LONESOMEモトノヒー

雑文ライター。音楽セレクター。NLPプラクティショナー。

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最近の記事

短編小説03◆誰がためのリヴィングデッド

 「気をつけてね」  母が声を掛けたのはペットのラッピー。見た目は柴犬のような昔の日本犬そのものだけど、彼は犬型のAI搭載ロボット。  寝たきりだったお爺ちゃんがこうして毎日散歩に出られるのは、腰に装着しているコルセット型の歩行補助ロボットと頭に埋め込まれたチップでラッピーと連携が取れているおかげだ。ちょっとぎこちない歩き方ではあるけれど、町に出ればそんなお年寄りで溢れている。これが、僕が物心ついてから普通に見かける日常の風景だ。  『LITA リータ』と呼ばれる頭に埋め込ま

    • 小説の種03◆オレとアイツのRosalita

       ネブラスカ、ボーン・イン・ザ・USAのリリースとボス初来日までの間に成人していたワケだが。その間、その後、まぁ色々あった。創刊されたばかりだったスイッチの編集部の門を叩いたり(青山の小さな雑居ビルの一室だった)、荻窪にある老舗魚屋が初めてデパートに出店するオープニングスタッフに抜擢されたり。  代々木オリンピックブールでのボスのライヴ後、某大学の二部に通うM田とは疎遠になっていた。仕事がオフのある日。パチンコ帰りに地元を歩いているとシルバーの箱スカが、ゆっくりと横につけてき

      • 小説の種02◆雨の匂い

        コイン・パーキングを出て、通りを歩き出した途端、雨の匂いがした。手のひらを上に向け、空を見上げる。脚本のト書きを忠実に。苦笑したくなるほど臭い演技。とんだ大根役者だな。 「これでいいかい?」  俯瞰する空の眼に意識を向けないようにピンマイクに呟く。 「続けてくれ」  イヤホンに指示。 このオープニングカットの後、オレは死ぬ。ストーリーの全貌は回想に託され、壮絶な死というクライマックスを迎える。 ヒールが床を叩く音。できる女と持てはやされるアラサー

        • 松任谷由実 AOR tracks Vol.2

          1) Good-bye Goes by 2) Misty China Town 3) 木枯らしのダイアリー 4) 夕闇をひとり 5) この愛にふりむいて 6) BLIZZARD 7) 私らしく 8)愛は... I can't wait for you,anymore 9) ビュッフェにて 10) ノーサイド 11) 恋の苦さとため息と 12) 霧雨で見えない 13) 大連慕情  selected by MOTO @sevensea0126 このプ

        短編小説03◆誰がためのリヴィングデッド

          松任谷由実 AOR tracks Vol.1

          1) 届かないセレナーデ 2) 街角のペシミスト 3) 消息 4) 心のまま 5) ようこそ輝く時間へ 6) 灼けたアイドル 7) 夕涼み 8) SATUDAY NIGHT ZOMBIES 9) 78 10) TROPIC OF CAPRICORN 11) 影になって 12) 5cmの向う岸 13) Autumn Park selected by MOTO @sevensea0126 Enter 送信済み

          松任谷由実 AOR tracks Vol.1

          短編小説02◆あの夜に見た未来

           店のウィンドーに映る自分の姿は、逆光で黒子のように見えた。その後ろには、鮮やかな色を纏った人々。まるでスクリーンの中の別世界のように幸せそうに映る。 孤独がじわじわと悪寒のように全身に広がって行く。おかげで、これから向かう場所への覚悟ができた。もう迷うこともない。しかし、こんな時なのに。いや、こんな時だから、なのか。ふと思い出していたのは…。  知り合いのクラブイベントで幼馴染みの真世(まよ)を見つけた。知らない男の膝の上で無邪気にはしゃいでいた。オレと目を合わせた途端。

          短編小説02◆あの夜に見た未来

          短編小説01◆おおまがとき

           智(さとし)が母に会ったのは、母、さゆりの内に結晶する。それよりもずっとずっと遥か遠い記憶のようだった。  真夏の夕暮れどき。大好きなカナヘビが石垣の隙間から尻尾を出しているのを見つけた。家に帰る時間をとっくに過ぎていたけれど。あんな太さのヤツにはこれまで出会ったことがなかった。仕留めれば、間違いなく最高記録になる。友だちに自慢できる。もしかしたら新聞に載るかもしれない。ありとあらゆる欲望が噴き出した。親に怒られる心配なんて消え去って、ただただ「捕まえたい」と気が昂ってい

          短編小説01◆おおまがとき

          小説の種01◆鬼ばばぁ

           鬼ばばぁだった。まさき君のお母さんは、顔面の半分がずる剥けた息子と玄関先に佇む僕を見て。「あ」と言った後。「いやああああああ」と悲鳴を上げると僕の髪の毛を掴んで狭い玄関の中に引きずり込んだ。まさき君は、へらへら笑い出して気ちがいになってしまったみたいだった。  鬼ばばぁは、僕を小脇に抱え階段で二階に上がり、僕の両手両足をおんぶ紐で要領よく縛り上げると押し入れの中にぶん投げ、閉じ込めた。  まさき君の手首がよく赤くなっていたのは、そういうことか。と吞気に考えていた。しばらくす

          小説の種01◆鬼ばばぁ