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ウリセン編5 あたい、お局ボーイと話す


朝。店内個室でのお泊り指名が終わったので、ベッドメイキングや部屋の清掃を済まし、あたいは足早に控え室へと戻った。

普段は、タバコの煙が燻らされ充満し、若い男たちがひしめき合い、ライブDVDの音楽や電話の呼び鈴が絶え間なく流れる落ち着かない空間も、朝は静寂に包まれ、澄んだ空気とブラインド越しの朝日が差し込んでいて、別の空間の様だった。

「おつかれさまでーす」

いつもの癖でつい、そう呟いたわ。返事は無かった。寮生は使用していない個室で寝泊まりしているし、店のオープンまで3時間以上あったので控え室には誰もいなかった。

――はずだった、

「……やだ、もちぎ、おはよう」

営業時にはマネージャーがずっと座って作業しているデスクのオフィスチェア。今は誰もいないはずのそのイスが、くるりと回った。

「あ、えーと……」

あたいは言葉が詰まったわ。

誰この人。

場末のホストクラブの、田舎上がりの売れてない兄ちゃんのような、芋っぽくてあか抜けない青年が、眠たそうな眼をこすってこちらを見ていたの。

「……あんた、あたしのことわかってないでしょー」

イエス、お見通し。
でもその声と話し方で、あたいはようやく気づいたの。

この店の売り上げ、リピート率ともにナンバー2の売れっ子ボーイ、そしてサブマネージャーも兼任する、乙津 骨子(おつ ぼねこ)センパイだった。

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① 田舎から都会に飛び出し、ゲイ風俗であるウリセンに入店した、あたいのお話。 入店したての新人の頃から後輩ができるまで辺りまでのはじまり話…

今ならあたいの投げキッス付きよ👄