境界戦機がつまんないがそれでいい話
煽るようなタイトルって好きじゃないんですよね(自己矛盾)
アニメ「境界戦機」がつまんない
2021年12月現在放送中のSFロボットアニメ、「境界戦機」。
包み隠さず自分の意見を言えば、この作品、クソつまんないのだ。クソつまんないどころか、商業的に露骨すぎて正直あまりいい印象がないのだ。そう感じる理由を説明させていただこうと思う。
SUNRISE BEYONDとBANDAI SPIRITS
サンライズビヨンドとは、言わずと知れたアニメ制作会社サンライズの子会社として、2019年よりアニメ制作を行っている会社で、本体となるサンライズとは別にアニメを制作している。
バンダイスピリッツもわざわざ説明するようなものでもなく、言わずと知れた一大おもちゃメーカー。サンライズブランドもバンダイブランドももれなくバンダイナムコホールディングスグループである。
バンダイとサンライズ、そしてロボットアニメと言えば、やはり機動戦士ガンダムシリーズであろう。サンライズがアニメを制作し、関連商品として知らない人はいないガンプラをバンダイが売る。この構図はオタクでなくとも知っている。
本作「境界戦機」は、このガンダムコンビが新たに始めた新ロボットアニメシリーズなのだ。
2021年はロボットアニメ戦国時代
本年は本当にロボットものが多かった。3月には8年の時を経て新劇場版エヴァンゲリオンが完結。(監督的にはロボットアニメらしいのでロボットアニメということで・・・)
今期は00年代の名作ロボットものエロゲ、マブラヴオルタネィティブのアニメ化、人気ラノベが原作のエイティシックス、カボチャ閃光のハサウェイ第一弾の公開などなど。とにかく近年には珍しくロボットアニメが豊作だった。
しかし本作は、そんなロボットアニメたちの中でもちょっと異質だった。Amazonはじめ、BANDAIによるプラモデルのマーケティングが異常なほど行われていた。
(ちょっと話が脱線するのだが、閃光のハサウェイ公開に前後してガンプラ転売問題や品薄が熱くなっていた6~7月の時期に、正体不明のアニメの正体不明のプラモデルが大量に販促されていたので、キャラクタープラモデル界隈はかなり不満がたまっていた気がする。俺はたまっていた。)
秋より放送予定の、正体不明のロボアニメシリーズの宣伝が、バンダイより全力で行われている。当時は売れ筋コンテンツのガンプラが、閃光のハサウェイ公開に合わせてアツい時期なのに、ガンプラそっちのけで結構な宣伝をしていて界隈は割と困惑していた。
「なんだこのロボット?」
この作品のテーマはなにか?
どんな作品にも、テーマは存在すると思う。テーマじゃなくともキーワードとかあると思う。
これを書いている厄介オタクの好きなシリーズで例えると、フルメタルパニックは「ボーイミーツガールとロボット」、初代ガンダムは「群像劇かつ復讐劇」とか。すごい曲解するとシドニアの騎士は「人外ハーレム」と言ってもいいと思う(強い思想)。
じゃあ本作ってなにがテーマか?って言われると、これが全然わかんないのだ。
物語は完結してからこそすべてを伝えられる、とは思うから、まだ折り返しに到達していない本作のテーマを語るのは筋違いかもしれない。
しかしそれでも、最新話まで見ても何一つわかんないのだ。
強いてあげるとすればプラモデルリアルな世界観だろうか。マジで現状、プラモデルの販促アニメ以上のテーマが見いだせていない。
世界観が二番煎じ
公式を引用するとズバリこうである。
コードギアスか。
日本が隷属国になるロボットアニメはそれはもうコードギアスなんよ。
日本を取り戻すのは安倍晋三か黒の騎士団なんよ。
・・・日本分割系の作品はあげればきりがないが、きりがないということはメジャーな題材ということなので飲み込もう。やっかいなオタクにはなりたくない。
「機械好きの少年」、「自律思考型AI」、要素が渋滞しとる。
有名どころでも前者はガンダムのアムロ、ナディアのジャンが出てくるし、AIロボットとのバディものとしての後者は翠星のガルガンティアとか、フルメタルパニックとか、楽園追放とかとかとか
二番煎じ自体は悪いこととは全くもって思わない。だが、こうもメジャーな要素ばかりを集めて世界観を作れるのか、と思ってしまった。だって新規性というか、オリジナルな要素が一個もないよ!?
ロボットは全部かっこいいのに
ロボットのデザインは全部かっこいい。特に主人公機であるメイレスシリーズ。工業デザイナー?がデザインしただけあって、実在性が高いというか、機械としての説得力が高いのだ。(一応自分は工学畑の人間なので、多少は分かるということにしててほしい。)
なによりもシンプルな見た目が一番いい。汎用性のある兵器がゴテゴテ複雑な見た目していたら、本作の売りである「リアルな世界観」が台無しになる。かっこいいけどね。
トリコロールカラーだとか、無意味そうな突起とか気にしてはいけない。他のモブ機体との差別化のためとか色々あるだろうし、そこは気にならない。気にしていたら何も見れない。
しかし一つ、個人的にめちゃくちゃ残念に感じる要素がある。
各陣営によってデザイナーを分けたせいで、設定の整合がとれておらず、ロボット兵器の実在感が全くなくなっているのだ。
まず主役機のメイレスシリーズ。これは本作の顔なのでコイツを基準に考えようと思う。
オセアニア連合軍のバンイップ・ブーメラン。
「二足歩行ではありつつ、人型から離れた形状を取ることで、複雑な機構を持たず、なおかつ機動力も確保することを目指した機体。」らしい。
ここでメイレスシリーズと見比べてほしいが、足の構造はメイレスシリーズとトントンの簡単さである。そうなるとわざわざ人型から離した意味がなさそうに思える。
というか、人型兵器は仕組みとして複雑と言い切っている。ロボットアニメでそれはだめだろ。
続いてアジア軍のニュウレン。
「大量生産できるよう、簡潔かつ単純な機構を持つように設計されたAMAIM。」らしい。
メイレスシリーズのほうが簡潔かつ単純な作りに見えるのは自分だけだろうか。
続いて北米同盟のブレイディハウンド。
「上半身に大きな推進機を搭載、二足歩行兵器が苦手な高速移動が可能となっていて、他のAMAIMよりも格段に優れた機動力を持つ。バランスの取れた人型の形状によって、様々な作戦行動に対応出来るのも大きな特長。」
正直自分には「バランスの取れた人型の形状」には見えない。頭から腕が生えているか、頭が埋まっているか知らないが、これは明らかにジャミラだ。ニュウレンのほうが人型に見える。ニュウレンどころかメイレスのほうが人型に見える。
最後に大ユーラシア連邦軍のソボーテジアマン。
「全体に武骨なデザインとなっており、近接戦闘用兵器はナタが特徴。」
日本語おかしくないか?というか感想になってないか?
・・・といった具合で、ぱっと見でも設定の矛盾がすごい。デザインが先行して設定を作ったのか、設定を先行してデザインを発注したのかは分からないが、とにかく設定とデザインの整合がとれていない。
具体的に突っ込んでいくと、1話終盤でケンブがバンイップ・ブーメラン並のジャンプを決めていたが、そうなると跳躍による機動性を得るためにあの形状になったバンイップ・ブーメランの形状の説得力が完全になくなる。
ニュウレンよりメイレスのほうが簡単な形状をしているのは何度でも言ってやりたいし、ニュウレンやブレイディハウンドのような複雑な形状の機体が量産できるのなら、レジスタンス用の簡易的な構造であると言い訳をしても、メイレスがあんな単純な作りをしているのに強い機体である説得力が完全になくなってしまう。
だってあんなにシンプルでイイデザインしてる機体が強いならもう複雑な仕組みの機体いらないじゃんね。
なんでこいつらは戦ってるんだ?情緒不安定すぎるのでは?
正直なんでレジスタンスたちが戦っているのかよくわからない。今のところ兵器持って移動キャンプしている集団である。
いちいち他作品を引き合いに出して卑下にするのはよくないと思っているが、それでもコードギアスのレジスタンスのほうが幾何かリアリティがあった。
復讐に燃えているみたいなオーラがガシン以外にほとんどない。むしろそんなガシンを諫める大人たちしかいない。なんでレジスタンスやってんだ。
そのガシンも最近は少し丸い。
肝心の主人公、アモウも戦う理由はあるにしても、けっこう成り行きで戦っている感じがある。人が好いだけで片付けるのは少し無理がある気がする。まあ彼は居場所が本当になくなっているので仕方ないかもしれない。そう思うと、レジスタンスとは住処を追いやられた人たちの寄り合い所帯といったニュアンスの組織といった方がいいのかもしれない。スポンサーもつけてけっこうガチガチ武装してるけど。
一番の問題はシオンである。
マジで戦う理由がよくわからない。今の日本をよしとせず、行動する理由はあることにはあるが、大人を差し置き新型の機動兵器に乗って戦う必要がまるで分からない。というか初登場時に号泣した理由が本当に分からなくて怖い。演出上その必要があったとも思えない。その後情緒不安定な素振りも見せないから、本当に初登場時に号泣した理由が分からなさすぎて怖い。
かわいいんだけど、オープニングの絵柄からかけ離れた顔を描かれる筆頭でもあるし。マジで不遇な扱いというかよくわからな過ぎて怖い。誰か教えてほしい。
そもそもなんでロボットである必要があるんだ
そんなこと言い出したら意味がないだろ、と言われるとまあごもっともなんですが、ロボットアニメ界隈において、戦争兵器としてロボットが使われるのに「おもちゃの販促」以外の理由がいらない時期なんて40年前に終わっているんですよ。
ましてや「リアルな世界観」を売りにしている作品なのに、なぜ現実世界の延長にある世界のお話でロボット兵器が必要なのか、10話ちょっと放送していて何も語られてないのは正直駄目でしょう。フルメタルパニックですら、ボーイミーツガール編終わった時点でロボット兵器の違和感を臭わせてましたからね。
というか全体的に、詰めが甘い部分が散見される。特にこの作品を熱烈に追っているわけでもなければ期待している訳でもなく、見始め当初は謎の全力マーケティング以外に悪印象もなかったので、毎週更新される本編を見るだけの自分だが、それでもこんな記事を書いちゃうぐらいにはちょっと荒い作りが目立つのだ。
でもそれでいいんじゃないか説
ここまで散々こき下ろしておきながら、自分は「境界戦機」はこのままでいいんじゃないかと考えている。というよりむしろ、本作は目の肥えた客層(オタク共)を満足させるために存在している作品ではない、と考えている。以下がその仮説だ。
1.バンダイの独自コンテンツ展開を見据えた実験作・社員教育作説
正直一番あると思う。
バンダイおよびサンライズは、長い間ガンダムシリーズを主力として、ロボットアニメ業界で地位を築いてきた。しかしガンダム一本であったわけではなく、~00年代までは勇者シリーズとか、よくある漢字+カタカナなロボットアニメたちとか、~10年代まではケロロ軍曹等もいた。
しかし、10年代以降、ガンダムビルドシリーズが作られたことで長く続いた「ガンダム+準主力作品」体制が崩壊。ビルドシリーズは、作品としてはかなり別物なのに、下地として共有する世界観が同じせいでガンダムシリーズの一部であることから逃れられない。
そのビルドシリーズも、第一作の放映から10年が迫ろうとしており、さすがに寿命が来ている。よってバンダイとサンライズは、ビルドシリーズの後継となる「ガンダムの2番手コンテンツ」を作る必要に迫られた、という説だ。
本作は特にロボットのデザインに実験的要素が多分に盛り込まれているのも、ガンダム以外のコンテンツ開発力を養うため、と考えればおそらく自然だろう。
2.ロボットアニメの門戸を広げ、次世代の顧客を取り入れるための作品説
10年代はダンボール戦機とビルドシリーズがその役目を果たしてきた、若年層顧客の獲得を目指す作品であろう、という説。
仮面ライダーやウルトラマンなどの特撮は、子供向けなのに子供だましをしないことから一定の地位を築き、今も尚子供たちからの支持が厚い。
本作で目立つ一部の荒い作りと対照的な、リアルを目指した世界観設定の・・・こう・・・矛盾のような部分が、なんかこう、すごい「平成仮面ライダー」っぽく感じるのだ。実際長期シリーズっぽいし。
3.税金対策説
最近のバンダイはとことん売れている。ので、最近ニッチな機体をガンプラ化していたり、ガールガンレディとかいうおもちゃ屋さんの肥やしにしかなっていないシリーズをドラマ込みで作っていたりするのは税金対策なんじゃないか、とは界隈の一部で言われている。実際ガールガンレディも本作も、脚本や商品展開手法はかなり実験的なものとなっている。
4.本当にプラモデルが売れればいいので本当にただの販促アニメ説
足りていない生産力を補うために手っ取り早く儲ける必要がある。のかも知れない。
以上が、なんで境界戦機はつまんないと感じるかの理由と、それでいいんじゃないかと感じるかについての理由でした。
正直まだ放送中の何クールやるかもわかんないアニメを評するというのはおこがましいと思いますが、見ててしんどいことには変わりないので、ここらで所感をまとめておいて視聴を辞め、後日盛り上がればまた見ようかなと思う次第です。
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