映画感想/『午前4時にパリの夜は明ける』
フランス映画は全く馴染みがないのですが、なんとなく観てみようかと思い。
理由は2つありまして。
1つは、
『深夜ラジオがつなぐ、愛おしく大切な7年間の物語』
というコピー、特に「深夜ラジオ」という言葉のもつ空気感が気に入ったのと。
2つは、予告編を見ていて、
私が最近いいなあと思った映画『離ればなれになっても』(公式サイト)と
まとっている雰囲気が似ている気がしたので。
こちらはイタリア映画で、『午前4時〜』はフランス映画なのでまた異なるとは思うのですが。
感想。
1つめの期待「深夜ラジオ」感は正直そこまでなかった。
もう少しこのラジオ番組の方にもフューチャーするのかと思っていたのですが。
主人公のエリザベートの人生の転機となるというところで、
物語全体を支えるものとしてもちろん重要なポジションではあるのですが、
あくまで「家族」の物語だった。
2つめの期待は、少しアタリ。
映画全体がまとっている雰囲気は、
私が『離ればなれになっても』を観たときに感じたものと似たものを感じました。
ストーリーを楽しむというよりも、その場その場の人間の心象風景を楽しむタイプの映画というか。
このタイプの映画は映画館で観なければ、まず「観よう」とはならないので、
そういう意味では観に行ってよかった。
でも思ってたよりも心を揺さぶられる感覚も感動も少なかったかも・・・。
こういう映画は、観るときの観る側の心持ち・状況やタイミングによって、受け取り方が大きく変わるだろうなぁという印象です。
来週観たらまた違う感覚を得ると思う。来年観るともっと違うと思う。
一番感じたのは『離ればなれになっても』を観たときも思ったことなのですが、
登場人物たちのコミュニケーションの取り方や感情表現、人との距離の縮め方が、私の感覚とあまりにも違っていてこの人たちは本当に同じ人間なのか・・・?となること。
もちろん、映画というフィクションだからということは前提に。
それにしても。
ヨーロッパだから…なのかフランス・イタリアあたりが特にそうなのか、
あるいは時代(この映画は1980年代)がそうさせているのか。
英語圏の映画でも、もちろん日本人の感覚よりもオープンで違いこそ感じるのですが、そこまで違和感を感じることはないというか。
英語圏の映画でこういった日常を切り取った系をあまり観たことがないから余計にそう感じるのでしょうか…。
この『午前4時に〜』では、
人間関係でお互いがお互いの懐に入っていく感覚が、ぬるっとしているんですよね。
ズケズケとかではなく、なんかぬるっと。
入るときもぬるっとしてるし、出るときもぬるっとしてる。
関わり合いが「深い浅い」とか「オープンクローズド」とかそういうことでもなく、とにかくぬるっとしてるなぁって感じるんです。
ぬるっとしてる分、
互いに歩み寄るときも、互いが様子を見ながらとは言え、わりとしれっと深いところに入り込んでたり、
離れるときも、たとえ引き際がよくても、濡れたタオルみたいな感覚でじとっと心に残る。
私自身の人間関係の築いていく方法は、
石橋を叩いて渡るように、こつこつ相手の外側を叩きながら、様子を見て様子を見て、
なんなら一生、懐に入らずにガワを叩いているだけの人間関係の方が多いかもしれない。
そして、もしいざ立ち入ったけれどやっぱり離れたいとなったら、
わりとばっさり出ていくか(なので立ち去られる側はじとっと残るというより、ひとつ傷が残る感覚になるのかも)、
あるいは相手に気付かれないくらい慎重に出ていきたい。
なのでこういう自分とは全然ちがう人間同士のやり取りというのを見ていると、本当に違う生き物を見ているような気分になって不思議な感覚になるんです。
それが良いとか悪いはもちろんなく。羨ましいなと思うこともあるし、ちょっとしんどそうだなと思うこともあるし。
人ってそれぞれだな、と改めて感じます。
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