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glass-ceiling index (2024公表版)

英国の経済誌”The Economist”は、2013年以来、毎年3月8日の「国際女性デー(International Women’s Day)」の時期に、社会活動における女性の役割と影響を評価する指数である” glass-ceiling index” を発表しており、今年も3月6日に2023年のデータに基づく最新版を公表した。対象国はOECD加盟国のうち主要29か国。日本は、最下位グループの常連だが、今年はトルコを抜いて一つ総合順位をあげたものの依然27位と不名誉な位置をキープしている。indexを構成している10個の指標を個別にみても昨年とあまり大きな変動はない。個々の指標に関する留意点については、昨年記事を書いたので、そちらを参照してみてほしい。

(1) Higher Education (高等教育)

高等教育(tertiary education)機関への進学率の男女比較を示す指標。日本は、女性の方が男性より2.3%高く順位は昨年と同じ23位。日本は2016年は男女同率であり、それから徐々に女性進学率が上がり、2022年は男女差は2.9%であった。2023はこれが0.6%下がったわけだが、このことに何らかの有意な意味があるかはよくわからない。

(2) Labour-force participation rate(労働参加率)

女性の労働参加率がどの程度男性を下回っているかという指標。日本は、2022の-3.3%から0.8%改善し-12.5%で順位は昨年と同じ23位。OECD平均は-15.3%から-14.8%と0.5%の改善なので、日本の動きはまずまずといえるだろう。

(3) Gender wage gap (男女賃金格差)

男女の賃金格差を示す指標。日本は、2022の-22.1%から0.8%改善し-21.3%で順位は昨年と同じ27位。一貫した改善傾向にはあるが、絶対値ではまだまだ他国と大きな格差がある。

(4) Net child-care costs (実質保育費用)

平均賃金に占める実質保育費用(net child care cost)の割合を示す指標。日本は14%で2022と変化なし。順位は、前年の18%から12%と大幅改善したスロバキアに抜かれ11位から12位へと一つ下がった。なお、昨年の記事で、日本の数値の変動が大きい点について言及したところ、コメント欄でいわゆる"幼保無償化"の影響ではないかと教えていただいた。

(5) Paid leave for mothers (母親のための有給休暇)

母親が平均賃金換算で何週間分の産休・育休を取得できるかを示す指標。日本は、過去数年間一貫して35.8週間で、順位も昨年と同じく9位。なお、昨年の記事でも言及したが、この指標については、制度ベースの数値と実績ベースの数値が混在している可能性があることに留意する必要がある。また、2022から2023にかけて多数の国の数値が下がっており、ORCD平均全体の数値も減少していることには要注目。何か背景事情があるのだろうか?

(6) Paid leave for fathers (父親のための有給休暇)
(5)の指標の父親版にあたる指標。日本は31.1週間で2002より0.8週間下がっているが、順位は堂々の1位。ただ、この指標についても、(5)と同様制度と実績の数値が混在している可能性が高い。

(7) GMAT exams taken by women (女性によるGMAT受験)

ビジネススクール共通試験であるGMAT(Graduate Management Admission Test)の女性受験者比率を示す指標。OECD平均は36.8%。日本は前年の25.1%から23.5%に低下しているが順位は変わらず27位。この指標については、数値を減らしている国が非常に多く、OECD平均でも36.8%から33.9%と日本の倍近い下げ幅になっている。このあたりの背景事情も気になるところではある。

(8) Women in managerial positions  (女性の管理職)

女性の管理職比率を示す指標。OECD平均は33.8%。日本は14,6%で、昨年の12.9%から1.7%あげているものの堂々の4年連続最下位。OECD平均(34.2%)とはダブルスコア以上の差がある。この指標については、日本、トルコ、韓国の三か国が他を寄せつけないレベルでワースト3に長年君臨しているのだが、その中でも改善度合いは日本が一番低いという惨憺たる状況である。

(9) Women on company boards (女性の企業役員)

女性の企業役員比率を示す指標。OECD平均は30.1%。日本は前年の15.5%から2.5%改善して18%。順位は変わらず27位だが、改善度合いは一定の評価ができる。昨年の記事でも言及したが、(8)に比べると対象範囲が限定されるため、意図的に増やしやすいという面が大きいと思う。

(10) Women in parliament  (女性の国会議員)

女性の国会議員比率を示す指標。日本は10.3%でこれまた堂々の最下位。OECD平均は33.9%。(8)と同様、日本における女性の社会進出問題を象徴する数値。上がりもしないし、上がる余地も全く見受けられない。

まとめ

上述のように、今回のindexは昨年と比べて大きな特徴はない。いくつか数値変動のバックグラウンドについて気になる部分もあるのだが、今のところ調査・分析している余裕がないので、とりあえず今回は備忘録的メモとして記すにとどめておく。




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