感想文『男との付き合い方がわからない』水谷緑

『男との付き合い方がわからない』




Twitterで紹介をされていて読んでみたら、非常にえぐられたのだ。あまりにもえぐられたので新鮮なうちに感想文を書こうと思うのだ。

この本はコミックエッセイ、漫画の実体験漫画なのだ。よくある「彼氏が作れない、結婚できない私」の婚活体験談マンガなのかな?と思って手を取ってしまったら深く深くえぐられることになるので要注意なのだ。

幼少期から男との付き合い方、つまり接し方。どう話せばいいか、話しかけられたことにどう反応すればいいのか。心無い言葉にどう感じて、どう折り合いをつけたらいいのかなどなど、男にまつわる全ての出来事に対して作者の水谷緑さんはどうしていいのか「わからなかった」のだ。

そして冒頭、30歳の水谷さんは男を恐怖していたのだ。「男に見られるのが怖い」。未知の向かいからこちらに向かってくる若い男たちから、必死で視界に入らぬようにと脇道に身を隠すのだ。視界に入らなくて済んだ、よかった。

「仕事で接するのは平気」
「男と付き合える、でも平常心ではいられない。ダメな自分を見られる恐怖から少しも気が抜けない」

どうしても怖い、好意がある男にも心が開けない、そういう状況から始まるのだ。


そんな状況なのにあっさりと「30歳になったから婚活をはじめた」で、地獄のような男と「かみ合わない」婚活がはじまるのだ。苦しい。


水谷さんの子供のころから見てきた男、接してきた男との過去エピソードの数々は、正直に言うと良くわかる「女の子はかわいくないといけない」を突き付けられるやつなのだ。残酷なのだな。「かわいくないと選ばれない」を小学生あたりで認識する女の子と比べて、同時期の男はバカだなと思うのだ。あまり何にも考えてない無邪気な物なのだ。すくなくとも元イさんだけは何にも考えてなかったのだ。覚えたてのオナニーに夢中なまま、多少恋愛にあこがれつつ遠い物として小学校は卒業したのだ。あんまり他人は見てなかったのだな。

もちろん後年には、怒涛の追い上げで世間、社会から鬼詰めされるのだが。

高校、大学、社会人になっても「男社会」の中で、男に対する恐怖心を募らせていく様は、「男も知っておいてもらったほうが良い」というやつなのだ。男の加害性について語る時、男を悪者扱いするのか!という話になりがちで、すぐもめる事になるのがそういう話ではないのだ。

悪いことをする男がいて、若い女性が被害にあうという事があるあるだ、という話なのだ。
(同様に、元イさんは悪いことをする女がいて、男性が被害にあうという事もある話は書いていきたいのだ)

非モテを克服する、女性にアプローチをするために役に立つことは?という視点から考えると「相手のことを知る」「相手の立場になって考える」「相手の考え方や視点を知る」というのはとても大事なのだ。まず「自分がどう思うか」ではなく「知る事」なのだ。


婚活エピソードには「男が怖い」「どう接すればいいかわからない」ままで突入するから地獄度は高いのだ。


「女性は清楚で家庭的な方が人気がある」
だから
「好きな服は着ない」
「家庭的アピール」
「三回褒める」
「ニコニコ笑顔で」

平均で30名と会って半年で相手を決める人が多い

マニュアルに沿った動きを決めていくのだ。しかし噛み合わない。


しかしこの時点でもうかなり浮き彫りになっているのが「男の生きづらさ」なのだ。

「シャンディガフを知らない」
「友だちがいない」
「大企業に勤めているのにクビになるかもと悲観的すぎる」
「幸せを感じる事がほとんどない。6歳の頃が一番幸せだった」

そしてことごとく会話がかみ合わないのだ。

普通のコミックエッセイだと「男がダメだ」という断罪で終わりがちなのだが、元イさんのここでの感想は「無惨」なのだ。悲しみなのだな。不器用な女の前に不器用な男がいて、分かり合えなかった、関係できなかった、つながりを作れなかったのだ。お互いに悪人ではないのに。かみあわないのだ。

そして水谷さんは疲弊しきって婚活をやめるのだ。後に乳がんが発覚するのだ。32歳。2年間も婚活してたのだな。


ここから章が変わるのだ。第二章の題は「男の生きづらさが知りたい」。


精神科の看護師さんを取材している時に「ひきこもり」「孤独死」「自殺」の男性の割合が「ひきこもり」80%「孤独死」80%「自殺」70%という事を知るのだ。

そこから水谷さんの「男の生きづらさ」を知る旅がはじまるのだ。取材をしてまわるのだな。


もうこの時点で「婚活エッセイコミック」の範疇からはみ出しているのだ。


男の生きづらさに関しての水谷さんの見て聞いて来た事、その考察はぜひ実際に読んでみてほしいのだ。

そのうち咀嚼して自分の中でまとめてnoteに書くかもしれないのだ。


男の生きづらさについて考察を深めたのちに、水谷さんはひょんなきっかけから結婚することになるのだ。ここからは怒涛の展開なのだ。まるで別の本を読んでいるような印象になるほど、テイストが変わるのだが、まさに『男との付き合い方がわからない』というタイトル通りの展開なのだ。

婚活の参考にはならないのだ。すごく無様で不器用でみっともないラブストーリーなのだ。

正直に言うと自分の事を思い出したのだ。何もかもスマートにいかない、人に言いづらい出会い方をして、「立派な大人の男っぽいふるまい」を背伸びしてやっていたのだが、全くそれでは上手くいかなかったのだ。

この水谷さんと旦那さんとのやり取りと似たような、不器用すぎるぎこちない動きしか元イさんもできなかったのだ。詳細は伏すのだ。


そして「結婚しました、めでたしめでたし」ではないのだ、人生は。結婚してみてすごくよくわかるやり取りが目白押しなのだ。むしろこれが乗り越えられなくてとか、これがやれなくて離婚した人たちも山ほどいるように感じるのだ。

そういった結婚のリアルがわかる、いい本なのだ。

男と女は、それ以前に人と人とは、別の惑星に住んでいるんじゃないかと思うほどに、前提条件と育ってきた環境がちがう、絶望的に分かり合えない、互いに想像もできない生き物なんだと思うのだ。

だからこそ、対話しかないのだ。お互いに何もかもわからない、何も知らない、わかったふりをしない同士として、対話して理解しあおう、自分を知ってもらおう、そして、一緒にいるためのすり合わせていこう、という気持ちが必要なんだと思うのだ。

勢いに任せて書いたのだ。とりとめがないのだが以上なのだ。

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