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ゲイ風俗の寮で、男4人で過ごしていた時の話



 ゲイ風俗、寮生活、若者4人、何も起きないはずがなくーー。

 ーーいや起きねぇよ。

 まぁ想像力の逞しいあんたら読者諸賢は「ゲイが集団生活したらどうせセックスすんでしょ!」とか思っちゃうかもしれないけれど、店内恋愛や店内すけべなどの色沙汰を“寮生活中“にあたいが観測することはなかった

 当たり前だけど、ボーイたちが控え室に戻ってくるのは指名を終えた後なのですでにクタクタなわけ。キンタマスカスカ、腰クタクタ、オケツが痛ぇって時もあるし、お客様とロング(泊まり指名)で仕事していた場合は戻ってくるのが朝になる。そんなボーイ同士で「なぁすけべしようや」とはなりづらい。

 また、仮に指名が一件も無くボウズ(指名ゼロだった日をボウズと言う)だった場合でも性欲があり余るわけではない。ボーイは静かに疲弊する。

 一日中、閉塞感のある店内で待機して、電話が鳴るたびに「選ばれるのが自分かどうか」を気にして耳をそばだてる。自分以外が指名された場合は自尊心が削られることもあるだろう。そして一件も指名が無かった場合は、一銭にもならずにその日を終える。日給は指名されない限り発生しない。(店によっては指名ゼロでも待機保証として1000円くらいもらえるところもある)

 目標へのステップを持つ人間にとってこのロスはキツい。稼ぎたくて在籍しているのに、ただただ若さと気力だけを消費している感覚に苛まれる。そんな日々を積み重ねれば精神的に病む子もいる。

 ましてや寮生は、大体どこのゲイ風俗でも“ほぼ毎日出勤しなければならない“という条件があることが多いので、店がオープンするお昼までには寝るか飯を食って、毎日意識的に精力も体力も回復させないとならない。

 ゲイ風俗の寮は、労働時間ガン無視の肉体労働の拠点地だ。まぁそもそも営業自体、同性間での行為であるから目をつぶられているだけのグレーであるところが多いんだけど。とにかく黒寄りのグレー。ピンク色が介入する隙はそこまで無い。

 あたいが在籍していた店の場合、寮生は店がその日使っていない個室や控え室で寝泊まりしていた。寮生用のマンションなどがあるわけじゃなかった。だからずっと店にいる。寝ても覚めても店内待機。コンビニにご飯を買いに行ったり、お客様のご自宅やホテルに向かうときにようやく外の空気を吸って、季節の風を感じる。

 あたいの時もそうだった。桜がいつの間にか咲いて、そして花びらが散って若葉が芽吹く頃まで寮で生活していたけど、それでもなんだか自分だけが社会から切り離されて置いてきぼりにされたような気分になった。ゲイだし、風俗だし、周りの同級生は大学生や社会人になってるのに、何してんだろってちょっとキンタマが縮むような思いをしていた。


 あたいとしてはゲイ風俗の寮生活は辛かった。

 けど、堪えられた。

 その頃のあたいは虎視眈々と一人暮らしする準備をしていたし、大学に行くっていう目標があった。目標がある分、寮に対して強く「借宿だ」と意識することができたように思う。

 それに自分の家に帰って母ちゃんにぶっ殺されるよりも全然マシだったから、ゲイ風俗は避難所だと思えば充実していた。お金を稼いでも。母ちゃんに管理されて没収されるようなことはなかったし。


 また、あたいにとって寮生活は、母ちゃんと姉ちゃん以外の人間と生活を共にする初めての体験だった。ゲイ風俗にはいろんな奴がいる。ゲイもバイもノンケも、若作りのおっさんもコッテコテのオカマもいるけれど、共通しているのは全員が《男と性行為できる》ーーそして《風俗という商売に勤めることができる》というスタンスだけ。それ以外は出身も年齢も立場も経歴も違った。

 あたいは寮生3人と過ごして、人それぞれの生活の仕方の違いに驚いたり、知ることが多かったし、何より楽しかった。毎日が面白かったのだ。友達の家に泊まりに来てるみたいだった。自分の家が嫌いな子どもにとって、風俗の寮だろうと居心地が良いことがある。それだけで世間体の後ろ暗さはある程度無視できた。


 あと現実的な面でぶっちゃけると、ゲイ風俗の寮にお世話になることは金銭面でも都合が良かったのだけれど、そもそもあたいは高校卒業前に家出してゲイ風俗に入ったので、3月まではまだ高校生扱いだった。

 つまり家を借りることもできないし、そもそも本当は風俗で働いてはならない。そこらへんが色々ややこしかったし、母ちゃんがあたいを警察に通報して捜索願を出していた(警察からも携帯に電話がかかってきた。母ちゃんが「高校生なのに家出して男に売春している」と言ったようだった)ので、あたいとしても外を彷徨いて補導されるより、ゲイ風俗の寮に篭りっぱなしの方が安全かと考えていた。ちなみに警察はあたいと連絡がついたし事件性が無いと判断したので不介入だった。


 そんな目論見となりゆきがあったあたいのゲイ風俗寮生活だけれど、今回はそこで生活した3人のボーイとの話を書こうと思う。

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ここはあなたの宿であり、別荘であり、療養地。 あたいが毎月4本以上の文章を温泉のようにドバドバと湧かせて、かけながす。 内容はさまざまな思…

今ならあたいの投げキッス付きよ👄