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効率的市場仮説をわかりやすく解説【投資理論の基礎】

個別株投資を行う上で重要となるのが、市場平均に勝てるかどうかです。

市場平均に勝てないのであれば、おとなしくインデックス投資をしていた方が利益につながるので、個別株を分析する時間は無駄ということになってしまいます。

ちなみに、個別株投資を真っ向から否定するものとして、「効率的市場仮説」というものがあります。単語を目にすることはわかるのですが、イマイチ内容を把握していない方もいらっしゃると思いますので、簡単に解説をしていきます。


ランダムウォーク理論

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まず効率的市場仮説の前提知識となる、ランダムウォーク理論についてです。

ランダムウォーク理論とは、株価は株取引をしている買う人と売る人の取引結果によって決まるので、売りと買いが均衡した価格となる。

そのため、今の価格から上がるか下がるかは、50%の確率でランダムに動くため、株価を事前に予測することはできないという考え方です。

この考え方が効率的市場仮説のベースとなる理論になります。


効率的市場仮説

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経済学者のユージン・ファーマが提唱したもので、利用可能である情報は瞬時に株価に織り込まれるため、継続して過剰なリターンを上げ続けることはできないという仮説です。

簡単に説明すると、株価に影響する良いニュースがあっても、全世界の人が株を一斉に買ったり売ったりすることで、一瞬のうちに需要と供給のバランスが取れた価格にすぐさま織り込まれてしまいます。

そのため、株価は常に正しい状態であり、今後の株価は上がるか下がるかがランダムになるので、株価の予測により利益を出すことはできないという考え方です。

もちろん、市場が完全に効率的になるには条件がありまして、

・情報の流通コストがかからない
・取引コストがかからない
・投資家は常に合理的な行動をする

という前提が必要なので、完全に満たした状態で検証するというのは不可能といって良いでしょう。(だから仮説となっています)

市場がどれほど効率的であるかについては、次の3種類に分けられます。

①ウィーク型効率性
②セミストロング型効率性
③ストロング型効率性

①ウィーク型効率性

ウィーク型は、過去の価格情報は全て株価に織り込まれるため、価格情報から今後の株価を予測することはできないという効率性のことです。つまり、テクニカル分析では利益がだせないということになります。

現在、上昇中の株はその後も続伸しやすい傾向があるモメンタム効果など、価格情報が今後の株価を予想するのに統計的に有意だという研究結果もあるため、一部のテクニカル分析は機能しているといわれています。

しかしながら、ほとんどのテクニカル分析は効果が実証されていないため、ウィーク型には届かないものの、近い効率性があるのと考えられます。


②セミストロング型効率性

セミストロング型は。価格情報を含む新しい公開情報があっても、すぐさま株価に織り込まれるため、価格情報や企業の業績や財務情報などを分析しても今後の株価を予想できないとう効率性のことです。つまり、クニカル分析とファンダメンタルズの両方で利益がだせないということになります。

現在、決算発表などのサプライズも次の日にはすぐ織り込まれるようになってきていますが、バリュー、サイズ、収益性、クオリティなどのファクターは、統計的に有意だという研究結果があり、ファンダメンタル分析も機能しているため、セミストロング型までは効率化されていないように思います。


③ストロング型効率性

ストロング型は、株価は公開情報以外のインサイダーなどの内部情報も全て織り込んでいるため、いかなる人も確率のばらつき以上の過剰利益が出せないという効率性のことです。

そもそも内部情報を含めた全ての情報が瞬時に伝わることはないので、そこまで効率的だということはないでしょう。


市場が効率的なら個別株を買う必要はない?

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インターネットの普及により、あらゆる情報が全世界に対して瞬時に伝達されるため、市場はどんどん効率化しているといわれています。

既にかなりのレベルまで市場は効率化されているため、低コストで市場平均となるインデックス投資をした方が良いという考えを持つ人たちも多いです。

インデックス投資を支持している代表的な人としては、

バートン・マルキール
プリンストン大学教授の経済学者。
代表的な著書:「ウォール街のランダムウォーカー」

チャールズ・エリス
投資コンサルタントで全米公認証券アナリスト協会会長を歴任。
代表的な著書:「敗者のゲーム」

ジョン・C・ボーグル
世界的に有名なバンガード社の創業者で、はじめて個人投資家向けのインデックスファンドを設立。
代表的な著書:「インデックス投資は勝者のゲーム」など

など、そうそうたるメンバーがインデックス投資を行うべきだという主張をしています。


実際のところ、米国の2007年までの調査では、年間成績では6割、10年では7割、20年では8割のマネージャーが市場平均(インデックスファンド)に負けています。

チャールズ・エリスは、「アクティブ運用の手数料などのコストや、大型取引の市場インパクトなどを差し引けば、運用機関の成績は今後とも市場平均を下回るだろう」との見解を述べています。

いかに、アクティブ運用で超過リターンを上げるのが難しいかが分かりますね。


効率的市場仮説への反論

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現在の株式市場は、概ね効率的であるが、一部非効率な部分は存在しているという見方が有力です。

つまり、安定して超過リターンを得るのは難しいが、株価は規則的な動きをする部分があり、それを利用する余地は残っているということですね。

効率的ではないという理由としては、

・人間は常に合理的に判断することはできない
 (行動バイアスによるミスプライスの存在)
・ランダムでは説明できないアノマリーが多数観測されている
 (バリュー、サイズ、モメンタム)
・株価は上昇よりも下落スピードの方が速い傾向が確認されている
・株価の動きは正規分布ではなくべき分布に近い
・取引コストやショート禁止などの制約による裁定取引の限界

などの反論があります。

人間は感情的に取引することがあるので、ミスプライスを起こす場合がある。また、運用上の制限によりミスプライスを見つけても完全に修正できない場合があり、非効率性は残ってしまうという見方が強いようです。


まとめ

効率的市場仮説には、それぞれ効率化のレベルがあり、

①ウィーク型
⇒テクニカル分析が無意味

②セミストロング型
⇒テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析が無意味

③ストロング型
⇒インサイダーを含む全ての分析が無意味

であることをご紹介しました。

これらの効率性を見る限り、経済学者の中では、

「インサイダー情報」>「ファンダメンタルズ分析」>「テクニカル分析」

の順で効率化されにくいと考えられているようです。

インサイダー情報をつかむことは不可能に等しいので、効率化されにくいと考えられる、ファンダメンタルズ分析⇒テクニカル分析の順で、投資戦略を考えた方が良いかもしれません。

効率的な市場と言われてはいますが、私を含め会計の知識がなく会社の価値を正しく評価できない人も市場に参加しています。そのことからも、市場が完全に効率的ということは難しいのではないかと思います。

主なところでいうと、

・心理的なバイアスによるミスプライス
・取引コストやショート禁止などの運用制約による裁定取引の限界

により、非効率な部分が残り続けている可能性があるということですね。

とはいえ、超過リターンを生み出すのは至難の業であることに変わりはありませんが....


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有効性の高い投資手法については、以下のマガジンに情報をまとめています。




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