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マザーハウス横浜元町店

こんにちは。マザーハウス横浜元町店の渡部です。

スタッフのおすすめ元町スポットをご紹介しているこちらのマガジンですが、このたびは自分たちの店・マザーハウス横浜元町店を濃密にご紹介させていただきます。
こんな人が、こんな考えで、こんな感じで作っている店ですよ と。

まずは自己紹介です。
秋田県出身36歳2児のパパです。
前職では工業用ミシンを作っている会社で技術者として働いていました。
その中で3年間インドネシアに駐在していました。
好きなインドネシア語は、
・tidak apa apa(ティダアパアパ):大丈夫
・kirakira begitu(キラキラブギトゥ):だいたいそんな感じ
・nonkrong (ノンクロン):何もしないで座ってだらだら話す
です。
一緒に働いていたなかま達はこんな感じです。

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前の会社は「外国で働いてみたい!」と思い勤めていたのですが、その気持ちをだいたい達成したので、それよりも前からずっと思っていた「店で働きたい!」をやってみようと思いました。
店で働こうと思ったとき、自分で何か店を作ってみようと思ったのですが「店」ということ以外の、これを売りたい、とかこんな考えを届けたい、みたいな、ほんとだったらコアになるのだろう想いを持っていませんでした。
これは一回店に入って仕事をしてみないとな と思い転職先を考えて、どうせ人に勧めるなら「これめっちゃいいんすよ」と言って勧めたいなと思いました。
自分の中では、その背景に想いがあって作られているものがそれにあたったので、創業者の本を読んで知っていたマザーハウスに入りました。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」
マザーハウスはこの理念のもと、ビジネスを通して途上国と呼ばれる国に住む人たちのために役に立ちたいと思って働いている会社です。そのような中なので、入社する人は国際貢献とか社会貢献に関わりたくて入ってくる人が多いのですが、自分の場合は少し違った感じではあったかなと思います。

でも、自分としては日々「店づくり」をしていくことが楽しいだけですが、
それを通して、そんなかっこいい"志"に少しずつでも貢献できているという事実は、働いている方としてはとても気持ちのいいものです。だいたいそんな感じで7年が経ちました。

■ 店内のこと
さて、それでは店の紹介をしたいと思うのですが、場としての店のメインの役割は商品を見てもらうことです。
でもマザーハウスの商品のことはオンラインストアがございますので、こちらの投稿では、店にある "その他" "周辺" "モノではなく気持ち"についてお話ししたいと思います。

① 素材のマルシェ
店内入っていただいて奥の右側(写真右側)に設置しています。

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現在マザーハウスでは6か国でモノづくりをしていますが、それぞれの国や地域から取り寄せた、商品になる前の原材料、素材を展示しています。
バングラデシュのジュート、ソフトレザー
ネパールのローシルク
ジョグジャカルタのフィリグリー
スリランカの天然石
コルカタのカディ
ミャンマーのルビー
スラウェシ島のカカオ...

最終製品としてどんなものになっているか、マザーハウスの仕事の「結果」は店に置いてある商品を見てもらえたら分かります。その仕事の「原因」になっているのは、創業者の想いと、世界各地の技術と素材たちです。
それらを組み合わせて見てもらえた方が、きっと楽しんでくれるお客さんもいるだろうと思って展示しています。
手触り とか、臭い とか、加工されていない原石 とか。「素材」って、響きとして好きです。「可能性」しか感じないので。それらを、元町で見てもらうなら、この商店街に人が溢れる時期の賑わいや活気がある雰囲気で見てもらいたいなと思ったので「マルシェ」みたいな雰囲気で作っています。

上にある水彩ふうの地図はマザーハウスのアートディレクターが作成したのですが、「世界はいろんな素材や技術があっていろんな人がいるから、もっとカラフル」とか、「国境ではなくグラデーションで区切られている世界」とか、マザーハウスの想いが気持ちがよく表現されていて個人的には大好きです。
マザーハウスに、新たな生産地や販売地が増えるごとに、この地図の、その新たな国に、カラフルなピンを刺していきます。
もし刺したい方がいらっしゃったらぜひお声がけください。

店舗のスタッフたちも程度の差は人それぞれですが、
「途上国から...」の理念に共感をしている人たちです。
自分たちが共感していることであれば、イキイキとした雰囲気でお客さまにも伝えることができます。考え方の押し売りになってしまうのは絶対良くないけど、自分たちの意思とか世界観(世界をどう見ているのか)を情熱を持って伝えられると、それ自体を楽しんでくれるお客さまも多いです。
そして、なんだか楽しそうな雰囲気の店の方が、店の前を歩く人も気になって入ってきてくれます。
そんなポジティブなコミュニケーションの連続がこの店で繰り広げられたらいいなと思います。

素材のまま販売している訳ではないので、その点は"お持ち帰り無し"にてご協力お願いします。

② モノづくり雰囲気のコーナー
店に入って階段を上がっていただいた2階に、メンズバッグのコーナーがあります。

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・バングラデシュの工場から送ってもらった工具類
・アンティークのミシン
(ハンドルを回せば動くのでぜひ回してみてください)
・バッグを解体した状態の展示
・糸を紡ぐときに使う糸車
そこに少しだけ自分たちの理念を書いた紙を添えて。

個人的に前職ではメーカーで機械系の技術者をしていたので、モノづくりが好きです。モノを愛でるとか、愛用する、メンテナンスする みたいなことが好きだし、工芸とか手仕事とか職人とか、そういうのをかっこいいと感じます。

消費者からは見えないところでは、モノづくりってだいたい泥臭かったり、地味だったりする作業の連続です。そんな生産工程から、最終製品になったときにはほとんど文句のつけられないきれいな「売り物」になっている。
モノが生まれる場の雰囲気、使い込まれた道具類、言葉ではなく加工している音が響いているところ、そのような空気感が好きです。

それは、効率性を高めるために、人も機械的に動くことが重要な、「工員が全員のっぺらぼうだったとしても風景としては変わらずに成立するんだろうな」っていう感じの大量生産の工場ではなくて、「あーこういう人がこういう動きをして作ってるんだな」って分かるアトリエとか工房のイメージ。

マザーハウスの工場はバングラデシュにあるので、残念ながら雰囲気だけになってしまうけど、その雰囲気のなかから「モノづくり感」が、「かっこいいもの」として受け取ってもらえたら最高だな。と思っています。

元町に来る前は銀座の店で働いていたのですが、元町の方が、お客さまから「ここで作っているの?」と聞かれることが多いと思いました。個人商店が多く、製販一体、作って売っている場所というイメージがあるからだと思います。オンラインでの販売が完全に無機質なものだとは思わないけど、リアルな場での買い物って、どんな雰囲気で買い物をするのが気持ち良いか は重要なことだと思います。
この街らしく、でも自分や自分たちが伝えたい気持ちも含めながら、買い物を楽しんでもらえるように、日々の試行錯誤をしています。

③ 一番奥のジュエリーコーナー
メンズコーナーを抜けて、1階からの吹き抜けになっている部分の渡り廊下を抜けたところに、こんなジュエリーコーナーを作っています。

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元町はここで買い物をし続けてくれるリピーターさんももちろんいますが、
中華街と合わせて観光地的な側面が強いです。コロナ前、この街は大多数の人が1年に一回、2-3年に一回、もしくは一生に一回という頻度で来る場所でした。そんな街にある店では「見つけちゃった感」とか「出会い」みたいなものを提供できるポテンシャルが高いです。今は情報が充実しているから、だいたいはしっかりと下調べをしてから買いに行くことが多いけど、街を歩いていてたまたま見つけたって思うことって、経験としてけっこう楽しい。

ジュエリーはマザーハウスの商品の中でも圧倒的にキラキラしています(当然なのですが)。気づいてもらえないと話にならないので、もちろん歩道に面したのショーウィンドウにもジュエリーを設置していますが、そこから2階の奥をご案内して、少し重厚な雰囲気のメンズバッグゾーンを抜けて、そのキラキラした空間に入った瞬間の「わ~っ!」っていう感じを作りたい。こんなところがあったんだー(キラキラー)と思ってもらえたら成功です。

あと、バッグは少し賑やかで、少し雑多な雰囲気の中でも楽しく見ることができますがジュエリーのように感情的な買い物要素が強いものは、ちょっと落ち着いてゆっくり見たいです。今はコロナ禍なので無理なのですが、近くにあるスリランカ紅茶専門店のお茶か、斜め向かいにあるおしゃれなカフェのミャンマー産コーヒーを提供して、飲んでもらいながらゆっくりジュエリーを見てもらえる場所にしたいな と思います。

ちなみに、こんな限定ネックレスも販売しています。

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「まて」と「おて」です。元町はわんちゃんのお散歩に来る人が多い街なので。
街全体としても、ペットの水飲み場を設置しているバッグ屋さんがあったり、テラスだったらペットOKな飲食店が多かったり、お散歩ついでのお買い物には良い場所です。マザーハウスもだっこかカートだったら店に入っていただけますので、ぜひご一緒に。

■ 接客や姿勢について
マザーハウスの店には一つ共通の認識があります。
「誰も弾かない」ブランドであること。…これがけっこう難しいです。
「ブランドを作る」と宣言して店を作ってるけど、なんかちょっとツンとした感じで、店に入っても「どうせ買わないだろ」的な雰囲気で、自分はそこに存在しないかのように扱われるような感じの高級ブランドになりたい訳ではないです。

高そうに見えると多くのお客さんは入りづらい気持ちになります。でも、考えを持ってブランドや店を作っているから、安っぽく見られたいわけじゃない。

また、百貨店とかに入っている店は、「レディースファッション」とか「コスメ」とか「インテリア」とかちゃんとフロア分けされているから、お客さまは自分が行くべき場所を確認できます。
でも、雑多な商店街にある路面店だと事前情報がないので、初めて見た人が少し興味を持ってくれたとしても「どんな店なんだろう」と不安な気持ちとともに店が見られていると思います。

店の中に入ってくれたときも同じで、「このバッグは触っていいものなのか?」とか「店員がいるあっちの方は行きたくないな」とか初めての場所では、ある種の「居づらさ」 を少しは感じる人が多いと思います。

1個数万円のバッグやジュエリーなどを扱っている店ではあるけど、ここではその人らしく振る舞ってもらいたい。

そこで、商品は「途上国の人たちと良いものを作ってるんだ」との自信とともにできる限りキレイに見てもらったうえで、接客で「誰も弾かない」の部分のホスピタリティーを実行することが必要になります。

店に入ったときの接客=うざいもの
だいたいこのイメージがあると思いますが、マザーハウスの店ではしっかり接客につきます。
それは、店員である自分たちがいることで、目の前のその人の役に立つか、もっと楽しんでもらうことができると信じているからです。

・ショーウィンドウで立ち止まっている人に「ぐるっと一周だけでもどうぞ」って声をかける
・もしくはそのままご覧になっている商品を説明する、店の中から持ってくる
・店内でこちらから棚にある商品を手にとって手渡す
・お手持ちの荷物をおろす場所を伝える
・鏡の場所を案内する
・ぱっと見ただけでは分からない隠れた機能を説明する
・作り手がこだわったところを説明する
・ご要望に沿った類似商品や色違いを提案する
・他のお客様がどんな使い方をされているか伝える
・使っている他のお客様がどんなところが良い・悪いと言っていたか伝える
・自分がその商品を使った感想を言う
・経年変化を伝える
・メンテナンス方法を伝える
・もしくはメンテナンスはこちらに任せてくださいって伝える
・一緒に悩む
・伺った内容と雰囲気から「お客さまにはこちらがお似合いです」って客観的な一票を入れる
・もし興味を持ってくれていたら、ブランドの意思や背景を伝える

目的は、居づらさを解消すること、不安をやわらげること、ここでも「その人らしく」振る舞ってもらったうえで、買い物を楽しんでもらうこと。
…細かいところまでなら挙げたらきりが無いほど、目の前の人に対してできることはあります。

マザーハウスで働いて7年になり、その中でたぶん延べ数万人というお客さまに接客をしてきましたが「ほんとに接客いらないです」と言われたことは、片手で足りるほどしかありません。たぶん、なんかうまくコミュニケーションが取れなかったときも、ほとんどの場合はこちらが話しかけたことが、お客さまが意図していたことと違っただけで、ほんとうに接客が嫌いな人って、その程度の割合なんだと思います。

店に入ってくれた人のうち、何かしら買ってくれる人はだいたい6-7人に1人くらいです。買わない人の方が多数派です。なので、接客に付いたからといって「店に入ったんならなんか買ってくれよ」なんてちっとも思ってないし(期待をしていないかというと嘘になります)、その人が買った後に後悔を感じてしまったら、それは行動としては失敗だから、「なんとかして売りつけよう」とかはこれっぽっちも思ってません。むしろ、働き始めた最初のうちは、高い商品を売っているから「(失礼にも)この方はこれを買って大丈夫なんだろうか」とか無意味に余計な心配をしてしまい、売ることへ罪悪感を感じるくらいだったので、根っからの商売人にはなれないなと自分の中では思っています。

■店づくりについて
入社したばかりのころ、舞浜の店にヘルプで入りました。
閉店間際、40代くらいで奥さん用のバッグを探されていたご夫婦が入店されました。
旦那さんはおしゃれに帽子をかぶっていて、社交的な笑顔を持つ人。
奥さんは内気そうなうつむき加減で、静かに笑う感じの眼鏡の人。
まだ商品知識もほとんど無かったので、店内でそのご夫婦がどんなものを見てるか、少しお話しを聞けた内容から少ない知識で考えて一つのバッグをご提案しました。
そしたら「ほら、読まれてるよ!」と旦那さんが嬉しそうに奥さんに言いました。
その後、他のバッグもいろいろご覧になったのですが、結局、最初にご提案させていただいたバッグをご購入くださいました。まだレジは習っていなかったので、お金のやり取りだけ他のスタッフに変わってもらって、最後のお見送りをしました。
すると、店を出て10歩くらい進んだら旦那さんが振り返って、両手を上げて「楽しかった!どうもありがとう!」その横でぺこっと頭を下げる奥さん。
こちらも「ありがとうございました!」とたぶん人生の中で最速のお辞儀をしました。

普通にご案内して、商品をご購入いただいた場合にも、
「お世話さまでしたー」とか
「お兄さんにこれ勧めてもらえて良かったですー」とか
「良い買い物ができましたー」とか
「この前無事結婚式挙げられたのでそのご挨拶に」とか
言ってくれる人たちがいます。
「お世話になったので」とお菓子を持ってきてくれる人、
「たまたま横浜に来たので」と会いに来てくれる人、
そんな人たちがいます。

商品の対価としてお金をいただいているだけで、ビジネスとしての「交換」は成立しているけど、そんなふうに言ってもらえたら、されたら、普通に嬉しいし、おこなった仕事の価値を感じることができます。
お金とモノ、お金とサービスという、経済的な「交換」とは別枠でやりとりされる気持ちの部分。この気持ちのやりとりが多いほど、関係性として、場所として、豊かだと思います。

目の前の人に対してなにかがんばろうと行動したとき、そこに自分の存在が肯定されていて、その相手の存在によって逆に自分が生かされています。
「こちらこそ、楽しい仕事をさせてもらえた」「頼ってくれてどうもありがとう」「役に立てたならやって良かったです」 こういう気持ちを直接的な体験として感じて、ありがとうの上にこちらこそありがとうを積み重ねるコミュニケーション。それをさらに次のお客さまに返せるように、考えと行動を繰り返します。

セールで購買行動を煽るとか、意図して不安を作り出すとか、情報格差で優位に立っているフリをするとか、なんとかお世辞を言って買わせるとか、成長・拡大を目的化した操作的なコミュニケーションじゃなく、お客さまと店員、適度な距離感でありながらも、嘘なくポジティブな感情のやりとりでつながりたい。ごく自然に、欠けちゃいけない要素としてそこに在るような調和と、自分たちにできる価値提供の維持・継続を掲げて店を作ることに、日々の充足を感じます。


マザーハウス横浜元町店 渡部洋紀


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