最後の文化祭

○教室・3−1

   教室に座る生徒。前を向いてる生徒もいれば、ぺちゃくち

ゃと喋っている生徒も。

   高橋利人(18)が、黒板の前に立っている。

   黒板には、文化祭の出し物のリストが。

高橋「ちょっと、みんな最後の文化祭だよ?真面目に決めようよ」

   飯田香織(17)が発言する。

香織「別に、たこ焼きでいいんじゃね?ねぇ?」

   と、隣の北村光(17)に聞く。

光「うん、たこ焼きでいい」

   後ろの諸星浩介も喋り出し。

諸星「うめえしな」

   隣の席の三田村裕(17)が。

三田村「俺のじいちゃん、魚市場で働いてっから、タコ持って来るよ」

諸星「マジ?すげえなお前のじいちゃん!」

高橋「ちょっと待って!最後の文化祭だよ?本当にたこ焼きでいいの?」

香織「いや、いい!つってんじゃん」

高橋「本当に?大人になって、高校生活振り返る時、あん時みんなでたこ焼き作ったよな〜って、笑顔で言える?」

   一同、黙る。

高橋「やっぱりそうだよ、皆の表情が物語ってる。たこ焼きじゃ良い思い出は焼き上がらないよ。はい、みんなー、本当はなにやりたい?」

香織「めんどくせえな」

高橋「え?」

香織「めんどくせえな、みんなたこ焼きでいいから黙ったんだよ、さっさとたこ焼きに決定して解散させろよ」

高橋「いや、最後の文化祭だよ?本当にいいの、最後たこ焼きで?もっと最後に相応しいもんあるんじゃ」

香織「最後最後うるせえな、別にそこまで最後にこだわってねえよ皆、お前だけだよ?最後にこだわってんの」

高橋「……だって、たこ焼きだけで終わったら、なんかせつないじゃん、もっとなんか、形に残るものをさ、ダンスとか演劇とか」

香織「は?そっちの方がはかなくね?」

諸星「確かに」

高橋「たこ焼きの方がはかないよ!皆で作った思い出の結晶が、他人の胃袋で消化されていくんだよ!?」

香織「表現キモ」

高橋「ちょっと、ムード下げる発言はよそうよ」

香織「別に下げてねーし」

高橋「ちょっとさ、男子もそうだけど特に女子!もうちょい真面

目に話し合い参加してよ」

香織「つーかさ、あんま男子が文化祭仕切んなよ」

光「それ思ってた〜」

高橋「え?」

香織「男子は普通文化祭とかのイベント真面目にこなさい生き物

なんよ、お前みたいなタイプ、マジ異質」

高橋「だって、みんな、最後の文化祭なのに、やろうとしないか

ら」

光「もう最後っつーの今ので最後な」

高橋「……たこ焼きで行く?本当にたこ焼きで行く?」

香織「だからそれでいいつってんじゃん」

高橋「分かった……10年後、あの時たこ焼きにして良かったと、

笑顔で言えるたこ焼き作ろう!」

香織「あっつ」

高橋「……ただ、懸念点が1つ。本当にたこ焼きでいいのかな?」

香織「しつけぇな!」

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