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ミステリー小説 ロンドの旅 Chap3.東京の事件 6.異変

3人は出発の準備に取り掛かっていた。

 どうやら暗号が解読できたようね。

 うん。多分、これが最後の旅になると思う。

 最後?じゃあ次の目的地で"あの人"と決着をつけるってことかしら。

 決着…か。ある意味ではそうかも知れない。ところで、先生の事件、星はいくつだい?

 それがね…82%の確率で星2.5なの。

 そうか。やはり。

 やはり?まさか、予測していたとでも言うの?

親子はそれから口を噤んだ。いつもの2人の痛快なやり取りはそこにはなく、釈然としない空気が3人を包み込んだが、無言で荷造りを終えタクシーへ乗り込み、滞在先を後にした。

 さて、この移動中にもう1つはっきりさせておこう。
 
 もう1つって?

 そうる

 そう。先生はソウルで僕たちの居場所をなぜ知っていたのか?だよ。

 …。

 どうしたメライ、さっきからやけに無口になって。体調が優れないのかい?

 …ええ。少しだけ。

 珍しいな。戻って休もうか?

 いいえ。大丈夫よ。それより、続きを聞かせて。

 分かった。いまからある人物へ電話をかける。スピーカーで話すから2人は聞いていてくれ。

 きこえる

 ごめん、そうだな。バルカの聴力なら十分聞こえるけど、メライもいるし、長くなるだろうからスピーカーにさせてもらうよ。

少女はバッグから通信機器が詰まったポーチから電話を取り出し、手渡した。彼は静かにそれを受け取り通話を始めた。
 
 やあ。僕だ。

 これまた珍しい。お前から私に用事なんてな。

 僕もこんなに早くまた君と話すことになるなんて思わなかったよ。…なんてね。実はすぐこうなるとことを想定していたんだ。
  
 どうした。昔の友人が恋しくなったか。

 ふっ。そんな素敵な動機ならいいんだが。

いつも明るく朗らかな彼だが、この旧友と接するときだけは顔つきや声のトーンが明らかに違い、口調もやや好戦的になる。娘たちも当然それを察していた。

 質問だ。先日君が電話してきたとき、なぜ僕が先生と会っていたことを知っていたんだい?

 それはお前がそう言っていたからだよ。

 見くびらないでくれ。あのとき僕は"人に会いに行った"と言っただけだ。

 そうだったか?どちらにせよ、居場所はいつでもGPSで筒抜けだからな。たしか私は先生のセレモニー会場から出てきた直後にお前へ電話したんだ。先生と会っていたと気づかない方が不自然だろ。

 何を言っている。君らしくもない。GPSは入国前から無効化しているよ。

 …さすが、用意周到だな。たしかにあれは失言だったよ。

 君は、ソナタと裏で繋がっていることを認めるんだな?

 ああ。

 これは、"上"への反逆行為だぞ?分かっているのか?

 もちろんだ!私も、そしてソナタも命懸けなんだよ。

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