ウリセン編41 あたいと、色恋営業でエスカレートしたお客様から逃げる話
「なぁなぁ! お前って、確か……ウチの店のボーイやんな?」
夜道。あたいはゲイ風俗を退勤して、新宿駅に向かう帰路を歩いてたとこだった。
2ヶ月ほど前に入店してきた新人ボーイの男の子が、息を切らしながらあたいの肩を掴んできたのだ。
「そうよ、あたいもちぎ。あぁ……最近、人がたくさん増えてたから挨拶できてなかったかもね。よろしくね〜」
「いやそれどころじゃ無いんやって! ちょ、ついてきて!」
関西弁でまくし立てながら、あたいの腕を掴み、パチンコ屋の前を走り抜けて曲がり角を越えたところまで、あたいは連れて行かれた。
彼は肩で息をしながら、着ているシャレオツなスーツで額の汗を拭った。なんか知らんけどここまで走ってきたみたいだった。
「なによ……どうしたのよ」
と、あたいは問いかけた。
「いや実はな、オレも仕事終わったし帰ろうと思ってん。それで店から出たら……さっきまでオレの事を指名してた客が待ち伏せしててん! ヤバイってほんま」
なんか関西弁って、なに話してても可愛いな……って思いながら、あたいは聞いていた。
「いわゆるストーカー客ね。店に戻って店長に報告したの?」
「したよ! したけど、そしたらどっか行ってまいよってん。やから安心して帰ろうとしてたんやけど、やっぱり尾いてきてたんよ! それで今走って逃げてきたわけ! んで何か見たことあるお前が目の前におったから助け求めてるわけよ! 分かった!?」
なんでキレ気味であたいに言うねん。
って思いながら、彼の後方を確認すると確かに明らかにこちらを意識しながら、ジワリジワリと接近してきている壮年の男性がいた。
「あー……確かに尾いてきてるわね……」
「せやろ? うわぁーマジでこんなことあるねんな……どないしよ……オレこういうのアカンねん……強く出られへんねん」
彼は半べそかきながらあたいの腕を掴み、二人で早歩きで新宿駅方面に向かう。ハタから見たらカップルね、って言おうと思ったけど、あたいの腕に彼の爪が食い込んできてて痛すぎてやめた。
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⑤あたいがゲイ風俗のベテランとして働いてた時と、中学の初恋の迷走期と高校時代の友達の話です。このマガジンからでも読み進められる単発モノばか…
今ならあたいの投げキッス付きよ👄