4月5日放送 NHK高校講座 倫理 第1回 入門講座 何をどう学ぶのか

という訳で、倫理の第一回を聴取しました。

現代社会の大西先生と、「NHK高校講座を聴いている世代」代表する謎の人物・オオトモ君との全く滞りのない機械的なやり取りが印象深かったので、

「倫理も同じモノだろう」

という先入観のもと臨みました。

やはりNHKの教育番組らしいジングルと、滑らかな女性アナウンサーのタイトルコールから始まりましたが、、

結論から申しますと、現代社会と倫理は全くスタイルの異なる番組でした。

今回の講師は和田倫明(わだ みちあき)先生。東京都立産業技術高等専門学校教授という肩書きをお持ちの方です。高校や高専で倫理の教鞭を執られて来た先生です。

ベテランの風格が漂ってます。

前述通り、今回は入門編です。倫理とは何か、そして倫理で何を学ぶのかという話が展開されるとのこと。

そして現代社会の経験から、恐らく「高校講座を聴いてる世代と同じ人」が登場することを予想しつつ待っていると、和田先生より、、、

「現役ファッションモデルで、高校三年生の江野沢愛美さんに来てもらいました。」

と話がありました。

・・・現役ファッションモデル!高校三年生!

何やら嵐の予感がします。倫理の番組にファッションモデルを器用する。。かなり攻めた人選です。

ちなみに江野沢愛美さんについて調べると、エイベックス所属で、SEVENTEEN専属を経ている筋金入りのファッションモデルである模様です。

ちなみに、こちらがエイベックスのプロフィールです。

・・・あれ、1996年生まれ?

2019年度は、2018年度の再放送ですのでその年を基に計算すると江野沢さんは22歳。。それで高校三年生。。。

年齢詐・・・いや、きっと江野沢さんは通信制か定時制の高校に通っているから三年生と言っていて、学生と二足の草鞋でモデルをやっているんだ!

そう自分に暗示をかけながら、この後の内容を聴くことにしました。

和田と江野沢、、、こんな番組が無ければ恐らく人生のクロスオーバーなどあり得なかったであろう二人が、どんなやり取りをするのか楽しみにしてると、

まず和田先生が、「倫理という言葉を聞いたことがありますか?」と質問します。

すると江野沢さんは「今日初めて聞きました」と即答します。

・・・現代社会の番組では全く聴かれなかった価値観の相克が聴かれました!これはやり取りが一筋縄ではいかなそうです。

続けて江野沢さん、「倫理という授業が私の通う学校には無い。実際にはどういう科目なんですか?」と逆質問します。

すると和田先生、「それはそうと、今日は初めての授業なのでご挨拶代わりに果物を持ってきました

何と江野沢さんの質問を遮り、果物の話を始めます。

このかみ合わないやり取りは演出なのか?それとも偶然なのか?はたまた和田先生の何らかの作戦なのか・・・?

「?」が頭にたくさん浮かびつつ内容に耳を傾けます。

和田先生、リンゴとミカンを二個ずつ持ってきました。そしていきなり「数学の問題を出します」と江野沢さんに伝えます。そして「リンゴとミカンを二人で均等に分けるにはどうすれば良いか?」とクエスチョンを提示しました。

挨拶代わりに持ってきた果物なら、そのまま全部プレゼントすれば良いんじゃないか?何で二人で分ける事を前提の話をし始めたんだこの人?」という事を江野沢さんが思ったのかどうかは分かりません。とりあえず江野沢さんは「リンゴとミカンを一個ずつで分ければ良い」と即答します。

・・・しかしここで問題が発生します。

「私の持ってきた果物はこんな感じです」と和田先生が出してきた果物は何と、

青リンゴ×1 赤リンゴ×1 大きなミカン×1 小さなミカン×1

という内容でした。

挨拶代わりの果物について分ける前提で話をするだけでも失礼なのに、こんな配分しずらい果物をもってきたあなたの倫理観を問いたいです!」と私は思わず和田先生に対してツッコミたくなりました。

しかし江野沢さん、ビジネスライク(?)に「ジェンケンで勝ったほうが優先的に選んでいく」と応答していきます。「その時点で江野沢さんは確率や嗜好、そして均等な分配という基準で考えてる。」と和田先生。

更に和田先生は止まりません。「江野沢さんが青いリンゴが好きなら差し上げます。もしミカンが好きならそれを全部持って行っても良いし・・・」と話していると、

とうとう業を煮やした江野沢さん「これって倫理に関係あるんですか?」とクリティカルな質問を投げかけます。

和田先生、これを待ってたかのように「これが倫理なんです」の一言。そして江野沢さんの「ええっ?」という感嘆。この瞬間、和田先生の笑みが、私の脳内には浮かばれました。

要は、算数であれば理論的な配分で問題は解決しますが、質の異なるものの配分に問題が及ぶ時、人は多様な価値で「配分」を行ってることを和田先生は言いたかった訳です。そしてこの原理は社会に拡大していった時に資源配分の問題として設定されます。そして社会的な問題となった時、配分の問題はより複雑なものになって行きます。

「世の中の決まりがどういう形で決まっていくのかを考える」この倫理の神髄を伝えるべく、和田先生は強引かと思える果物を出し方をしてきたのでした。

その上で「人間の心の問題」「倫理の問題を人はどう考えてきたのか」(思想史)「倫理的にどう考えるべきか」(倫理の応用)が一年間の授業の大まかな展開になっていくことが発表されます。

加えて、番組で気になってしまったことを何点か述べていきます。

私が何より驚いたのは、番組最後に江野沢さんが「倫理をもっと勉強したくなりました」と言ったことです。今日初めて倫理という言葉を知った人が、即日で倫理を勉強したくなる・・・素人にここまでの知的好奇心を与える教育術こそ、和田マジックなんでしょう。

あと、和田先生と江野沢さんが果物をどうやって配分したのか、最後まで明かされることはありませんでした。人間にとって考え続けることが重要なのは勿論ですが、同時に人間は社会に生きている以上何らかの判断をしないといけない存在です。その意味で判断を保留にしたということには引っ掛かりがありましたし、和田先生の中にある「実践倫理」を出していただきたかった部分があります。倫理は実践があって初めて活きるものなので。

ちなみに江野沢愛美さん、聴取後調べると、事務所プロフィールの出演歴に「NHK高校講座 倫理」が存在しませんでした。本人の希望なのか、あるいはファッションモデルに倫理のイメージが付くのはプラスにならないというマネジメント側の判断なんでしょうか。。。

最後に講師陣の方をご紹介します。

この四名の講師陣の皆さんがどういう講義を展開していくのか、今から楽しみで仕方ありません。




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