米国の子供の12%程度がADHDと診断されているとのこと。
具体的に「注意散漫」「衝動性」「多動性」の3つの問題を抱えており、日常生活に支障を来すとADHDと診断される。
ADHDと密接にかかわっているのが、脳内快楽物質として知られるドーパミン。原始人は動いたり、走ったりすることが生存に欠かせないことであった為、動くことで報酬としてドーパミンが分泌され快感が得られる。
具体的には、脳細胞にある受容体にドーパミンが取り込まれることで、脳細胞が反応して快感が得られるという仕組み。
ところが、ADHDの特性を持つ人は報酬中枢におけるドーパミンの受容体が少ない。その為、報酬系がうまく働かず、快感を得る為には、よりたくさん動いて報酬を得る必要がある。結果、多動や注意散漫が引き起こされる。
ADHD治療薬によりドーパミンの分泌量を増やすことは可能であるが、人により副作用をもたらす。副作用のない最良の治療薬は運動すること。運動によりドーパミンが増えると、注意力と報酬系のシステムがうまく調整される。報酬系と前頭葉、2つの「集中力を左右する部位」に一気にアプローチが可能となる。
こんな感じで専門性を駆使した説明が繰り広げられます。
本書で初めて知ったのがBDNF(脳由来神経栄養因子)。脳が作り出すタンパク質で、脳細胞の新生や記憶力、全般的な健康など、脳のさまざまな働きを促進する作用があり、「脳内最強物質」「脳の天然肥料」「奇跡の物質」等、様々な呼び方がなされ注目を浴びています。
具体的には、BDNFには下記の効果があるそうです。
脳細胞がほかの物質によって傷ついたり死んだりしないように保護
新たに生まれた細胞を助け、初期段階にある細胞の生存や成長を促す
脳の細胞間のつながりを強化し、学習や記憶力を高める
脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる
また、うつ病の人はBDNFの分泌量が低く、抗うつ剤を服用することでBDNFの濃度が高まる。うつ状態から回復して精神状態が安定するにつれ、BDNFの分泌量も増加するそうです。
そして、BDNFの生成を促すのに最も効果的なのが運動すること。
運動は健康づくりに欠かせない。今更、言われなくてもという話ではありますが、本書を読むと、今すぐにでもジョギングしなければという衝動に駆られること請け合いです。
最後に「本要約チャネル」に掲載されている動画も併せてご紹介しておきます。
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