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ファクターモデルとは?【超過リターンの要因を特定する】

どうもこの記事を書いているmotoといいます。

投資で利益を出していくためには、超過リターンを生み出す要因を特定することが重要になります。

そのリターンを生み出す要因は、すでに経済学者達が研究をしており、ファクターモデルという形である程度の説明が可能となっています。

このリターンを説明するための要因(ファクター)について知っておくと、投資をする上でのヒントになるので簡単に解説しておきます。


1.ファクターモデルとは?

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ファクターモデルについて解説しておくと、

ファクターモデル(Factor Model)とは、任意のリスク資産のリターンは、多くの資産に共通するいくつかの系統的な要因(ファクター)によって決まるというモデルである。

引用:「ファクターモデル | みずほ証券 ファイナンス用語集」みずほ証券

との説明があるように、リスク資産(株など)のリターンはいくつかの要因(ファクター)によって大部分が決まるということが分かっています。

アノマリーと呼ばれていた、

・大型株よりも小型株のリターンが高い現象
 ⇒サイズファクター

・簿価に対して株価が割安だとリターンが高い現象
 ⇒バリューファクター

などをファクターモデルとして組み入れることでリターンの説明をします。

例えば、ポートフォリオで6%の利益を出したなら、その理由としては米国株を買っていたことで4%、小型のバリュー株を買っていたので2%、合わせて6%というように、なぜそのリターンを出せたのかの説明できようなイメージになります。


2.ファクターモデルの種類

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2-1.CAPM(資本資産価格モデル)

リターンを説明するモデルの原型となるもので、対象となる市場の平均リターンをもとにポートフォリオのリターンを説明するというものです。

ポートフォリオには、個別銘柄ごと市場感応度が存在し、市場平均にどれだけ連動した動きとなるのかというのをにβ(ベータ)という指標で表現します。

βが1.2として考えると、

・市場平均が+5%の場合
 ⇒5×1.2=6%

・市場平均が-6%の場合
 ⇒-5×1.2=-6%

となり市場平均の1.2倍の値動きをするということです。

この考え方では、 市場リスクプレミアムに対しての反応の大きさ(β)で、リスク・リターンが決まるといえます。 

CAPMでは、ポートフォリオのリターンは市場ベータのみに影響されるという考え方をするので、シングルファクターモデルと呼ばれています。

この理論が成り立つには、投資家が全員が合理的な行動をして、リスクとリターンの関係が必ず最適な状態となる必要があります。
しかし、現実はそう単純化ではないため、β値のみで期待リターンを正確に求めるというようなことはできません。

小型株効果、バリュー効果などのアノマリーの存在により、リターンの説明力が低かったということですね。


2-2.3ファクター・モデル

ケネス・フレンチとユージン・ファーマが発表したモデルで、リターンの説明能力を飛躍的に高めたことから、2013年にノーベル経済学賞を受賞しています。

CAPMが市場ベータだけで説明したものに、サイズとバリューを加えて拡張することでリターンの説明精度を上げています。

時価総額の小さい企業ほどリターンが高い傾向サイズ効果、割安な会社ほどリターンが高い傾向バリュー効果は、過去に超過リターンを上げ続けきてきたことから、ファクターモデルに加えられています。

3ファクターモデル
①市場ベータ(MKT)

②サイズ(SMB)
③バリュー(HML)

①市場ベータ(MKT)
株式市場のリターンから、無リスク資産のリターンを差し引いたのが市場ベータファクターのリターンとなります。

〇算出式
市場ベータ(MKT)=株式市場リターンー無リスク資産リターン

②サイズ(Small-Minus-Big)
時価総額が中央値より低い銘柄を小型株、中央値よりも高い銘柄を大型株と定義して、そのリターンの差がサイズファクターのリターンとなります。

〇算出式
サイズ(SMB)=小型株のリターンー大型株のリターン


③バリュー(High-Minus-Low)
BMR(PBRの逆数)が高い上位30%の銘柄をバリュー、低い30%の銘柄をグロースと定義して、そのリターンの差がバリューファクターのリターンとなります。

〇算出式
バリュー(HML)=バリューのリターンーグロースのリターン


この3ファクターモデルでは、分散されたポートフォリオリターンのなんと約90%を説明できるといわれています。


2-3.4ファクター・モデル

カハートが発表したモデルとなります。

フレンチ、ファーマの3ファクター・モデルに、モメンタムを加えて拡張することでリターンの説明精度を上げています。

モメンタム効果は、直近の1ヵ月を除く過去1年のリターンが上位の銘柄はリターンが下位の銘柄を上回る傾向があることから、ファクターモデルに加えられています。

4ファクターモデル
①市場ベータ(MKT)

②サイズ(SMB)
③バリュー(HML)
④モメンタム(MOM、UMD)

①市場ベータ(MKT)
 ※3ファクターモデルと同様

②サイズ(Small-Minus-Big)
 ※3ファクターモデルと同様

③バリュー(High-Minus-Low)
 ※3ファクターモデルと同様

④モメンタム(Up-Minus-Down)
直近の1ヵ月を除く過去12ヵ月のリターンが高い上位30%の銘柄を勝者、リターンが低い30%の銘柄を敗者と定義して、そのリターンの差がモメンタムファクターのリターンとなります。

〇算出式
モメンタム(UMD)=勝者のリターンー敗者のリターン


この4ファクターモデルでは、分散されたポートフォリオリターンの約95%を説明できるといわれています。


④5ファクター・モデル

ケネス・フレンチとユージン・ファーマが発表したモデルとなります。

フレンチ、ファーマの3ファクター・モデルに、収益性、投資を加えて拡張することでリターンの説明精度を上げています。

収益性の高い会社や投資が少ない会社は、超過リターンを生みやすいことから、ファクターモデルに加えられています。

5ファクターモデル
①市場ベータ(MKT)

②サイズ(SMB)
③バリュー(HML)
④収益性(RMW)
⑤投資(CMA)

①市場ベータ(MKT)
 ※3ファクターモデルと同様

②サイズ(Small-Minus-Big)
 ※3ファクターモデルと同様

③バリュー(High-Minus-Low)
 ※3ファクターモデルと同様

④収益性(Robust-Minus-Weak)
利益率が高い上位30%の銘柄を高収益、低い30%の銘柄を低収益と定義して、そのリターンの差が収益性ファクターのリターンとなります。

〇算出式
収益性(RMW)=高収益のリターンー低収益のリターン

⑤投資(Conservative-Minus-Aggressive)
総資産増加率の低い上位30%の銘柄を低総資産増加、買い30%の銘柄を高総資産増加と定義して、そのリターンの差が投資ファクターのリターンとなります。

〇算出式
投資(CMA)=低総資産増加のリターンー高総資産増加のリターン

ファクターモデルをどう生かす?

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ファクターモデルの種類についてご紹介しましたが、具体的にどんなことに使えるのかといいますと、

・期待リターンの高い銘柄を探す参考になる
・各投資信託のリターンの源泉を調べられる
・特定のポートフォリオをある程度複製できる
・スマートベータとして運用ができる

例えば、アクティブファンドと呼ばれる、ファンドマネージャーの力で超過収益を目指している運用会社が本当に、付加価値をもたらしているのかなどの評価に使われることがあります。

ファクターを使って投資することは誰にでもできるので、ファクター以外のマーケット分析、企業分析、売買タイミングで付加価値をもたらしているのか調べられるということですね。

例えば、市場平均を超えるパフォーマンスを出していても、ただ単にバリュー株を買っていただけという分析結果なら、ファンドマネージャのスキルではなく、ファクターに乗っているだけの超過収益ということになります。


まとめ

ファクターモデルでは、利益を生み出すファクターがいくつも存在していることをご紹介しました。

これらのファクターにより、リターンを説明できるということは、ファクターを利用することでリターンを向上できるとも考えられます。

以下の例のようにファクターを意識した投資をすることで、成績を向上できる可能性があります。

私自身、ファクターを意識して銘柄の選定を行うことが多いです。

【ファクターの利用例】
市場ベータ:日本株
サイズ:時価総額の小さい会社
バリュー:PBRの低い会社

米国株ではモメンタム効果が有効なのに対して、日本株ではモメンタム効果がほとんどなく、バリュー効果が大きいという傾向がありました。しかし、近年ではバリュー効果が落ちてきているようです。

このように、ファクターには地域別の違いや期間によっても有効性が違ってくるので、いくつかのファクターを組み合わせるマルチファクターという考え方も重要になります。

やみくもに銘柄を探すよりも、過去に超過リターンを生み出しているファクターの中から探していくほうが、利益を生み出せるのではないかと思います。

ぜひ、投資をする際の参考にしてみてはいかがでしょうか。


ファクターを利用した投資手法については、以下のマガジンに情報をまとめています。


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●参考文献

Fama and French(2014)『A Five-Factor Asset Pricing Model』
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2287202

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